
風合いが良いだけの上質素材はマニア層以外には売れにくいという話
2023年6月6日 素材 9
繊維で言うところの「高品質」という言葉にはさまざま複数の意味があるのでなかなか理解されるのが難しい。
丈夫で長持ちというのも「高品質」だし、つややかで滑らかというのも「高品質」である。また、繊細な生地も「高品質」である。
ただし、全ての意味が同時存在することはできない。平たく言うと、繊細な生地と丈夫で長持ちする生地は物理的に両立不可能である。
なので一概に「高品質」を謳っても消費者個人個人の想起する高品質とはズレていることが少なくなく、より消費者の理解が深まらずに混乱をきたすといえる。
このあたりが極細ウールしかり、カシミヤしかり、シルク(絹)しかり、でいくら「高品質」と世間的に評価されても業界人が思うほどには需要は伸びにくい原因の一つでもあるだろう。
特に「天然の風合いが云々」とか「昔ながらの製法で繊細な云々」という「上質素材」「高品質素材」はなかなか需要増には至らない。メンテナンスがめんどくさいという点も大きなマイナス要因ともいえる。
まあ、何の話がしたいかというと、例えばシルクである。
一時期、ユニクロがシルクのブラウス、ワンピースを主にレディース用途で仕掛けてきた。業界的には「ユニクロがついにシルクまで」と驚愕したが、残念ながら1シーズンか2シーズンしか続かなかった。あの利に敏いユニクロが継続しなかったということは想定よりも売れなかったと考えられる。
一定水準売れていたらもっと長期間継続していただろう。
ではなぜ、ユニクロといえどもシルク製品が売れなかったのか?
当方は「メンテナンスがめんどくさそう」と考える消費者が多かったからだと思う。
実際にシルク製品は普通の綿や合繊素材に比べて洗濯するのに気を使う。いくら業界の人が「洗えますよ」と言ったところで、広く共有されていないし、洗濯表示も「手洗い」とか表示されている。
もうそれだけで一般消費者にとっては「めんどくさい存在」なのである。
最近ではクレームを予防するために、ポリエステル100%の厚地織物製品でさえ「手洗い」の洗濯表示が付けられていることが少なくないが、経験則的には「洗濯機で洗える」と知っている人も多いからさほど気にはならないが、普段接する機会が無いシルク素材だと、確信が持てずに「めんどくさい」と感じてしまうと考えられる。ウール素材も同様だろう。
もし、ユニクロが再度シルクへ挑戦してみたり、ユニクロ的に取り組みたいブランドがあるなら、真っ先にシルクに機能加工を施していることを謳うべきだろう。
それがシルクのアイテムをヒットさせるための最大の仕掛けになると思う。
業界の中には「シルク製品市場を再興したい」という思いで活動されている人たちがおられるが、今の「高品質」推しではシルク製衣料品の需要は伸びないだろうと見ている。
そんな中、この記事が掲載された。とはいえ、そんなに注目はされていないが。(笑)
日本蚕毛染色 シルク100%の「ゴムゴムシルク」を開発 | 繊研新聞 (senken.co.jp)
染色加工業の日本蚕毛染色(京都市、冨部純子社長)は、シルク100%でストレッチ性があり洗える糸「ゴムゴムシルク」を開発した。サテンなど生糸を使ったシルク生地へのウォッシャブル加工も本格化する。
とある。
要するにシルク100%のストレッチ素材やウォッシャブルシルク生地などを開発したという話である。
ゴムゴムシルクは、生糸を加工することで捲縮(けんしゅく)形状を持つ。シルクのたんぱく分子を特殊な加工技術で改質したウォッシャブルシルク「セレーサカルメン」の技術を応用したもので、バネのような構造を維持し、ストレッチ性を発揮する。
セレーサカルメンは絹紡糸が中心で、インナー用途を中心にリピーターが付いてきた。ウォッシャブルに加え、風合いや光沢を維持し、色落ちもしにくいという特徴もある。
とのことである。
当方はシルクには疎い方なのだが、この会社の存在は4~5年前にオールユアーズの原さんから教えていただいた。
正直あまり知名度は高くないが、今回の記事よりも以前からシルクやウールへの機能性加工に定評があったのだという。
知識が乏しい当方はこうやって様々な人から教えていただいているわけである。
