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南充浩 オフィシャルブログ

デフレ傾向が強まっている中国経済

2023年6月20日 トレンド 0

ほとんどの物事にはかならずタイムラグが生じる。

何か動作を起こして、その効果が出るまでには例え数秒であっても時間差が生じる。これがタイムラグである。

このタイムラグという言葉を初めて知ったのは、週刊少年ジャンプで連載されていた「よろしくメカドック」という自動車漫画でだった。

テレビアニメ化もされたが、正直なところ、原作漫画の方が面白く感じた。同じように感じた視聴者が多かったのか、原作よりも短期間で打ち切りになってしまった。

それはさておき。

このところの中国の経済指標を見ていると、明らかに不景気に突入していると感じられるのだが、復活したインバウンド中国人客の羽振りの良さから、一般的にはまだまだ中国向けビジネスは美味しいと思われているように感じる。

当方の身の周りでも中国向けに希望を見出しているアパレル業者が少なからずいる一方で「コロナ明けに久しぶりに中国の沿岸部(いわゆる経済特区地域)に出張したが2019年までのような活気は明らかに失われていた」と話す肌着OEM会社の若手社長もいる。

 

まず、中国の若者失業率が20%を越えているという事実である。

中国「若年失業率」が20%超え、過去最悪の背景 雇用全体では改善するなか、年齢別の格差拡大 | 「財新」中国Biz&Tech | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

若年労働者の失業率は逆に悪化を続け、2023年4月に過去最高の20.4%を記録した。

中国国家統計局が5月16日に発表した4月の雇用統計によれば、全国の都市部の失業率は5.2%と、前月より0.1ポイント低下。2022年以降の最低値を更新した。

 

とある。これは中国の公式発表である。中国の統計の公式発表は常々良い方に水増しされていると言われているので、実際の若者失業率は20%を大きく越えているのだろうと思われる。水増しして20%なのだろう。

 

次に言われているのは、中国がデフレに陥りかけているという公式発表についてである。

冒頭から動画を観ていただければよいが、めんどくさいという方に要点を箇条書きする。

5月の消費者物価指数は前年同月比0・2%増だが、前月比ではマイナス0・2%となっている。

また5月の生産者物価指数は前年同月比マイナス4・6%、前月比はマイナス0・9%となっている。

欧米は高いインフレ、日本も軽度のインフレに転じているが、中国はデフレに転じているといえる。ちなみい中国の統計は以下同文なのでこれでも多少は良い方に水増ししているのではないかと当方は見ている。当方は中国という国と社会を全く信用していない。蛇足だが韓国の国も社会も全く信用していない。

消費者物価指数というのは消費者から見た物価指数ということで、前年同月比(要するに昨年5月との比較)では物価は0・2%上昇している(実際ほとんど上昇していない)が、前月比(23年4月との比較)ではマイナス0・2%なので毎月物価は下落基調にあるといえる。

一方の生産者物価指数は、商品を供給している側の物価ということになるがこちらは昨年5月と比較しても、23年4月と比較してもどちらも下落しているということになる。

店頭で高い商品が売れにくくなっているから生産者は利益を抑えて商品やサービスを供給しているといえる。

 

デフレと高い若者失業率という状況を合わせて考えると、当方は日本のバブル崩壊以降のことを想起してしまう。特に2013年まで続いた就職氷河期である。

我が国のバブル崩壊は91年と言われているが、すぐに大不況が襲ってきたわけではない。大不況に陥るまでには何年間かのタイムラグがあった。これは同時代を20代以上で過ごした人には共通の記憶だろう。

衣料品でいえば、98年にユニクロのフリースブームが起きて「価格破壊」が顕著に表れたといえるのだが、その一方で、百貨店婦人服は98年には過去最高売上高を記録している。

 

《めてみみ》長い冬の時代 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

百貨店婦人服が長い冬の時代を迎えている。売上高はピークだった98年の2兆2700億円から18年の1兆1300億円へ半減した。婦人服の構成比率は20%割れまで落ち込んだ。

 

とある。これは2019年7月の記事である。

バブル崩壊から7年間、価格破壊は進んだ一方で、いまだに百貨店婦人服は売れに売れていたわけである。

百貨店婦人服以外でも90年代のファッショントレンドといえば、95年くらいからのビンテージジーンズブーム、96年からのバーバリーブルーレーベルブーム、90年代後半の裏原宿ブームなど、高額衣料品のブームが短期間のうちにいくつも起きている。

 

中国の経済失速をどの時点から数えるのかは様々な意見があると思うが、仮に2023年を起点と考えた場合、顕現するのは7年くらい先のことになるのではないかと思う。2030年前後になるだろうか。逆に2020年を起点と考えたり、それ以前の時点を起点と考えるとすると、顕現するのはもうすぐという可能性が高いということになる。

我が国の98年からリーマンショックまでの衣料品の消費動向を顧みると、98年のユニクロブーム以降、低価格衣料品の需要が伸びながらも、他方で高額衣料品のブームも繰り返し起きていた。いわゆる「消費の二極化状態」にあったということで、高額衣料品を購入する層は今よりも多かったのではないかと考えられる。

今の中国もこの二極化状態にあり、富裕層はいるが、若者の就職氷河期が始まっており今後、中間層の没落が始まるのではないかと当方は見ている。

中国の就職氷河期は我が国のそれよりも厳しくて長期間続くだろう。

 

未来のことはどうなるのかはわからない。予想が外れることも珍しくない。中国が景気回復をする可能性もあるが、当方はそろそろ中国向けビジネスからは足抜けする心構えくらいは必要ではないかと思っている。特にインバウンドを含めた中国の中間層向けのビジネス、サービスは今後かなり難しい環境に突入するのではないかと、中国ビジネスには無関係の当方は眺めている。

 

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