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南充浩 オフィシャルブログ

ゴミになった衣類を処理できる新技術の確立となるか?

2023年3月24日 トレンド 2

衣料品の廃棄問題の場合、整理して考えなくてはならないのは、企業がブランド価値を維持するために産業廃棄物として捨てる場合と、個人が不要になって(汚れ、破損などによって)捨てる場合があるということである。

我が国の場合、アパレル企業は営業利益率を守るために廃棄するということは年々減少している。理由は、産業廃棄物として捨てる場合、捨てるために何百万円・何千万円というお金を支払わなければならないからである。我が国のアパレル企業にはそんなムダ金を払う余裕はないから、できれば自社のアウトレット店やネットショップで投げ売りして売り切りたい。それでも売り切れない場合は在庫処分屋に二束三文ででも払い下げる。例え何万円かでも収入になるからである。

一方、自分も含めて個人は汚れが取れない、破れた、サイズが合わなくなったなどの理由で洋服を必ず捨てる。使っていれば洋服というのは必ず傷むからいずれ捨てなくてはならなくなる。劣化しない洋服などこの世にはない。

以前にもご紹介したが、2020年の統計だと以下のようになる。

「手放された衣類」大半は家庭から 環境省報告 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

報告によると20年の「手放された衣類」は78.7万トン。このうち家庭からは75.1万トン大半を占め、ごみとして廃棄(焼却・埋め立て)されたのは49.6万トン(構成比66%)を占めた。リユースが15万トン、リサイクルが10.4万トン。

一方、企業など事業者から手放された衣類は3.6万トン。廃棄が1.4万トンで廃棄量全体の2.7%ということになる。リユースは0.4万トン、リサイクルは1.9万トン。手放されたもののうち半分以上がリサイクルされている。

これを「ゼロにすべきだ」というイシキタカイ系の人らがいるが、それは不可能だろう。

食品の物販だって廃棄量をゼロにすることはできない。消費期限内に売り切れないこともある。自由経済でやっている以上、需要と供給がピタリと一致してロスゼロになることはあり得ない。

また、個人が着古した服を捨てることもゼロにはできない。物は必ず壊れる。壊れた物は捨てるしかない。というか捨てて当然である。

 

イシキタカイ系の人らは現実に則さない理想を描きがちで、燃料問題でも「永久機関」ができると思っているような節がある。生地、洋服のリサイクル物でも永久に何度でも循環できるように考えていると感じるが、生地・洋服のリサイクルは何度も出来ない。

例えば、ペットボトルを砕いて再生ポリエステルを精製できるが、この再生ポリエステルを再度再生ポリエステル化することは現在ではほとんど不可能である。一部で技術開発が進められているが、マスに普及できるような段階ではない。

また、これも一部に新技術が開発されているものの、再生ポリエステル100%生地というのは基本的には難しく、店頭商品の下げ札を見てもらえばわかるように「再生ポリエステル〇〇%・ポリエステル〇〇%」と表示されているものがほとんどで、新品のポリエステルやその他繊維がなければ、再生ポリエステルを使った実用的な生地も作れないのが実態である。もちろん、技術開発は現時点でも進められており、再生ポリエステルだけで生地を作れるような研究もあるが、普及するには到底至っていない。

 

半年くらい前にお会いした某合繊メーカーの社員は「再生ポリエステル生地を作るためには新品のポリエステルを始めとする新品繊維が必須ですから、新品の繊維無くしては再生ポリエステル混生地が生産できません。ひいては新品繊維の生産・製造は逆に必要不可欠です」と説明してくれた。

 

また、最近では高度経済成長期で国内からはほとんど姿を消していた「反毛(はんもう)」というリサイクル技術が再度脚光を浴びている。

要するに不要になった服を細かく砕いてワタの状態にし、それを糸にしてその糸で生地を作るという手法である。

一見すると理想的なリサイクルに思えるが、現在の生地というのは合繊と天然繊維の複合素材が多く、それを砕いてワタにするので、出来上がった糸は何種類もの素材がまじりあっている。純綿の肌ざわりとかウール100%の肌ざわりとかそんな悠長なことは言っていられない。

