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南充浩 オフィシャルブログ

低価格品が底上げされて便利になったが「突き抜けた物」は生まれにくくなった閉塞感

2023年4月18日 考察 1

JR大阪駅から徒歩数分の場所に、大阪駅前第1~第4ビルというのがある。

かなり年季の入ったビルで、最近ではチェーンの低価格居酒屋や低価格カフェなんかもテナント入店しているが、いまだに何十年前からあるのかわからない昔ながらの喫茶店や居酒屋、立ち飲み屋なんかも入店している。そういえば、この4つのビルは壊されて公園か何かにされる計画だと聞いたことがあったのだが、いまだに元気に営業している。

何でも地権がややこしくて簡単には壊せないと言われている。地権と言うのは恐ろしいもので、なかなか難しい。例えば、梅田のファッションビル「HEP」にも地下にパチンコ屋がオープン時から入店し続けている。地下にパチンコ屋のあるファッションビルなんてHEPくらいではないかと思うが、このパチンコ屋の入店も地権に絡んでいると言われている。それほどに地権というのはややこしいものらしい。

それはさておき。第1~第4ビルで昔ながらの喫茶店や立ち飲み屋・居酒屋と、現在的な低価格カフェ、低価格居酒屋を見比べると、いくら低価格店でオシャレ感が足りないとは言っても、昔ながらの店に比べるといろいろと洗練されている。照明の明るさとか丁度類とか。決してゴージャスではないが綺麗に整頓されているという感じがする。昔ながらの店はレトロというかどこか野暮ったい。

以前、マーケティングセミナーかなにかの講演で「すべての物がファッション化していく」ということを聞いたことがあったが、この「ファッション化」とはオシャレになるというよりも「整頓されて洗練されていく」という意味だったが、まさに低価格飲食店に限らず、すべての物が低価格でありながらも洗練され整理整頓されていると感じる。

衣料品でその代表例はユニクロ、ジーユーだろうし、日用雑貨類でいうと100均だろう。飲食だと低価格カフェとか低価格居酒屋だろう。牛丼屋だって昔に比べたら随分と洗練されているし、どんな田舎のショッピングセンターにもスタバを始めとする低価格カフェが入店している。

100円ショップ市場/23年度に1兆円突破へ、アウトドア用品が好調

帝国データバンクが4月13日発表した「100円ショップ」業界動向調査によると、2022年度の市場規模は前年から7.2%(約671億円)増の約9969億円となる見込みとなった。

とのことで、あと31億円で1兆円に達成するのだから、23年度は間違いなく100均全社トータルで売上高1兆円を突破すると考えられる。

100均全社で1兆円と言っても、100均は1位ダイソー、2位セリア、3位キャンドゥの3社の売上高が圧倒的に大きくほとんどを占めている。特にダイソーは圧倒的である。売上高が5500億円もあり、9969億円のうち半分以上を占めている。

 

6年くらい前から当方も100均を使用することが増えた。

主に掃除道具、細々した文具類、プラモ工具などを買うようになった。それまでの間、自分が積極的に100均で買うことは無かったから、当方の100均に対する認識は、恐らく20年くらい前のままで止まっていた。

20年くらい前の100均というと、たしかに安いがいかにもパチモンクサイ、バッタもんクサイ、そんな商品が並んでいた。店内の内装やレイアウト、什器類も場末のどこかからもらってきたような野暮ったさと安物臭さが充満していた。

商品自体もいかにも偽物っぽいデザインものが多かったと記憶している。

 

それが何年かぶりに年末大掃除用の掃除道具を買いに入店して驚いたのが、もちろん高級感は無いにせよ、内装や照明などすべてがかなり洗練されていて、商品デザインそのものとパッケージも一般メーカー商品とあまり変わらない程度にまで洗練されていたことである。

カネを無限に持っているような人は別として、限りあるカネを自分の好みの物に使いたい当方としては、掃除道具なんて安ければ安いほど良い。さらにデザインと機能がマシならなおのこと良い。まさに「今の」100均はピッタリだった。文具類も同様だ。特に郵便用の封筒なんてデザインは必要ないから安ければ安いほど良い。

プラモ工具についてはいろいろと意見の分かれるところだろうが、タミヤとか専門メーカーの道具にこだわる人もいるとは思うが、当方は別に機能が伴っていたら安いにこしたことはない。

 

以前、当方のフェイスブック友達の染色作家さんが「そこそこの物が使い勝手が良い」ということを書いておられたがまさにその通りだと思った。

支出できる分野は無限にある。その中で、カネをかけても良い分野というのが人それぞれにある。カネをかけたくはないが買わざるを得ない物もある。カネをかけても良い分野というのは個々人の趣味の分野だと思うが、そこには収入に比して奮発する人も多い。金額の大小にかかわらず、趣味の分野に支払うということは一種の快楽といえる。しかし、そんな趣味の用品以外にはなるべくカネをかけたくないという人も多いだろう。

そういう人にとっては当方も含めて、100均、ユニクロ・ジーユー、低価格カフェ、低価格居酒屋チェーンなどの存在はありがたい。そこそこの値段でそこそこの商品やサービスを受けることができる。

それでいて、昔のようなモサっとした雰囲気も無い。

 

こういう「そこそこの物」が標準仕様になると、それ以上の価格で販売したい商品・サービスは、より一層の特徴が必要となることは言うまでもない。

それが俗な言葉で言うとブランディングということになるのだろうが「優れた事物」なんてそうそう簡単に作れる物ではないから、景表法違反スレスレの盛り盛りのセールストークが横行してしまうのだろう。

 

洋服もそうだが、低価格品のデザイン性が底上げされると、高価格品の特筆すべき点が難しくなってしまう。そこからさらに「突き抜けた何か」を実現できないと、低価格代替品に負けてしまうし、マス層は低価格代替品を選ぶ。飲食しかり日用雑貨品しかり、衣食住すべての分野でそうなる。

当方は根っからの貧乏性なので、今の「そこそこの物」に囲まれた生活に満足しているが、なかなか「突き抜けた物」というのは生まれにくい。そこが現在世間に漂っている閉塞感の原因の一つではないかとそんなことを考えてみたりした。

 

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 comment
  • 読者 より: 2023/04/18(火) 11:47 PM

    洋服もそうだが、低価格品のデザイン性が底上げされると、高価格品の特筆すべき点が難しくなってしまう。そこからさらに「突き抜けた何か」を実現できないと、低価格代替品に負けてしまうし、マス層は低価格代替品を選ぶ。飲食しかり日用雑貨品しかり、衣食住すべての分野でそうなる。

    当方は根っからの貧乏性なので、今の「そこそこの物」に囲まれた生活に満足しているが、なかなか「突き抜けた物」というのは生まれにくい。そこが現在世間に漂っている閉塞感の原因の一つではないかとそんなことを考えてみたりした。

    ここの部分すごく秀逸というか納得しました。
    南さんらしいというかこれこそ文化論だと思った。
    百貨店文化を語るヤツこそこういうこと言うべきでしょうw

    まあだからアパレルはオワコンでむしろ不自由を楽しむキャンプとかが魅力になったのかなと自分は思いました。
    アパレルは20世紀型の商品なんだろうなぁと最近は思う。
    今は少なくとも都心みたいな高コストの場所での大量販売は難しい商品になった。

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