シルクにしろウールにしろ、現在のように「風合いの良さ=高品質」という売り方では支持されるのは所詮はマニアな少数派だけである。
衣料品だからそれが成り立つと思われがちだが、他の商品に置き換えてみるとそれがおかしいことに気が付くのではないかと思う。
例えば、毎度おなじみのガンプラだが、マス層は機体の種類やその機体のデザインや可動性に注目をする。当方もそうだ。
しかし、マニア層の中にはプラの材質についていろいろと思う人もいる。一口にプラモと言っても、使われているプラ素材が柔らかい物があったりすごく硬い物があったりする。それを少数のマニアな人が「あのプラ素材は柔らかすぎてモールドのエッジが立っていない云々」みたいな批評をしたところで、マス層からするとそこは大した問題とは感じられない。言われてみればたしかに。。。程度である。
となると、シルクやウールの「風合いが云々」というのも似たような感じではないだろうか。それよりもストレッチ性だとかウォッシャブル性だとかそういう物を打ち出した方が多くの消費者に支持されやすくなるのではないだろうか。
前回の「高級服も高機能性が求められる」というブログにも繋がるのだが、結局は「わかりやすい」「メンテナンスしやすい」という機能性がシルクにも求められていると考えて取り組むべきではないかと思うがどうだろうか。
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comment
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化繊移行さん より: 2023/06/07(水) 6:51 PM
昨今のウール混、ウールとポリのTシャツは保温と速乾性を兼ね備えた代物ですよ。綿から化繊へ、化繊から天然と化繊の物へ、そうなると綿に戻れない。 特に夏。 ただし、UNIQLOのような低価格の化繊には、汗を吸い上げる機能は有るが、速乾性にはとても弱い。 あくまで、一般アパレルレベル。 安く、手軽に、いつでも、これがUNIQLOの売り方。
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/06/08(木) 11:55 AM
「一般アパレルレベル」ですってwおつかれさまです
そう、一般の人たちは
・メンテ性
・価格しか見ません。んで、一般アパレルレベルでないww人は
ヲタ商品に走るわけですな。その典型が合繊下着ただ、しょせんヲタ向け商品です
高価格なので、一般アパレルレベルwwな我々には
えいきゅうに関係ないでしょうwww -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/06/08(木) 12:09 PM
>業界的には「ユニクロがついにシルクまで」と驚愕したが
つまり、業界人は
・ウニクロがこうきゅう素材の代表格であるシルクを~
と思ったという訳ですな
しかし、市場の受け止め方はまったく違いました・「そもそもシルクってナニよ?」
・「そもそも素材なんてどうでもいいよ。気にした事ないもん」ふつーの人すなわち今の日本で消費資材における売上の構成の
大半を占める人たちは、素材なんてどうでもいい訳ですよそれよか、お気に入りなり最近流行ってる服のカタチをしていて
そこそこ長もち・せいぜい2年着れて、オネダンが安い事のほうが
重要ですふつーの人はこう考えているのに、ウニクロはシルクでプレミヤム価格
をとろうとしたでしょう?そら売れるわけありませんわな。だってネダンが高いんだもん
したがって、メンテがめんどくさそうだから
売れなかったわけでは決してありませんそもそもウニクロでお買い物する人たちはメンテなんて考えません
一律洗濯機に放り込んで全自動で回してオシマイです
せいぜい100円高い柔軟剤を買う程度でしょう -
あわあわ より: 2023/06/09(金) 9:45 AM
何この素人の集まり。業界人だとしても売れてない、ただの愚痴しか言えない生産管理レベルでしょ。
売れてるブランドもたくさんあるし、もっと繊維業界にとってプラスになること書けよ。ただの粗さがしより、もっと生産的なこと書けって。まぁ素人すぎて書けないんだろうけどね。 -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/06/09(金) 12:16 PM
