学ぶべき点を整理してみた
2014年8月18日 未分類 0
産地製造業に非常に参考になる事例として「気仙沼ニット」がある。
つい最近も記事で紹介されていた。
1着15万円のカーディガンに注文殺到! マッキンゼー出身者が発掘した、地方ビジネスの可能性とは?
http://logmi.jp/19239
要点を書きだすとこうだ。
東日本大震災の被災地の気仙沼で復興支援の新規プロジェクトとして立ち上がった手編みニット。
もともと気仙沼はニット産地でも繊維産地でもなんでもない。
被災で職を失った漁師さんの奥さんたちを起用した企画である。
漁師さんの奥さんたちは網を修理したりするので、編み物には慣れている。
しかしプロの領域ではないのでちょっと訓練してからニットを手編みし始めた。
標準的なフィッシャーマンズセーターは編むのに50時間くらいかかるそうだ。
そこで販売価格は15万円くらいに設定した。
記事中にもあるように、
15万円で売れるカーディガンを作ろう、という風に考えたんですね。なかなかです。そうしたらもう、最高の物を作らなくてはいけない。単に「編むのに時間がかかったから高いんです」、では通用しないので、最初に毛糸を作る所から始めたんですね。最高のカーディガンを作るんだったら、最高の毛糸を作ろうと。
という価値付けを行った。
それで、世界中の羊毛を集めて、何度も撚り(より)をかけなおして、糸を作った。もちろんデザインも大事です。人気の編み物作家さんにお願いしました。
という取り組みも行った。
その結果、
編み手さんが4人しかいなかったので、4着しか出来なかったんです。オーダーメイドで作ります。4着のこのカーディガン、欲しい人! って募集掛けたんですね。ちゃんとお客さんいるかなって、すごいドキドキしたんですけど、何と100件もの応募がありました。
というすばらしい結果を生んだ。
復興支援に加えて、被災した漁師さんの奥さんたちが手編みするという背景。
そして最高級毛糸を探し出して、デザイナーさんにデザインを依頼するという物語性。
背景と物語性を付与する手法は国内産地企業が大いに見習う部分である。
それがあるから1着15万円もするセーターにコンスタントに注文が入る。
ただ、国内の産地企業が勘違いしないように気を付けないといけない部分もある。
まず、これは大量生産の工業ではなく、ハンドメイドの手工業であるという点である。
国内の繊維製造業はある程度の大量生産を前提とした工場である。
ここをごっちゃにすると、
希少性の高い生地を10メートル織って、1メートルあたりン万円という値付けをすれば良い
というような間違った事業プランを立ててしまうことになる。
縫製という工程は手作業に頼る部分が多いが、縫製工場はそれを人数を集めることで効率化している。
だから1型あたり100枚とか50枚とかのミニマムロットが工場によって設定されている。
通常の縫製工場でもこの手工業的なやり方を取り入れることは難しい。
次に「1着15万円」という価格設定に目を奪われすぎないことである。
これはあくまでもハンドメイドニットで、編み手にもそれなりの工賃を渡すためにはじき出された価格である。
この金額のみに目を奪われすぎると、往々にして国内産地企業は
価格設定は高ければ高いほど値打ちが出て売れる
と考えがちになる。
これは自社の企業規模、生産規模と照らし合わせてみないと絵に描いた餅に終わる。
以上の指摘に対して「そんなバカな。考えすぎだ」と思われる方もおられるかもしれないが、実際に産地の人々と行き来してみると、これに類した言葉をよく耳にする。
あながち筆者の杞憂ではないのである。
そんなわけで、「気仙沼ニット」の事例に関して国内産地企業は、背景・物語性の付与と、それの発信の方法を学ぶことがベストであると感じる。
追記:昨日、弟が急逝したので、明日と明後日はこのブログをお休みします。