ドラッグ、コンビニは繊維製品の一層の有力販路になる
2023年6月29日 企業研究 5
このところ、ツイッターなどで「アパレルの有力販路はコンビニ、ドラッグストアになってきたのではないか」というリプライをいただくことが増えた。
アパレルとは異なるが、繊維製品ということでは先日、このブログで紹介したスギ薬局オリジナルの「エアーかおる」のフェイスタオルなんてその典型ではないかという指摘をいただいた。
また、これも純然たるアパレルとは言い難いが、ファミリーマートのファミマソックスもそうだろう。
それに類した直近のニュースというとこれになる。
マツキヨがアパレル参入 「マ」のロゴをあしらったアイテムを発売 (fashionsnap.com)
マツキヨココカラ&カンパニーのプライベートブランド「マツキヨ(matsukiyo)」が、90周年を記念してドラッグストアとして初めてアパレルに参入すると発表した。「パトリック(PATRICK)」「ニューエラ(New Era®)」「インフォ ビューティ&ユース(info. BEAUTY&YOUTH)」「サーモマグ(thermo mug)」の4ブランドとコラボレーションし、6月30日に一部のマツモトキヨシ店舗と公式オンラインストアで発売する。
とのことである。
この試みが成功するかどうかはわからない。当方が懸念している点は、ブランド志向が強く価格が高い点である。
ザックリと価格を見ると、パトリックのスニーカーが1万9800円、ニューエラの帽子が4400円と4950円、インフォビューティ&ユースのTシャツが5500円、サーモマグの保温・保冷マグボトルが4180円となっている。
個人的には最も売れやすいのがニューエラの帽子とサーモマグの保温マグボトルあたりではないかと思っている。ついでTシャツだろうか。最も売れにくいのがパトリックのスニーカーだと思っている。
帽子とマグボトルが売れやすいと考える理由は値段が4000円台と比較的安いことと、試着が要らない&試着が容易という点である。マグボトルは試着が要らないことは言うまでもないが、帽子は試着が容易である。試着室も要らないし、頭に乗っけるだけである。
パトリックのスニーカーが売れにくいと考える理由はその逆で価格が高く、試着するのがめんどくさいからである。靴の試着というのはパトリックのスニーカーに限らずめんどくさい。
Tシャツはビッグサイズを選んでおけば試着する手間は省けるだろう。
ドラッグストア、コンビニが繊維製品の有力な販路として近年浮上している理由は、店舗数の多さだろうと考えられる。
スギ薬局は1100店舗、ファミリーマートは1万6600店舗ある。
今回、4ブランドがコラボするマツモトキヨシは
マツキヨココカラ/3月期増収増益、3409店に店舗数拡大 | 流通ニュース (ryutsuu.biz)
2024年3月末で、マツモトキヨシグループ出店95店舗・閉店35店舗で1923店舗、ココカラファイングループ出店45店舗・閉店25店舗で1566店舗、計3489店舗体制となる見込み。
となっている。ココカラファインで展開せずにマツキヨだけでの展開だとしても1923店舗もある。
1店舗に1型または1色3個ずつ配布してもマツキヨなら6000個というロットになる。
スギ薬局なら1色5枚ずつ配布しても5500枚という生産ロットである。ファミマソックスの販売数量ばかりがクローズアップされがちだが、それは1万6600店舗もあるから達成しやすいということへの注目度が低いことは片手落ちだろう。ファミマソックスなら1色10枚ずつ各店に配布しても16万6000枚の生産ロットになる。
メディアがいくら「大量生産大量販売の時代は終わった」と綺麗事プロパガンダを垂れ流したところで、繊維には生産のミニマムロットが各工程で厳然として存在する。
生地なら最低でも1反(1反=50メートル)の生産数量は必要だし、縫製なら最低でも1型30枚~50枚程度の生産数量が必要となる。
フルオーダースーツやオートクチュールよろしく1枚から1メートルから生産しますよなんてことは通常の工場では不可能だし、完成品の販売価格も何十万円という話になる。
だから繊維製品は店舗数の多いドラッグストアやコンビニが有力販路に浮上していると考えられる。
とりわけ、なんぼ表でイキっていても有名セレクトショップや百貨店アパレルからの生産発注数量は減り続けている。店頭で売れるかどうかわからないからミニマム生産ロットを遥かに下回るオーダーが主流となっている。ミニマムロットを下回る発注数量なのに細かい部分にはやたらと五月蠅いセレクトショップや百貨店アパレルなんかよりも大量に発注してくれるドラッグストア、コンビニの方が製造加工業者からすれば美味しい部分が多いと感じるのは当然の結果だろう。
