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南充浩 オフィシャルブログ

内部事情はわからないがオンワードとウィゴーの提携は補完関係が成り立っている

2023年6月1日 企業研究 1

一般的に資本業務提携はどこまで提携するのかケースバイケースであるため上手く行くとも行かないとも言いにくい。

しかし、先日発表されたオンワードとウィゴーの資本業務提携は、外野から眺められる部分だけでいうと、お互いに無い部分を補完し合った良いマッチングではないかと思う。

あとは、内部の人間同士の訳の分からない思い込みとか感情とか社内政治とかそういう物によって大きく左右されるので、その辺りは全く分からない。人間ほどめんどくさい生き物はこの世にいない。

 

当方ごときが指摘するまでもなく、オンワードとウィゴーは意外性は高いが、よくよく考えてみると良い取り合わせではないかと思えて来るという人が多いことだろう。

オンワードHD/Z世代に人気のウィゴーと資本業務提携

ウィゴーは、「YOUR FAN」をテーマに、ファッション・カルチャー・ライフスタイルを組み合わせて新しい価値を創造し、街や世の中を彩る事を目指す、10代から20代のZ世代を主な顧客層とするファッションカンパニー。全国の有力ショッピングセンターなどの商業施設へ168店舗を展開しており、高い知名度とZ世代からの強い支持を得ているという。

オンワードHDは、ウィゴーによる第三者割当増資を引き受けることにより、発行済み株式総数の20.27%を保有する株主となる。オンワードHDは、ウィゴーの強みであるZ世代向けのマーケティングプラットフォームを活用することにより新たな顧客層の獲得を目指す。

ウィゴーは、オンワードHDの有する商品・生産プラットフォーム、ECを中心としたデジタルプラットフォームを活用する計画だ。

 

とある。

オンワードHDがウィゴーの株式を20%強保有するという形での資本業務提携ということになる。

 

細かい財務分析などについては当方にはその能力が欠如しているため、専門の有識者にお任せするが、当方からすると、どちらも微妙にブランド政策に行き詰った企業同士だが、顧客層が全く異なるために補完関係が構築しやすい両社だったと言える。どこのだれが企画したのかわからないが、妙手と言えるのではないだろうか。

 

まず、ウィゴーだが顧客層はZ世代となっているが、Z世代の中でもかなり低年齢層のみに支持されているのが現状である。以前は10代後半から20代顧客が中心だったが、10年くらい前からは中高生向けブランドと業界内では認識されている。実際に店舗を見てみても足を踏み入れているのは中高生ばかりである。

顧客層、価格帯が重なる競合としてはジーユーが想起されるが、ジーユーは当方を含めた中高年客層も増えている。商品テイストがさして変わったとも思えないのだが、安さに惹かれてなのか中高年客層は年々増え続けている。それに比べるとウィゴーは中高生客しか入っていない。顧客層がブレていないといえば聞こえはいいが、高校を卒業すると同時に顧客も卒業してしまうのが現在のウィゴーということになる。

 

一方、オンワード樫山だが、こちらは公式サイトのブランド群を見ても、20代半ば以降の女性、しかもテイストはトラッド、セミフォーマル、一部モードみたいな感じのブランドばかりで、ストリートなカワイイカジュアルのウィゴーとは顧客層も商品テイストも全く異なる。

ショッピングモール向けの「エニファム」「エニシス」以外はほとんどが百貨店、一部ファッションビル向けのブランドばかりなので価格帯も低価格のウィゴーとは全く異なっている。

ついでにメンズのブランド群なんてオッサン向けばかりである。

主力となるレディースでは「アンクレイヴ」「エイトン」「ハッシュニュアンス」など新しい若い女性向けブランドも開発されているが、どれもお高く止まった感じで当方には全く親近感はわかない。

 

このように見てみると、お高くてモード、セミフォーマル、トラッドな20代以降向けブランドばかりのオンワードと、低価格中高生向けブランドのウィゴーとは極めて上手い補完関係にあるといえるだろう。

 

さらに最近の動向を見てみると、まずウィゴーだが、基幹ブランドであるウィゴー以外に目ぼしいブランドが無い。公式サイトからブランド群を確認してみても、細々したタレントブランドばかりである。その中で「プニュズ」は比較的名が通っているが、それ以外はファンの人以外はまるで知名度の無いブランドである。ということは売上高もたかが知れているだろう。

ブランド政策から見ると、ウィゴーは明らかに手詰まり感がある。基幹ブランド「ウィゴー」以外に2本目の柱が生まれてこないのである。そして学生を卒業すると同時にウィゴーからも顧客は卒業してしまう。

 

一方のオンワードだが、ブランド群に安定感はあるものの、基幹ブランドの客層は中高年化しており、若者層が全く取り込めていない。以前にも書いたが、ファッション専門学生からオンワード樫山の知名度は業界人が想像するよりもはるかに低い。理由は彼らからすると、興味の対象外の商品ばかり作っているからだ。

新ブランドとして「ハッシュニュアンス」「アンクレイヴ」「エイトン」などを立ち上げているが、高校生・大学生からすると敷居が高いので恐らく今もあまり親しみは持たれていないだろう。

そういう意味では、今回の提携はお互いにブランド施策が行き詰まりを見せた物同士という共通点があるといえる。

 

記事には

オンワードHDは、ウィゴーの強みであるZ世代向けのマーケティングプラットフォームを活用することにより新たな顧客層の獲得を目指す。

とあるが、オンワードの既存ブランドでは新たな顧客層の獲得は難しいと考えられるから、新規ブランドの立ち上げが必要になるだろう。

人的交流などが上手く行けば、ウィゴーのノウハウを取り入れたオンワードの若者向け新規ブランドの立ち上げが可能だろうが、社風の全く異なる両社スタッフの気質が全く合わずに画餅に帰す可能性も決して低くはない。

しかし、オンワードが独力で若者向けのカジュアル新規ブランドを立ち上げることは不可能だと当方は見ているので、ウィゴーとの資本業務提携は今後効力を発揮できるかどうかはわからないが、まずまずの策だったと言える。

 

それにしても今後はこのような大手と比較的著名な中堅企業との提携やら買収やら統合が今後は国内アパレル業界では主流になるだろう。

今更、昔のように爆発的に売れる新規ブランドなんて生まれてこないし、インフルエンサー起用などを起爆剤にしようとしたとて、売上高の成長限界は意外と高くないし、何よりもインフルエンサーブランドの寿命は短い。オンワードのような大手企業が望むような永続性が無い。

となると、他社との提携、買収、統合が今後は国内アパレル業界では主流とならざるを得ないと考えられる。

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 comment
  • 読者 より: 2023/06/01(木) 1:12 PM

    否定的反応が多いなか、南さんの分析は説得力ある。
    ウィゴーは企業IRがうさんくさくてヤバい企業という印象あるしこの提携がうまくいく可能性も高くないが、
    たしかに仕組み的には補完関係あるし合理的と言える。
    なるほどなぁと唸りました。

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