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南充浩 オフィシャルブログ

アパレル業界では大型合同展示会の復活はなく今後は中小型合同展示会が主流になる

2023年7月3日 トレンド 0

早くも2023年も半分が終わって下半期がスタートしたが当方には特筆すべきことは何もない。

前回、アッシュ・ペー・フランスの経営破綻が引き金となってアパレル大型展示会「ルームス」が今年で終焉を迎えたことについて触れた。

これに先駆けて、繊研新聞社が主催してきたアパレル大型展示会「IFF」もすでにコロナ禍前の2018年に終了している。

アパレル業界における大型展示会はこれで完全消滅したことになる。その一方で、5年くらい前から中小型のアパレル合同展示会がいくつか立ち上がっている。

ではなぜそうなるのか、について今回は改めて考えてみたい。

前回リンクも念のために貼っておく。

ルームスの休止はアパレル業界の大型合同展示会の終焉

 

次シーズンの新商品を仕入れるために、アパレル系小売業者はメーカー各社の展示会を巡る。小売業者からすると、よほどブランド力の強いメーカー以外は効率を考えても短期間のうちにできるだけ多く巡りたいと思っている。

ひどく遠方の地で、独特の変な日程で展示会を開催されるのは、ほとんどの小売業者からするとやめてもらいたいわけである。

現在の有力小売業者の本社の多くが東京にあるわけだが、例えば「佐渡ヶ島で1月4日から6日まで展示会をします」なんていうメーカーがあれば、小売業者はなかなか訪問することは難しいということになる。繰り返すがよほどにブランド力がある場合は別である。

できれば、多くのメーカーが同じような日程でできるだけ近い場所で展示会をやってくれることが小売業者にとってはありがたい。1日で何社も巡ることができるからだ。

そうなると、例えば渋谷周辺だとか新宿周辺で5~10社くらいがそれぞれ会場を借りて展示会を3月10日とか9月15日とかに開催してくれることが望ましいということになる。

現在でもこういう日程の組み方をする数社のアパレルメーカーは多い。それをもう少し大々的にやると「〇〇ファッションウィーク」とかいう感じになる。

 

さらに小売業者に高効率性を提供しようと思うと、それが合同展示会ということになる。いくら「渋谷周辺」とか「新宿周辺」に集まったって、会場から会場へ移動するには最低でも10分くらいかかってしまうから、その移動時間さえも無くそうとすると合同展示会という形式になる。

しかし、合同展示会にも慣れてくると運営側も来場者側もマンネリ感を感じるようになり、出展者数が集まりにくくなったり来場者数が減ったりするようになる。人間とはつくづくめんどくさい生き物である。

さらに効率性を追求するとなると、合同展示会の大型化ということに行き着く。その結果100社、200社、500社が出展するような大型合同展示会が誕生することとなる。

 

しかし、大型合同展示会にもデメリットはある。出展者数が増えれば増えるほど来場者は時間が足りなくて全ブースを見られなくなる。大型合同展示会が2週間くらい続くならある程度その問題は解決できただろうが、だいたいは3日間、長くても5日間くらいだから到底時間が足りない。むしろ出展者数が増えれば増えるほど見られなくなる。

出展者側からしても、せっかく1ブース30万円とか50万円とかの出展料を支払って出展していても、ほとんど誰も立ち寄ってもらえないというケースも珍しくなくなる。出展者数が増えれば増えるほど、来場した小売業者は有力な出展者以外のブースには立ち寄らなくなる。彼らも忙しいのである。

 

これを解消するために、ルームスは2010年頃から入り口から出口までを一方通行にしたことがあった。入り口を入ると順路に従って進まねばならず、しかも後戻りはできないという状態である。当方も実際に会場に行ったこともある。たしかにこうすれば全出展ブースを見てもらうということは可能になるが、来場者からすると不便で仕方がない。とりあえず見て回っていると、「さっきのブースをもう一度見たいな」と思っても後戻りすることができない。また入り口から入りなおして順路に沿って進んでそのブースにたどり着かねばならない。効率的に回れるはずの合同展示会なのに酷く非効率的になってしまうわけである。

かと言って、そういう制約が無いと、来場者は運営側の都合なんて気にもかけていないので、見たいブースだけを見てあとは素通りしてしまう。素通りされた出展者からは「あの合同展示会はそろそろ終わりやで」と悪評が立ち、業界内に広まることになる。

そして、徐々に大型合同展示会は活気を失ってしまう。

 

かといって、小売業者がメーカーの展示会を望んでいないわけではない。SPA化の上昇もほぼ限界に達した現在、店頭の差別化を果たすには他社ブランド品の仕入れが不可欠になっているから展示会自体の需要は高まっているといえる。

しかし、かつての大型合同展示会は出展者・来場者ともにデメリットが認識されているから復活するはずもない。2010年代半ば以降、再び中小型の合同展示会が増え始めているのは、当然の帰結といえるのではないか。

5社から10社、20社、30社くらい集まってくれているのが、来場者からすると期日内に全ブースを見て回れるから便利だし、出展者からしても全来場者がほぼブースに立ち寄ってくれるので満足度も高い。

実際に繊研新聞社の大型合同展示会IFFは無くなったが、中型合同展示会のプラグインは今も継続されている。

 

他の分野でも例えば「東京ギフト・ショー」のような超大型合同展示会もあるが、コロナ禍や東京オリンピックなどがあったとはいえ、出展者数・来場者数ともにピークアウトしているから、そろそろ規模の追求ではない新機軸の打ち出しが必要とされているのではないかと思う。

 

少なくともアパレル業界ではもう大型合同展示会の復活はあり得ないだろうし、中小型店が業界の主流になっていくと考えられる。

 

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