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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロやジーユーと同じ素材を使っても同じ売れ行きにはならないということがわからない残念な大手アパレルのお話

2023年4月24日 素材 0

衣料品というものは他社の商品を模倣しやすいという特性がある。

商品は何だって模倣しやすいものではあるが、機械類だと見た目を真似られても性能は真似ることができないことも多い。衣料品は見た目だけで売れる場合があるので機械類よりは模倣しやすいが避けようがない。

一方、衣料品という商品は、その時々のトレンド(流行)というものが売れ行きに密接にかかわっており、その「トレンド」にある程度沿ったデザインの商品でないと売れにくいため、商品デザインが似通ってしまわざるを得ないという性質もある。

この辺りが衣料品の難しいところで、他社製品をそのままマルパクリするともちろん違反だが、トレンド情報は共通なのである程度似通ることは仕方が無いという側面もある。

 

そんなわけで、昔から「〇〇社の製品に寄せる」という言い方が業界内にはある。

人気が高い「〇〇社(もちろん他社)の製品」にデザインを違反しない程度に似せるというやり方である。最近ではデザインの知的所有権は強化されているので、完全コピーはご法度になっているものの、いまだに盗作問題でちょくちょくと訴訟がある。

「他社製品を真似る」という行為は何もデザイン面だけではなく、素材面でも実はある。

違法にならない素材の真似方で言うと、「〇〇社と同じ素材を使用しました」という言い方が最もポピュラーだろう。わざわざ宣言しなくても例えば、防水透湿素材を使うブランドが多いということは、防水透湿素材を使用することがトレンドの1つでもあるということで〇〇テックという素材名は異なり、それぞれにスペックも異なるものの、機能的には同じ素材が使われるということは全く珍しくない。これは一種のトレンドともいえるかもしれない。デザイン面でビッグトレンドが生まれにくいので、防水透湿機能だとかストレッチ機能だとか吸水速乾機能だとかそういう機能面がビッグトレンドになっているともいえるのではないかとも思う。

 

さて、ここまでが前置きである。

くどい様だがまとめると、衣料品はデザイン面で模倣しやすい商品といえる。またデザイン面だけではなく素材面の模倣も珍しくないということである。

 

 

当方が独立したばかりのころだから今から10年くらい前のことである。

このブログにも何度か書いたことがあるが、某デニム生地メーカーによると、某オンワードの部長とかいう人が

「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じデニム素材を売ってください」

と飛び込んできたことがあったという。

 

以前にも書いたが、この行為自体は何の意味も無い。

なぜなら、オンワードの商品とジーユーの商品では、商品デザインも異なれば、店頭販売価格も異なる。また販路も異なるし、何なら販促手法も客層も異なる。

ユニクロの〇〇ジーンズ(3990円)が仮に100万本売れたとしても、同じ素材を使用したオンワードのデニムパンツが同じように売れるかというとそうではない。

素材が同じなだけであって、それ以外のすべてが異なるからである。そんな簡単なことも分からないほど当時のオンワードは経営陣以下全員が追い詰められていたのだろう。

ユニクロと同じデニム生地を使いました。でも価格は12900円というのであれば、ユニクロと同じ売れ行きは到底望めない。商品の形も少し違うし、打っている場所も違いますよ、となると絶対に同じ売れ行きにはならない。

こんなことは小学生でもわかると思うのだが。

 

しかし、10年前というとリーマンショック、続けて東日本大震災があったころだから、不景気の深刻さはコロナ禍明け(完全に明けたかどうかは怪しいが)の今よりも深刻だったといえる。

だから某オンワード部長の気持ちは分からないではない。

 

コロナ禍が何となく明けた感じになっているので、先日から当方の出張もあったし、逆に出張で大阪に来られた方やこれまで面識が無かった方とお会いする機会も増えてきた。

そんな中、先日、東京から出張に来られた方のお話を聞いて驚かされた。

スラムダンクの安西先生ではないが

「まるで成長していない」

という事案があったのである。

 

某オンワードの担当者が今度はジーユーのあれと同じ素材を欲しいと言っているというのである。そのブランドは某オンワードのショッピングセンター向けブランドであり、ジーユーのカットソーと同じ素材を探しているのだという。

この10年で何も変わっていない。変わったとするとターゲットがユニクロからジーユーに移ったことだけである。

ポリエステル主体のその生地だが、某オンワードが手に入れた生地は同じ混率で少し硬かったそうである。これは当たり前のことで、一口に「ポリエステル」と言っても、ポリエステル糸にもピンキリで価格差がある。当然高額になれば風合いは良くなる。また製造した機械の違いによっても風合いは異なる。自動車やスマホですら工場や機械によって微細な個体差が生じるのである。繊維は機械、工場による個体差がそれ以上に生じやすい。

ジーユーの少し柔らかい風合いを真似るにはモダールとかレーヨンを混ぜるのが最も簡単で安上がりという解決策になるのだが、某オンワード担当者はそれを拒否したとのことで、その拒否理由も「ジーユーと同じ混率がイイから」という理由なのでアホさ加減に驚かされてしまう。

混率までジーユーと合わせることに何の意味があるのか、消費者にまさか「混率までジーユーに合わせました」とでも宣伝するつもりなのだろうか。まあ、宣伝したところで鼻で笑われて終わるだろう。

消費者にとって、素材がジーユーと同じであることは何の意味も無いし、混率まで合わせることにはもっと意味が無い。はっきり言ってジーユーと同じ素材かどうかなんて誰も気にしていないし、混率なんて気にもしていない。

某オンワードという会社は10年経っても社員の基本的な考え方は何も変わっていない。

逆にこんなくだらない点にこだわって商品を企画しているから、この10年間で業績が縮小し続けているのではないだろうか。こんなくだらない点にこだわって作られた商品が消費者から支持を集められるわけもない。

こういう考え方をし続ける限り、売れる商品企画など生まれるはずもないだろう。

 

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