そして、砕いてワタにするものだから、繊維長が短く、ザラザラとした品質の悪い生地になってしまう。肌の弱い人なら痒くなるようなこともあるだろう。

この反毛生地を再度砕いて反毛することは技術的には可能だろうが、さらに品質は劣化するので実用に耐えられる物ではなくなってしまう。

現状、多くの場合、原料のリサイクルは1度と考えた方が適切だといえる。さらにいえば、リサイクルした生地で作った服もいずれは汚れ・破れて着用不可能になって捨てることになる。

 

そうなると、最も現実的な処理方法は、汚れて破れて着用不可能になった衣料品は無害な物質に分解してしまうことといえる。

先日、報道された大木工藝という会社の新技術である。

どんな廃棄物でも炭化する!大木工藝様の取組みが「びわ湖放送」で紹介されました

大木工藝様は、独自の技術であらゆる廃棄物を炭化されています。無酸素の高炉で処理することにより、CO2を発生させることなく約8割を消滅させることが出来るといいます。残った物質が炭化物(炭素)で、現在医療・建築・土木・電極材・農業・衣料・美容・健康食品など、様々な分野で活用されています。

とある。

 

PowerPoint プレゼンテーション (ethical-fashion.jp)

 

この報道内容が事実だとすると、無酸素高炉で処理して炭化物の塊にすることができれば、着用不可能になった衣類の処分も随分と楽になる。

またこの報道の以前、もう1年以上前のことになるが、オールユアーズの原社長とお会いした時、彼もまた「衣類(それ以外の物質も)を砕いて石灰を含んだ土状に分解できる新技術を開発している会社があってそれに注目している」という話しをされおり、実際に砕いて土状になった物も見せていただいた。

社名を失念したが、大木工藝とは別の会社で、技術的にも違うプロセスをたどるのだろうが、結果は相似である。

 

イシキタカイ系の中には最新の洋服で着飾りながら「繊維・洋服の市場をシュリンクさせるのが解決策」とうそぶく者も少なくないが、全世界で何千万人が従事していると思っているのだろうか。それは「世界人口を半分に削減すれば解決できる」と言っているのと同じである。

現状の経済活動を維持しつつ現実的な処理を考えるのであれば大木工藝方式を採用すべきで、何度もリサイクルできる繊維だとか、何度もリサイクルできる科学技術だとかは、一足飛びには実現不可能なので、処理しつつその技術確立を待つというのが最も適正である。

 

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/03/24(金) 12:20 PM

    う~ん業界人が勝手に盛り上がっているだけで
    ショウバイベースにはとても乗らない話だと思います

    ましてやリサイクルしても
    燃料や金属つまりカネにすぐ換わる物にはなりませんよね?

    バザーに出す・焚き付けにする程度がせいぜいなんじゃ?
    ただ着古したウニクロなんざ誰も欲しくないです

    床拭いてそのつど燃えるゴミが一番ラクだし
    手間が少ないです

  • 忍者猫 より: 2023/03/30(木) 10:48 AM

    先日、猫ベッドを作るのに、ウールの裁断くずを細切れにして入れたら重すぎるので、ユザワヤオンラインで再生ポリエステルわたを買ったんです。ダイソーの綿よりまともだったんですね。ちゃんとシートになってて、重さ調整に半端なのが少しありましたが、詰めやすいしまあまあ良かったです。
    ネットの口コミでは、色が白くないとかあれこれ文句が出てます。サンタ人形の髭なら白くないとダメですがね。
    詰め物でもこれなんで、着る物のリサイクルはコストをかけてしたところで、買ってくれる人はどのくらいいるのでしょうね。
    再生ポリエステルは布団とか寝袋とかの詰め物にしてやればいいんですかね。

    でも、綿や絹やウールより、洗濯乾燥機に放り込めるポリエステル素材が好きな人は多いように思うのですけど。

    裁断くずは、思ったより大量にでまして、30%くらいになるらしく、縫製工場ででる裁断くずの行方が気になります。
    島精機のニットにすると裁断くずがでないので、こちらはよりエコですが、デザインにもう少し頑張ってもらいたいです。
    また、ニット工場には残糸問題があるようですけど。裁ち落としよりは再利用しやすいですかね。こっちはこっちで困っているかもしれませんが。
    再利用して製品にしたところで、買う人がいなければ、また不良在庫の山になるだけです。
    やっぱり1次製品を丁寧に使うという考えも必要なのでしょうね。

    使い古したら、雑巾にしたり、燃やしたり。

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