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南充浩 オフィシャルブログ

都心大型旗艦店と地方郊外店の売上格差が広がるばかりの百貨店業界

2023年5月19日 百貨店 0

百貨店関連の報道は数多くあるが、各店の売上高を踏まえてというのは少ない気がする。

特にSNS上ではほとんどが情緒的で、お気持ち表明に過ぎない。挙句の果ては文化ガーとかそういうことになってしまうのだが、ラグジュアリーブランドのテナントショップが入店することの何が文化なのかさっぱり分からない。

そんな中にあってこの記事は資料的な価値が高いと感じられたので、ご存知の方も多いだろうが改めてご紹介したい。

百貨店「店舗売上高ベスト10」 東京・大阪・名古屋の一番店が過去最高更新、2022年度

 

1位が伊勢丹新宿本店、2位が阪急うめだ本店というのはずっと以前から変わらない不動の順位である。ただ、今回特筆されるべき点は、コロナ禍を引きずりながら、インバウンド客も19年ほどには戻らない中で両店ともに過去最高売上高をたたき出した点にあるだろう。

3位は今売却問題で揉めている西武池袋店である。

4位はJR名古屋高島屋で、これも過去最高売上高を記録している。

以下に記事中より画像を引用添付させていただく。

衣料品業界人やメディア業界人は伊勢丹新宿本店、阪急うめだ本店を注目しがちだが、このランキングを見ると改めて髙島屋の強さに注目したい。

5位に髙島屋日本橋店、7位と8位に髙島屋大阪店と髙島屋横浜店の3店舗がランクインしており最多である。4位のJR名古屋高島屋は髙島屋の出資比率が30%しかないので純然たる髙島屋ではないが、それでも一般人から見れば「髙島屋の仲間」に見えているわけだから、これも入れると4つがランクインしている。

その他で同じグループで複数ランクインしているのは、伊勢丹新宿本店と6位の三越日本橋店しかない。

 

売上高の高い店が全国に満遍なく散らばっているのは髙島屋の最大の強みであると同時に、当方は最も強い百貨店は伊勢丹でも阪急でもなく髙島屋ではないかと思っている。

残り2店は松坂屋名古屋店と近鉄百貨店あべのハルカス本店となっており、グループ全体での強さを見ると髙島屋が圧倒的だといえる。

 

三越伊勢丹が2店舗入っている以外は、残りの百貨店グループはそれぞれ旗艦店が1店ずつランクインしているに過ぎない。そこに髙島屋の総合力の強さがあると思っている。

 

かく言う当方も業界紙に入社したてのころは、伊勢丹新宿本店とか阪急うめだ本店ばかりに注目していたわけだが、当時、百貨店向けメンズ衣料ブランドを担当しておられた部長に

「いくら伊勢丹新宿や阪急梅田の売上高が大きいと言っても、単店舗ではこちらとしてはあまり商売上の旨味が少ない。その点髙島屋は大型店が全国各地に散らばっており、そちらとガッチリ取り組む方がメーカーとしては旨味が大きい。総合力で判断する必要がある」

と教えていただいた。

この当時はまだ三越は伊勢丹と合併しておらず、三越も全国的に大型店が全国に散在していた。あと大丸と松坂屋も合併しておらず大丸も髙島屋よりは売上高が落ちるものの、同じサイズの店舗が全国に散在していた。

この当時の情勢で言うと、髙島屋、三越、大丸と全店ベースで取引を行う方がメーカーとしては旨味が大きかった。

 

今回、このランキングで見ても過去最高売上高が3店舗あり、その他、コロナ前の19年比を上回っている店舗が4店舗ある。

都心大型旗艦店はかなり好況に転じているといえる。その一方で先日発表された名鉄百貨店一宮店の閉店に代表されるように、地方・郊外の中小型百貨店は不振続きで閉店ラッシュが続いている。

この記事でも

地元の中間層に支えられた地方・郊外立地の百貨店と、富裕層の顧客基盤を持ち、訪日客の来店も多い大都市立地の百貨店。両者の明暗はコロナ前から存在したが、回復局面でコントラストがいっそう鮮明になった感がある。

とまとめられており、これが現在の百貨店全体の状況である。

逆に言うと、伊勢丹新宿や阪急うめだがいくら過去最高売上高をたたき出しても百貨店全体の売上規模は回復しないし、店舗数も減り続けるというのが実際の姿である。

 

ただ、大都市都心店なら絶対に安泰かというとそれも言い切れない。大都市都心にあっても不振百貨店は過去にも多々あった。

例えば、名古屋市にあった老舗の丸栄百貨店は売り上げ不振で結局閉店に追い込まれている。また銀座松坂屋も銀座という好立地にあって晩年には売上高100億円台という不振で閉店に追い込まれ、ギンザシックスとしてリニューアルオープンしている。

またJR大阪三越伊勢丹も売上高が低迷し、ファッションビル「ルクアイーレ」にリニューアルしてしまった。

伊勢丹関係でいうと、名古屋駅前の大名古屋ビルヂングにサテライト小型店「イセタンミラー」を開設したが、すぐに撤退に追い込まれている。

 

ということは、いくら大都市都心に店舗があろうが、屋号が有名であろうが品揃えの良し悪しや、販促が不適格であったりすれば売れないということである。

ついでにいうと著名な銀座という立地だが百貨店はあまり売上高が大きくない。銀座店はいずれもここにランクインしていない。2016年当時でさえ、三越銀座店は600億円程度の売上高しかなく、強化策が真剣に討議されていた。

 

今後、ここに名を連ねる大型都心店は長期的に存続は可能だろう。だからと言って安泰盤石ではない。グループ内の地方・郊外の中小型店が閉店し続け店舗数が減少すれば、メーカーやブランドとの取引において百貨店の影響力は小さくなってしまい、良い商品やブランドを揃えられなくなる可能性が高まる。大型旗艦店も楽観視していられる状況では決してない。

 

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