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南充浩 オフィシャルブログ

日本のZ世代は人口が少ないという話

2023年5月10日 メディア 1

4月の下旬に立て続けに大物ガンプラの新製品が発売された。22日と29日である。

2020年後半からのガンプラ品薄状態にすっかり慣れてしまった当方としては、バイパス沿いのジョーシンに開店前から並んだわけだが、転売ヤーが撤退し始めているのか、人気キットの割に並んでいる行列人数が少なかった。せいぜい20人弱でそのうちの数人はガンプラ以外の商品購入希望者なので実質的にはどちらも15人前後というところで、ほんの3カ月前までは開店後1分で完売していたガンプラが、当方が購入後も10数個残っていた。さすがに翌日までには売り切れていたが、だいぶと需要状況は変化してきたと感じた。

当方も含めたオッサンと初老の趣味になってしまったガンプラだが、バンダイ側も若年層の取り込み目的で、より簡単に組み立てられて安めの価格設定のエントリーグレードという種類を発売し始めた。年に1種類ずつくらいしか新発売されないのだが、ガンプラ品薄状態ピーク時でもこのエントリーグレードだけは大量にどの店にも補充されていた。

53歳の当方も平均寿命で考えるとあと27年後には死んでいるわけだし、60代前半のガンプラファンはあと20年弱で死に絶えてしまう。

そう考えると、若い客層の獲得はバンダイにとっても今後の会社のサステナビリティを考えると必要不可欠な作業だといえる。

 

そう、残念ながら人間は誰でも絶対に死んで消え去る。

今、どれだけたくさん買ってくれる客でもそのうちに死んで消えてしまう。

 

アパレルとアパレル業界メディアがやたらと「Z世代」に焦点を当てるのも次世代の顧客を獲得するためだろう。ただ、業界メディアが報じる「Z世代の傾向」に対して正直疑問を感じる。

全員がそんなに優れた人たちなのか?と。

米国と比べて目立たない?日本におけるミレニアル世代とZ世代とは (ownly.jp)

Z世代(2021年現在、10~25歳くらい)

  • SNSを使いこなす

  • 多様性に寛容、人に合わせるよりも自分に合う場所を探す

  • モノ消費よりもコト消費(居心地の良さ・充実した日常)

  • お金やキャリアについて堅実な傾向

とある。

Z世代の括りは提唱する個人やメディアによって上下限が少し異なる。この記事は21年の記事だが、23年の記事でも「25歳まで」とか「24歳」という上限設定を見かけるので、その辺りは結構あやふやでアバウトなゆるゆる設定だといえる。

この記事で挙げられている特徴だが、本当にその通りなのか?と結構疑問を感じる。

 

2016年秋から2023年3月末までヒューマンアカデミー大阪校でファッションビジネス学科の非常勤講師をさせてもらった。週に1度か2度のペースでいわゆる「Z世代」を毎年教えたわけである。毎年の人数は少なく、多い時で12人くらい少ない時は4人だった。まあ、それでも6年半に渡って計50人くらいの生徒と接したわけだが、結構バラバラである。

上に挙げられている4点のうち、1点当てはまる生徒もいれば、どれも当てはまらない生徒もいた。2点当てはまる生徒はいたが、3点・4点が当てはまる生徒は見たことが無い。

「お金やキャリアに堅実」とあるが、少なくとも何人かはマイルドヤンキーで金遣いが荒く、同級生からカネをしょっちゅう借りていた。

 

最近、特に疑問を覚えるのが「SNSを使いこなす」というZ世代への評価なのだが、今年に入って何件も発覚して大問題となった飲食店でのペロペロ行為だが、あれのほとんどはメディアが言うところの「Z世代」である。あれのどこが「SNSを使いこなす」なのだろうか。もっとも、炎上してでも有名になりたいという目的は達せられているからそういう意味では「SNSをしっかり使いこなしている」といえる。

 

一口に「〇〇世代」と言っても、何百万人・何千万人といるので、そのうちの何百分の1が飲食店ペロペロ君でも不思議はない。団塊世代しかり、団塊ジュニア世代しかり、ゆとり世代しかりである。

とはいえ、メディアが持ち上げるほどには優れた世代ではないと経験上、当方はそう思っている。

 

