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南充浩 オフィシャルブログ

高価格帯でも高機能性服の方が売れやすい状況ではないかという話

2023年6月5日 トレンド 1

先日、と言ってももうゴールデンウィーク頃の話だが、某ファッション好きの社長と久しぶりに飲みに行った。直接のファッションの仕事はしておられないが、昔から当方とは違って、「ちゃんとした(笑)」ブランドの服を着ておられる。

もう知り合って10数年になるが、以前、2000年代後半だとユナイテッドアローズだとかそういう「ちゃんとした(笑)」セレクトショップの服を恐らくは定価で買っておられた。

ガンプラを作るほどに暇人の当方に比べて、多忙な人なので、年に1回か2回飲む程度だったがコロナ禍が起きてたっぷりと2年間くらいはお会いしていなかった。

 

久しぶりにお会いして衣料品の話になったのだが、その時に来ておられた服は「ちゃんとした(笑)」セレクトショップではなく「ダイワピア39」に変わっておられた。

このブログでも何度か紹介したことがあるが、釣り具のダイワが展開しているファッション向け衣料品ブランドである。

開始した直後は、比較的価格が高いもののビームスのサポートもあって、巨大ブランド化はしなかったものの、中規模ブランド化することには成功したといえる。

今のご時世では巨大化させるためには、ある程度の安さ・割安感がないと衣料品に限らずどの分野でも不可能である。高価格品が飛ぶように売れるなんてことは日本では起きないし、アメリカでもイギリスでも起きない。ちなみにアメリカはまたウォルマートの業績が回復し、イギリスでは現地版100均ショップが売上高を伸ばしている。

 

価格帯からするとユナイテッドアローズやビームスあたりとダイワピア39はほぼほぼ同じだと言えるのだが、どうしてこの社長が乗り換えたのかと尋ねてみる

「やっぱり機能性が高いからですよ。シワになりにくい、洗濯してもすぐに乾く、防水性があるなどなど」

という答えが返ってきた。

 

失礼を承知で直截的に言ってみると、ダイワピア39がセレクトショップ利用層に好意的に受け入れられた理由は、デザイン性もさることながら高機能性が理由だといえる。言ってみると低価格カジュアルにおけるワークマンの立ち位置ではないかと当方は思っている。極端な言い方をするとダイワピア39はワークマンの上位互換、高級なワークマン、高価格高感度のワークマン、というのが最も適正な評価ではないかと思う。

断っておくがケナしているわけではない。

 

何が言いたいのかというと、衣料品の場合、日本国内である程度の販売をしたいのなら、最も響きやすいのが「高機能性」ではないかと当方は考える。当方は低価格~中価格機能製品ばかり買っているが、高級ゾーンでも同じような嗜好の消費者は増えていると体感的に感じる。

某イキリコンサル氏と比較的関係が良好だった2017年~18年頃の話だが、普段は欧米一流ブランドの服を着用している同氏だが、その頃は、同じ欧米ブランドでも本格ウール素材スーツではなく、高機能合繊製のトラベルスーツやアクティブスーツを着用するようになっておられた。

理由は便利だからだ。

ただ、氏の見栄や体裁もあってワークマンやアオキ、ジーユーの高機能合繊セットアップスーツを着るわけにはいかないので、欧米ブランドの高機能性スーツを着ておられたわけである。

ジーユーが当時上下で7000円くらいだったのに対して欧米高級ブランドだと高機能合繊スーツは10万円前後していた。ざっと価格差は10倍である。

極端に直截的にいえば、この欧米高級ブランドの機能性セットアップはワークマンやアオキのアクティブワークスーツの上位互換であり、高価格版であるといえる。

当方はアオキのアクティブワークスーツを着用して行動することに何の抵抗もないが、業界人で抵抗のある人はこういう商品を購入しているという話である。

 

 

で、結局のところ何が言いたいのかというと、当方よりもはるかに高収入でファッション好きの方々でさえ、高機能性服に乗り換えているという購買動向からすると、今後、衣料品の国内市場は低価格から高価格まで高機能性商品しか売れにくいという状況になるのではないか、という話である。というかもうそうなっていると考えた方が正しいだろうか。

ではどうしてそうなるのかというと、繊維業界にはまだ「高くて良い風合いの素材を使いました。だから高価格なんです」という売り方に固執しておられる人が少なくないが、ハッキリ言うと、当方のような人間からすると「風合いが良くて高いことは理解する」ものの、使ってみて不便に感じることの方が多い。例えば動きにくい、洗濯しても乾きにくい、夏場に汗をかいて濡れたらなかなか乾かない。重量が重い。などなど。

そうなると、高機能服ばかりを選ぶようになる。当方はユニクロ、ジーユー、ワークマンあたりの機能服しか買わないが、仮にまとまった金が手に入って試しに高い服でも買ってみるか、となった場合、わざわざメンテナンスがめんどくさくて機能性が低い高価格ブランド服を選ぶかというと、それはあり得ない。

たしかに生地の風合いの良さや表面感の良さなどはこれでも繊維業界人なので理解はするが、わざわざ所有したいとは思わない。やはり高くても高機能性が担保されている商品の方を選ぶ。

ダイワピア39や欧米高機能スーツに限らず、ノースフェイスを筆頭とする高価格なアウトドアブランド服が好調なのも同じ理由ではないかと当方は考える。

 

もちろんこの世の中には多様性は必要だから、メンテナンスがめんどくさい高感度素材を使った服があっても構わないし存在を否定することはできない。

しかし、それはかなり限られたマニアの需要しかないので、ある程度の規模まで拡販を目指したいのであれば、高価格帯ブランドでも機能性服を主力に据える方が売上高は稼ぎやすいだろう。

今回はざっとそんな提案である。

 

 

ダイワピア39の服をどうぞ~

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/06/07(水) 9:17 AM

    そして、高機能商品には、価格による機能差はありません

    天然繊維モノだと、お値段次第で機能差・風合い差がありました

    だから、ポリ混より純毛のほうが値段が高い分、暖かい
    ウール100よりカシミヤのほうが値段がさらに高い分、軽い

    しかし、化繊の服は、どのネームだろうが
    機能も風合いもまったく同じです

    違いはデザインだけ。といってもデザインは即パクられるのが
    常なので、あとはロゴをデカデカと入れるぐらいしか
    「値段の違い」を見せつける方法がありません

    したがって、昼下がりのクイ~ンズ伊勢丹では高齢ご夫婦が

    ・実質重視な奥様はウニクロかスーパーの真新しい
     日よけパーカー
    ・ネームに弱いダンナ様はアンダーアーマーやアディダス
     の長袖ハイネック

    でお買い物なんて光景が至る所で見受けられます

    ワークマンは低所得層がな~んとなく買う先でしょうな

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