
古着の低価格化が始まるか?
2023年5月26日 企業研究 1
以前から何度も書いているように、日々着用しているカジュアル服の75%~80%くらいがユニクロの値下げ品とジーユーの値下げ品である。
それで何も困らない。
ただ、ユニクロとジーユーに飽きてしまうことがある。そんな時にアダストリアの値下げ品やベイクルーズの値下げ品を買う。
コロナ禍が始まる少し前から古着に注目が集まっていた。エライコンサルのオジサンは「貧困化で低価格志向が極まったせいだ」と分析していたがその分析は当方は全く的外れだと思っている。
理由は、古着の方がユニクロ、ジーユーよりも値段が高いからである。貧困化でカネが無くて本当に安い服が欲しいのであればジーユーの値下げ品一択である。Tシャツやカジュアルシャツなら590~990円で買える。
ブランド物ではない古着でも軽量ブルゾンやパンツでも3000~5000円くらいはする。下手をすると同じ分類の商品ならジーユーの定価の方が安いくらいである。
またユニクロの定価は当てはまらない品番も増えたが、値下げ品なら古着よりも安い。
古着が注目された最大の原因は、ユニクロ、ジーユーを始めとする大手低価格ブランドに飽きたからではないかと当方は思っている。
人間は飽きる動物だから、いろいろなブランドの服を着る。365日全身ユニクロでは飽きてしまうし、365日全身リーバイスでも飽きてくる。
国内市場は、大手低価格ブランド群(体感的に20くらいのブランド数)がマス市場を占有してしまっている。目先を変えようと思っても「いつものどれかのブランド」で買うことになる。圧倒的にある程度の値ごろ感で目先を変えるなら古着が手っ取り早い。
古着は何せ一点物に近い。元来は量産品だが、大手マスブランドのように店頭に同じ物が何十枚も並んでいるわけでもないし、ストックに何百枚も積んでいるわけではない。売り切れても同じ物が追加補充されることはあまりない。そこに「今の」量産品には無い面白味がある。だから低価格マスブランドに飽きたら、少し値段は上がるが古着を買ってその部分で差別化を楽しむのだろうと思う。
大手低価格ブランド群の占有化が高まった現在だからこそ、自分自身の楽しみのため、または他人との差別化のために古着を取り入れるという人が10年前よりは増えているのだろうと思う。決してカネが無いから安い服が欲しいわけではない。くどい様だがそれならジーユーで値下がりした590~990円の服を買い漁った方がよほど安い。
じゃあ、古着がユニクロやジーユー、しまむらなど大手低価格ブランドを脅かすほど市場規模を拡大できるかと問われればそれはあり得ないだろう。
ファッションにあまり興味の無い人は買わないだろうし、それらの人々が動くには現在の古着はジーユーよりも高い物が多い。
当方は古着市場なんてその程度で十分だと思っている(古着が好きではないから)が、もし、市場規模を拡大したいと考えるなら、低価格化する必要がある。
市場規模を拡大するには何でもそうだが、低価格品を普及させることが鉄則である。インターネットだって携帯電話だって自動車だって発売原初よりはかなり値下がりしている。
そんな中、こういう施策が行われるのは極めて当然だろう。
店舗面積は35坪で、取り扱い商品はSPAブランドやセレクトショップのオリジナル品など。中心販売価格は2000〜3000円と、「ラグタグ」(中心価格9000〜1万円)と比較すると3分の1以下に抑えている。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」など一部デザイナーズブランドの商品もあるものの、1万〜2万円と手に取りやすい価格帯のものに限られる。
この中心価格帯はざっくりジーユーの定価と同じくらいといえる。
これなら「古着って他人のお古の割には値段が高いやんか」と思っている層も試しに買ってみようと思える値段である。
この新業態「ユーズボウル」がどこまで拡大できるのかはわからない。しかし、現在以上に古着市場の拡大を図ったり、自社の売上高を増やそうと考えるならこの古着の低価格化しか手は無いだろうというのが当方の意見である。
かつて95年のビンテージジーンズブームのころ、「本物のビンテージジーンズ」を求めた若者によって古着ブームが起きた。それによって「本物のビンテージジーンズ」は価格が高騰したが、それでもカネをかき集めて買う若者がそれなりにいたが、現在の消費者気質はそうではないと思っている。たかが洋服、それも他人の手垢の着いた古着に対して身の丈に合わない金額を支出しようと考える人は少ない。現在の路線のままで古着市場全体、ブランド古着が拡大する可能性は極めて低い。
これ以上、めんどくさい蘊蓄やら謎の神話やらを構築されても胡散臭さが増すだけで、売上高増も客数増も見込めないだろう。
ワールドの子会社としてティンパンアレイが売り上げ規模の拡大を図るのであれば、低価格古着に着手するのは当然の施策である。果たしてこの低価格古着がどこまで市場を開拓できるのかは実際にやってみないと分からないが、原則的な考え方は合理性がある。
ただ、これがある程度の成功したとしたら、その時には古着の値崩れが始まるだろうと思う。そういう意味においては古着市場も岐路に差し掛かっており、結構ターニングポイントとなる施策なのではないかと思って眺めている。古着は嫌いだから買わないけども。
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これ、セカンドストリートの後追いでは…?