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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品単一ブランドとしてはネット通販で異次元の強さを発揮するユニクロ

2023年4月25日 ネット通販 0

アパレル関連のネット通販記事は多々あるが、ユニクロのネット通販に関する記事はあまり見かけない。せいぜい、決算発表記事に付随して紹介される程度である。

成功事例としてよく記事化されるのはアダストリアやオンワード、TSI、パルあたりの大手か、あとは名前すらなかなか覚えられない新興D2C系ブランドか、である。

しかし、改めて考えると、日本国内の衣料品ネット通販で単一ブランどとして最大売上高を誇るのはユニクロで、対前年比も伸び続けている。衣料品ネット通販の圧倒的な成功事例はユニクロである。

 

国内ユニクロのEC売上は9.7%増の794億円【2023年度中間期】 | ネットショップ担当者フォーラム (impress.co.jp)

 

ファーストリテイリングが発表した2022年9月-2023年2月期(中間期)の連結業績によると、国内ユニクロ事業におけるEC売上高は前年同期比9.7%増の794億円だった。

 

とのことで、中間期でネット通販売上高は794億円(前年同期比9・7%増)なので、通期売上高を単純に2倍で推測すると1600億円弱という数字になる。

ただ、3月~8月が残りの半年間であり、秋冬物に比べると春夏物の単価は低くなる(店頭販売価格の安い商品が増える)ので、1600億円には届かず、1400~1500億円台になる可能性も高い。

蛇足ながら付け加えると、通常、アパレル商品の店頭販売価格は、コート、ブルゾン、ダウン類がメインとなる秋冬は商品単価が高い。一方、シャツ、ブラウス、Tシャツがメインとなる春夏の商品単価は必ず安くなる。ユニクロでいえば、ダウンジャケットは1万円台だが、Tシャツは1990円くらいである。

 

ちなみにファーストリテイリングのもう一つの柱であるジーユーはというと

 

ジーユー事業のEC売上高は大幅増収で、EC売上高の割合は約13%という。ジーユー事業の売上高は同18.5%増の1455億円。EC売上高を算出すると189億円

 

となっており、通期を単純計算すると380億円ということになるが、同じ理由で春夏は売上高が下がると仮定すると350億円程度という可能性もある。

 

ネット通販成功組みとして持ち上げられている大手各社だが、いずれも複数のブランドの合計売上高であり、単一ブランドで通期1500億円前後の売上高が見込まれるユニクロ、単一ブランドで350億円の売上高が見込まれるジーユーというのは、規模の大きさもさることながら、存在としても圧倒的な大きさだといえる。

メディアはもっとユニクロのネット通販を分析して記事化すべきではないかと思う。

 

ちなみに他の大手はというと、まとめてくれているのでそちらを便利に活用したい。

大手アパレル上場企業EC売上推移まとめ(2023年2月期)

オンワード

売上:1760億7200万円

営業利益率:52億1400万円

EC売上:447億9800万円(自社 384億9500万円・モール 63億300万円)

EC比率:25.4%

 

アダストリア

売上:2425億2200万円

営業利益率:115億1500万円

EC売上:626億円(自社 327億2000万円・モール 298億8000万円)

EC比率:25.8%

 

TSI

売上:1544億5600万円

営業利益率:23億2000万円

EC売上:388億4000万円(自社 181億1000万円・モール 206億3000万円)

EC比率:25.2%

 

パル

売上:1644億8200万円

営業利益率:158億2200万円

EC売上:423億1600万円(自社 156億3100万円・モール 266億8500万円)

EC比率:25.7%

 

となっている。

企業年商がそれぞれ、オンワード1760億円、アダストリア2425億円、TSI1544億円、パル1644億円となっており、ユニクロはネット通販だけでオンワード、TSI、パルの企業年収規模の売上高を稼いでいることがわかる。

そしてネット通販と一口にまとめても自社サイトとECモールとに分かれているが、ユニクロはほぼ自社サイトである。以前は完全自社サイトのみだったが、最近、アンドモールに出店したので、100%自社ではなくなったとはいってもアンドモール自体はそれほど売上高の大きなECモールではないからユニクロの自社サイト比率は98~99%程度となるだろう。

ユニクロが自社以外のECで販売開始 国内では初 (fashionsnap.com)

そして、先述したが、ユニクロ、ジーユーともに単一ブランドなのである。オンワード、アダストリア、TSI、パルはそれぞれ20~60くらいのブランドを抱えている。それら全ての売上高を合算したネット通販売上高が400億~600億円ということになっているので、いかにユニクロ、ジーユーが単一ブランドとして強いかということがわかる。あまり話題にならないが、ジーユーでさえ、単一ブランドネット通販売上高でTSIのネット通販売上高とほぼ同じなのである。

 

ユニクロがこれら大手よりも低い数値はネット通販比率だけである。

国内ユニクロ事業に占めるEC売上高の割合は0.4ポイント減の16.0%

とあり、大手4社がそれぞれ26%前後あるのに比べると10ポイントほど低くなっている。

しかし、だからといって、ここにケチをつける必要は無い。必要は無いというよりケチはつけられない。

 

率というのは分母が大きくなればなるほど低くなる。ユニクロのネット通販比率が少し低めなのはネット通販が不調なのではなく、実店舗を含めた全体の売上高が大きすぎるためである。

「ユニクロの弱点はネット通販比率が低い点にある」

という論調で書かれた分析記事は、著者が誰であれ、その時点で読む価値は無いといえる。

 

月並みなまとめになってしまうが、メディアはユニクロ、ジーユーを衣料品ネット通販の成功事例として、専門家(当方はネット通販の専門家ではない)に的確な分析記事をもっと依頼すべきではないかと思うがいかがだろうか。

 

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