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南充浩 オフィシャルブログ

洋服が売れないのは消費者の洋服への関心・興味が低下し続けているから

2023年5月9日 百貨店 2

加齢による気力の減退も手伝ってか、40代前半ごろまでほどには「欲しい服」というのが無くなっていることは何度も書いた。

世間一般の人よりはそれでもいまだに洋服を買う枚数は多い方だが「来月はアレを絶対に買いたい」とは思っておらず、その時々に値下がりした物の中から「使えそうな物」「あったら便利かも」と思える物を買っているという感じである。

 

普段交流するのが衣料品業界の人がほとんどなので、業界の人はともすると、衣料品の売れ行きが鈍いことを嘆いたり、インバウンド外国人が洋服を買い漁っているのに対して、今の日本人の多くがそこまで洋服を買い漁らないことを嘆いたりしている。

業界の人は、もともとが衣料品好きで、現在はそれが自身のビジネスとなっているため、一般人よりも洋服に対して執着心が強い。また古い業界人はブランド命みたいな人も多く、いまだに百貨店の太い客だったりする。そういう彼らからすると「何故洋服を買わないのかわからない」そうなので、経済環境や可処分所得の減少にその原因を求めようとするが、当方はそれらだけが原因ではないと思っている。稼ぎが少なくても服を買いたい奴は他の支出を削っていまだに買っている。

当方の加齢による気力減退がそう見せているのかもしれないが、洋服が売れない最大の原因は、日本人のマス層が洋服、特にブランド物にあまり興味を持たなくなったからだと思っている。洋服への関心は低下していると見ている。

ファッションガーのよりどころの販路の1つとなっている百貨店だが、ご存知のように百貨店の売り場は食料品・化粧品・貴金属などを除くとほとんどが洋服に特化している。ファッションの殿堂として名高い百貨店もいくつかある。百貨店顧客は洋服に対して、それ以外の人たちに比べると関心は高いはずである。洋服への集中度が高い百貨店でいまだに定期的に買っているのだから、百貨店顧客の多くは少なくとも当方よりは洋服への関心・興味が高いと考えて間違いないだろう。

 

しかし、百貨店顧客でさえ洋服への関心・興味が如実に薄れている。

 

百貨店で存在感を増す「身の回り品」とは何か

百貨店の売り上げ構成比が変化している。日本百貨店協会の2022年の統計によると、百貨店の売り上げ構成の1位は「食料品」の29.0%、2位が「衣料品」の26.6%、3位が「雑貨」の19.7%、4位が「身の回り品」の15.3%となる。百貨店では売り場面積が大きい「衣料品」が2000年頃まで40%以上のシェアを誇ってダントツの存在だったが、「ユニクロ」に代表されるSPA(製造小売業)の台頭やショッピングセンターとの競合激化でじわじわと衰退。コロナ下の20年に初めて「食料品」に1位の座を明け渡し、行動規制がだいぶ緩和された22年も1位の座を取り返すことはできなかった。

とある。

20年からコロナ禍による外出自粛があり、大きく衣料品への購買意欲が百貨店に限らず各販路で削がれたと言われている。ちなみに当方は20年も21年も22年も変わらない枚数の服を買っている。

通勤通学を含めた外出自粛が起きたので、わざわざ洋服を買わないという心理は理解できないではない。だが、22年は大幅に外出制限が解かれたが、それでも衣料品の売上高は食料品に及ばなかった。

また、かつては売上高がダントツの一位で構成比は40%もあったが、コロナ禍前でも低下し続けていたことを合わせると、コロナ禍が無かったとしても洋服への関心・興味は低下し続けていたと捉えるべきだろう。

 

このコラムは非常によくまとめられているので、もう少し引用する。

 

興味深いのは「雑貨」と「身の回り品」である。

百貨店業界の分類でいう「雑貨」とは、化粧品、美術・宝飾・貴金属、玩具など22年の「雑貨」の売上高は前年比14.7%増の9829億円だった。10年前の12年に比べて売り上げ構成は5.9ポイント上昇している。マスク着用の継続もあって化粧品の売上高は9.1%増の3795億円と緩やかな回復だった。一方、美術・宝飾・貴金属は23.3%増の4526億円だった。美術・宝飾・貴金属には時計が含まれており、数百万円の高級時計が富裕層を中心によく売れた。

「身の回り品」とは靴、バッグ、アクセサリー、財布・革小物、傘、旅行用品などを指す。22年の売上高は前年比26.1%増の7630億円。物販系の伸び率でいえば最も高い。こちらも10年前に比べて売り上げ構成は3.0ポイント上昇している。けん引しているのは平場の靴売り場やバッグ売り場で売られている商品というよりも、ブティック形式で出店しているラグジュアリーブランドの商品である。コロナを経てラグジュアリーブランドは勢いを増す。バッグなど物によって10万円以上の値上げを行なっているにもかかわらず、動きは活発だ

 

とある。化粧品・美術品・宝飾貴金属、ラグジュアリーブランドのバッグ、アクセ、財布などはどちらも大幅に売上高を伸ばしている。

「可処分所得の減少で百貨店の洋服が売れない」という主張をよく耳にするがそれはどうだろうか?確かに食料品の単価は衣料品よりも圧倒的に安いが、例えば化粧品の店頭販売価格は決して食料品ほど安くはない。また宝飾貴金属、ラグジュアリーブランドのバッグ、アクセは衣料品よりも単価が高い。これらがコロナ禍がまだ完全に明けていない22年ですら売上高を大幅に伸ばしたということは、百貨店顧客層には可処分所得の減少はあまり当てはまっていない。その客層の中でさえも洋服のシェアが落ち続けているということは、とりもなおさず、比較的ブランド衣料品への関心・興味が強い百貨店客層も衣料品への関心・興味は低下し続けているということになる。

 

最近、衣料品の販売で長い行列ができたという報道はほとんどない。2020年秋の+Jの復活くらいではないか。一方、転売ヤーの影響もあるが、ポケモンカードやガンプラの発売日には毎月全国各地で長蛇の列ができていることが報道されている。これらは百貨店客層とは違う層だろうが、ポケモンカード勢・ガンプラ勢に百貨店客層も含めて総じて洋服への関心・興味は低下しているといえる。

当方も含めたブランドにコダワリの無い層にはユニクロ、しまむら。ジーユー、あとはハニーズやアダストリア、ストライプインターなどがあればそれで十分というのが実状である。

じゃあ、中価格帯の洋服ブランドはどうすれば良いのかというと、数少なくなった洋服に関心・興味のある層をどれだけ強く捕まえられるかという勝負にならざるを得ない。少なくなったパイを増えたプレイヤー(ブランド)で奪い合うという厳しいサバイバルを勝ち抜くほか、ブランドを存続させる方法は無いと当方は見ている。

 

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 comment
  • 大阪のオバチャン より: 2023/05/09(火) 5:33 PM

    高校生の甥っ子が、「ブランドってわかる服とか鞄とか持ってたらダサい」と言っていました。
    それを聞いて、日本のアパレルは終わったと思いました。

  • t より: 2023/05/10(水) 12:55 AM

    ブランドってわかる服はダサいって、服好きミドフォーのわたしもずっと思ってるが

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