で、ここからはアパレル企業側に対してなのだが、アパレル企業はZ世代顧客をどれほど有望視しているのだろうか?メディアに流されやすいのがアパレル企業の昔からの特性とはいえ、メディアに流されるままに過度な希望を持っている企業がいるなら、その企業はかなり危険だと当方は感じる。

理由は、日本のZ世代の人口が少ないからである。

人類の未来を決めるZ世代を知り、ビジネスにつなげるために | スマートワーク総研 (swri.jp)

これは2022年1月の記事だが、

アメリカのZ世代にあたる10歳から24歳は総人口の約2割にのぼる。一方、日本では総人口の13%しかいない。

とある。

先に引用した記事でも「Z世代は13・6%」と書いている。

これを知った上で、Z世代対策をしているアパレル企業はかなり冷静だろうと思うので何の心配もしていない。カネももらっていないので当方が心配する必要は皆無なのだが。

だが、この人口を知らずにメディアに報じられている通りに「これからはZ世代に期待やで」と過剰に期待しているアパレル企業があるなら、そのアパレル企業はかなり危ういだろう。まあ、そんな間抜けな経営者はいないとは信じているが。

 

日本国内でいうと、今のところ最大人口は「団塊世代」である。次いで「団塊ジュニア世代」となる。

今の時点では団塊世代・団塊ジュニア世代の方がZ世代よりも人口も多いし、お金も持っている。企業の販売効率を考えると団塊・団塊ジュニア向けの商品・サービスに力を入れることが最善策だといえる。

とはいえ、この団塊世代・団塊ジュニア世代もいずれは死に絶えて消え去る。団塊世代なんて10年後には死んでだいぶと人口は減っているだろう。団塊ジュニアだって30年後にはだいぶと死んで人口が減っている。

だから、次世代の新しい客層を獲得することは常に必要不可欠である。

 

とはいえ、マーケティング企業による紋切り型の設定やそれをそのままトレースしたようなメディアの報道を鵜呑みにするのは危険ではないかと思う。

Z世代の動向はそんな高尚なものではないと個人的には感じるから、アパレル側は地道なマーケティングが必要ではないか。

 

実はアメリカでもZ世代の比率は少ない方で、全世界のZ世代は約25億人、全人口の32%を占めるという。少子化が進む中国でも日本の総人口の2倍以上、2億5,000万人に達する。

日本のZ世代だけを相手にして商売を展開していくのはビジネス規模が縮んでいくだけだが、全世界のZ世代を対象と考えれば、急速に成長する市場と捉えることができる。

 

という提言もある。これは理論上は正しいといえるが、実行には相当に困難が伴う。そもそも「世代」に関係なく生まれ育った国によって文化や風習は大きく異なる。むろん重なる部分がゼロではないが違いの方が大きい。各国それぞれに個別の対応が必要となるため、バックリと「世界を相手に」というのは事実上不可能なので、「〇〇国に向けて」という対応が最も現実的なのではないかと思う。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/05/11(木) 10:15 AM

    今回の投稿、秀逸な内容だし、業界の人間では
    南サン以外できない分析だと思います

    セグメント別に細分化する以前の問題で
    全体の母数のサイズ次第で
    各セグメントの大小は決まります(当たり前だw)

    そして、母数がやたら小さいサイズなのに
    セグメントを細分化してモノを論じても
    マス相手の商売になりません

    なぜならマスですらないから(当たり前だww)
    そう、これが21世紀の日本市場の姿です

    したがって日本のアパレル市場は
    世界市場の中のごく一部にすぎない日本市場と
    社員3人食わせりゃ上々レベルのマニア市場しか
    存在しません

    日本固有・日本特有のマス市場など
    もはや存在しないのです

    世界ネームのブランドがジャパン社企画で
    日本独自物を作っていた90年代が懐かしいですねぇ

    当時はNikeでも品質タグに日本語表記しかない商品が
    いっぱいありました

    今では中国語、ヒンディー語表記のさらにその下に
    日本語表記がある時代だからなぁ・・・

    ねんしゅう500万ぐらいの日本人も
    脱法研修生のベトナム人も
    観光客の中国人も
    みんなウニクロとGUを着る時代なんでしょうなぁ・・・

    けど、安くてモノがそこそこ良いから
    何も問題ないんですよね消費者サイドとしては

    困るのは失業するであろう
    ウニクロGUを除いたアパレル関係者だけでしょうwww

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