さらにいえば、マス層の消費者からしても接客されずにほぼセルフで購入できるドラッグ、コンビニというのは、入りやすく利用しやすい店舗という位置付けになっているのではないかとも考えられる。
衣料品店の販売員による接客を不要だとは全く思わないが、苦手だと感じているマス層は少なくない。セレクトや百貨店よりもセルフに近いユニクロ、ジーユーなどの低価格店の方が居心地が良いと感じる消費者は多いだろうから、それとほぼ同じでセルフ販売を基本をするドラッグストアやコンビニの方が買いやすいと感じる消費者は、アパレル業界人が想像しているよりも多いのではないか。
このように生産者視点から考えても、消費者視点から考えても、今後ドラッグストアやコンビニは繊維製品にとってますます有力販路になる可能性は極めて高いのではないだろうか。
ただ、ドラッグストアやコンビニで売れやすい繊維製品は、
1、価格がある程度値ごろであること
2、試着不要、または試着が容易であること
の2点が備わっている必要があると当方は考えている。
タオル、靴下、肌着、帽子、手袋なんかはこれが当てはまりやすい。一方、ジャケットやズボンなどはこれに当てはまりにくいから展開するのはかなり難しいだろう。
comment
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/06/29(木) 1:55 PM
なんといーますかね、「付加価値信仰」に毒されてると
思うのですよ身に着ける物がらみの繊維関係者ってとにかくネームを乗せなきゃブランドで付加価値をつけなきゃ
と100人いたら110人が思っているそして付加価値を上乗せする最後の現場が店舗です
ところが売場がドラッグストアでは
付加価値もクソもありませんわなwwwそういう所で組合モノのオール化繊なニット製品を
それこそ週1着は購入するのがアパレル消費の最終形態
なんだろうなと思います。単価は800円が上限無印がやってるドラッグストア業態や一部セレクトが
やってるコンビニ業態なんざ、すぐ駆逐されます日用品消費の最終形態は、きんじょのドラッグストアで
・はんがく食パンを3日に1度
・88円の500mlペットを毎日
・夏場は324円の箱アイスを2日に1度
・Tシャツ下着類を月1度
・シャンプー歯磨きを月1度
・文房具その他を隔月
・胃もたれ、風邪ぐすりを適時購入する形態だと思います
ただし生鮮品と野菜はスーパーになる思い当たるところ大ありですよね?南サンwww
ワンストップで済む上、値段も安い
しかも営業時間は夜12時まで良い時代になったものです
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別のとおりすがり より: 2023/06/29(木) 2:00 PM
昨今のスニーカーブームは侮れないですね。
先にスニーカーが完売すると予想します。 -
ごう より: 2023/06/29(木) 10:34 PM
以前、テレビ番組にてファミリーマートの衣料品戦略が伊藤忠商事のビジネス戦略の一部として触れられていた。職業病なのか、普段からコンビニの品揃えやレイアウトなど気にしながら通っている。最近は昔ほど陳列もマニュアル化していないのか、同じ屋号でもオーナーや店長によって品揃えも陳列も工夫されて違いが目立つ。だから、注目の衣料品も配置や並べ方などが店舗で違っており、小売りに関わっている自分としては気になって仕方がない。。。えー!そこに置くの?って店もある。もちろん販路自体は素晴らしいと思うし、アイテムさえ暴走しなければ品目として安定的な存在になりうるかと。だからこそ、消費者に届くように些細なところまで気を配って販売してほしい。いくらフランチャイズとはいえ、伊藤忠もそこまでサポートしてあげればいいのに。最後に、最近ユニクロの下着のバリエーションが飽きてきたので、気分転嫁にファミマの柄パンツ購入してみようか検討中です。
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/06/30(金) 9:43 AM
大阪オバチャン>試着無用で安価」でなければ売れにくい
40代までのご近所着として定番の「レギパンにビックめT」
であれば、十分いける素地があるのでは?あとはバカ安で借りれるネームがあるかどうか
Tシャツはロゴがないと厳しいでしょうしねそして上下ともに2サイズ展開
ふだん着は徒歩7分のスーパーの衣料品売場で十分
という人が99%だと思いますところがスーパーから売場が消えて需要だけが残った
そこをドラッグストアが全部かっさらう可能性は
十分あると思いますめんどくさいんですよね、たかが服買うのに
クルマ以前に自転車こぐなんてww
ドラッグストアだけでなく、ネット販売でも、「試着無用で安価」でなければ売れにくいですよね~
スギ薬局のタオルは買ってみようと思います!