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南充浩 オフィシャルブログ

何となく変化する社内向けの独自基準

2023年6月28日 売り場探訪 1

卸売り型のブランドが自社サイトでネット通販をすることは今となっては極めて普通のこととして業界の内外を問わず広く認知されている。

工場が自社オリジナルブランド品を企画製造してネット通販することも今となっては当たり前のこととして広く受け入れられている。

 

しかし、10年前くらいはこれに目くじらを立てて非難する取引先は決して珍しくなかった。しかし、一部の取引先がいくら非難を繰り返したところで、卸売り型ブランドの直販も工場のオリジナルブランドも増える一方だったので、非難していた取引先も認識を改めざるを得なかったということになる。

そんな感じで10年間、5年間の間に認識が変わってしまうことはよくある。

 

つい先日、と言っても昨日のことになるが、ここ5年前くらいから抱えていた一つの小さな疑問が氷解した。

靴下・肌着の卸売り型メーカーとして中高年には比較的知名度が高いグンゼという会社がある。グンゼの隠れたロングセラー商品としてメンズ、レディースの「レギパン」というものがある。

レギンスパンツの略称だが、もうかれこれ10年くらいは売り続けているロングセラー商品で、定番化しているともいえる。

合繊+ポリウレタンという組成の布帛生地で作られた細身のパンツで、縫製仕様などは通常のパンツよりも簡素化されていてホームウェアとかワンマイルウェアに近い作りだが、黒とか濃紺を選べば外出用カジュアルパンツにも見えるという商品である。

非常に動きやすいという評判を聞いて、10年近く前に当方も黒無地を1本買ってみた。当時の定価は2900円くらいだったと記憶しているが、1600円くらいに値下げされていた物を買ってみた。

レギンスパンツというネーミングだがそこまでピチピチではなく、スキニーかスリムストレートというぐらいの細さである。

実際に聞いていた通りにストレッチ性が高くて動きやすかった。

しかし、当方はホームウェアやパジャマとして使用するにとどめ、仕事などでの着用はしなかった。理由は尻ポケットが右側にしか無かったからである。

仕事に出かける際は必ず、左の尻ポケットにタオルハンカチを入れているから、尻ポケットは左右にあることが望ましいからだ。

 

この当時はグンゼはまだ新商品展示会を開催しており、そのたびに当方もお邪魔させてもらっていたので、その展示会の際、レギパンの尻ポケットがなぜ右側しかないのか?ということを雑談がてら質問させてもらった。

そうすると、担当者からは

「主要販路である量販店の売り場区分によるもので、レギパンの売り場はホームウェア・肌着・パジャマで区分されており、尻ポケットが左右にあるとカジュアル売り場の管轄になってしまので、カジュアルとは異なる商品とするために尻ポケットを1つだけにしている」

との答えが返ってきた。

量販店にせよ、百貨店にせよ、各ジャンルごとに管轄が区切られている。もっといえば、各分野にはそれぞれ異なるバイヤーが存在しており、そのバイヤー同士のテリトリーというか境界もある。

この時はその答えで納得した。

 

それから5年くらいが過ぎ、売り場やAmazonでグンゼのレギパンを見ていると、尻ポケットが左右に付いていることに気が付いた。

あれ?売り場の管轄問題はどうなったのだろうか?

と激しい疑問を持った。

そうこうするうちにコロナ禍が始まってしまい、展示会も開催されなくなった。たったこれだけのことをわざわざグンゼの社員の方々に質問するのも申し訳ない。答えをいただいたところでどこかで記事として掲載するわけでもない。

なので疑問を抱えたまま過ごしてきたわけだが、昨日、グンゼの方々と直接話す機会があったので、雑談がてらレギパンの尻ポケット問題について質問してみたわけである。

 

そうすると

「何となく、5年くらい前から量販店でも『尻ポケットが左右にあってもホームウェアで構わないよね』という雰囲気になり、全然問題にならなくなった」

とのことだった。

レギパンに同じような商品も増えたし、その中には左右の尻ポケットがある物も少なくなくなったので、量販店側の基準も何となく変更されたという話である。

当方が驚いたのは、「尻ポケットが左右にあるパンツはカジュアル」という管轄区分は、業界的に決められた物ではなく、量販店が勝手に独自に社内向けに決めた区分だったという点にあった。

まあ、よく考えてみたらJIS規格のように第三者機関がルールとして尻ポケットの数を決めるはずがないということに思い至る。

 

今回の件で感じたことは2つ

1、尻ポケットの数に限らず社内向けの独自の区分が他にも少なからずあるだろうということ

2、その社内向け独自基準も周りの変化によってはなし崩し的に無くなるということ

である。

このレギパンの尻ポケット問題に限らず、実は厳格な第三者機関による基準でもなんでもなく、社内向けの独自基準という物が多々あって、それが何となく墨守されていたり、いつの間にかあやふやになっているなんていうことは珍しくないのではないかと思う。

現在、苦戦が報じられている百貨店や量販店などはそういう「意味不明の社内独自基準」というものを洗い出して見直してみてはどうだろうか。意外と業務の効率化や売れ筋商品の発掘に役立つのではないかと思ったりした次第である。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/06/29(木) 11:31 AM

    「何となく」ワロタw
    でも、尻ポケットが右側だけってのは、ビスポークのお高いトラウザーズ(w)であったりする仕様ですよね。ポケットが無いとお尻がセクシーすぎてアレですが。

    私は大昔に自衛隊にいましたが、自衛隊が使うライフルの安全蔵置は、頑なに銃の右側に付けられてました。
    西側諸国の軍用ライフルの安全装置は銃の左側に付いていて、銃のグリップを右手で握ったまま右手の親指で操作できるようになっています。しかし、自衛隊は他人から安全装置が掛かってるのが分かるようになのか、銃の右側に安全装置を付けていて、撃つ時には一回グリップから手を外して安全装置を操作するというアホ仕様でした。

    このアホ仕様は、1964年に採用された64式小銃~1989年に採用された89式小銃まで続いていましたが、イラクにPKOで行くようになって、ようやく「これダメなんじゃね?」と銃の左側にも安全装置を付けることになりました。といっても、もともとの設計がグリップを握ったまま安全装置を操作するように出来ていないので、左に安全装置を増設しても結局は一回手を離さないと操作できなかったんですがw

    そしてついに、2020年に採用された20式小銃では、60年の歳月を経てようやく世界標準の「銃のグリップを握ったまま安全装置を親指で操作できる」仕様になりました!ワーイw

    日本人って、意味ないことでも決められちゃうと守っちゃうところが面白いです(´・ω・`)

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