おもしろいのが沸いてきましたねw
では、先陣をきって「生産的なこと」を書いもらおうw
もちろん何も書けないから短レスのかき捨てで終わるのを
知っての上での煽りですけどねぇwwwwwウマしかはさておき、業界の売上の大半を占める
「ふつーの人」の視点に立つのはムツカシイですなぁ・・・その点、ふつーの人と同じ店でふつーに大量に毎シーズン
服を買ってる南サンの分析は読むに値します業界人がふつーの人になりゃいいんですよ
でもその帰結としてはね
「商売たたんでウニクロに転職するしかない」
としかならない訳です
たまに沸くイキリ厨房諸君にメッセージです
「転職するなら、おはやめにねw」
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あわあわ より: 2023/06/21(水) 5:18 PM
なんでこっちが生産的なことを書かないといけないんだよ笑
否定的な居酒屋での愚痴レベルしか書いてないから、なにか生産的なこと探して書いてよってことだよ。それと転職もなにも繊維関連で会社経営もしてるし、欧州メゾンにも関わってるけどなにか?弊社の売上も昨対150%で儲かりまくってますけど。
どうしたら物が売れるかもわかってるし、いちいち悲観的なことを一生懸命に探して書くほど暇ではないから。
それに南氏に直接ものを言おうと思えばいくらでも言えるツテもあるから暇出来たら直接言うことにするよ。素人さんや大手さんには出来ないでしょうけどね。まだまだ繊維は儲かるから、愚痴いう暇あれば努力したほうがいいよ
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/06/30(金) 9:32 AM
懲りずに沸き続けるウマしか君へw
転職するならおはやめにねww
(このセリフ・何度めだろうorz・・・)マァ若いうちはウマしかでもしょうがないんだけど
今のご時世、けーざいてきにゆきづまるからねぇ・・・んでゆきつく先はおれおれ詐欺の手下なんてのが
ホントにでちゃいましたから・・・ -
あわあわ より: 2023/07/05(水) 12:53 PM
南みつひろ的底辺で傷の舐め合いをしている人たちへ
色んな会社が試行錯誤していいもの、売れるものを非難して馬鹿にしてるようだが、いい加減に気づいたほうがいいよ。
そんなことしても意味あるのか?ってことを。底辺にいるから儲かってる部分が見えてないかもよ。
単刀直入に言ってあげると視野が狭いんだって。マァいくら言ってもわからないだろうし、そんなんだからネットで愚痴とかマイナス思考的な考えかたしか出来ないんだろうけど。
あと転職、転職って、、、、それしか言えない語彙力のなさを反省することから始めてみたら?なんども言ってあげる。儲かってる繊維関連の会社なんていくらでもあるよ。みんな努力して、付加価値つけて売れようにずっと考えてる。
失敗することも、検討違いもあるだろうけど、馬鹿にするのは違うでしょ。それならどう改善したらいいかぐらい言ってみろってことね。
傷舐め合いしか出来ないなら、ネットでやめてくれないかな?見てしまって、気分悪いからちなみにうちの社員の賞与は200万近く出してるからね。4−6月とかもさらに売れてるからね。
それでストレス解消してるのかもだけど、あまりにダサすぎる。以上
天然繊維は「いまや完全に終了」です
機能の面でも価格の面でも
・ストレッチ性=それこそ化繊が本場
・ラクちんメンテ性=化繊にかなう訳がない
じゃあポリ混もしくはウール混は?となりますが
すでに失敗事例があります。それも超大手w
DRYFITにウール混がありましたが
マァ狙いは高機能化よりも
ただの「高価格化」だったんでしょうな・・・
上代が化繊100版の2倍でしたから
機能面でも、ストレッチ性が悪く、1シーズンでポシャリました
安い化繊100の商品を1シーズンで使い捨てるのが
もっとも合理的な行動です
メンテ?テキトーに洗濯機に放り込んで終わりです
天然系が生き残れるのは
冬場のダウンぐらいじゃないのかな?
ただあれも濡れるとセルが潰れて
熱をキープできなくなりますからね・・・
しかも「服=1シーズンで使い捨て」の固定概念が
定着しつつある今では、ネダン高杉ですし