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南充浩 オフィシャルブログ

機能性の打ち出しはわかりやすい

2014年8月11日 未分類 0

 世間はもうお盆休みだろうか?
それとも13日からというところが多いのだろうか?

先日、ある小さな新進ブランドの展示会にお邪魔した。
ここは機能性素材という切り口でカジュアルアイテムを提案しようと試みている。

いずれ、またこのブログでそのブランドの詳細を紹介するときもあると思うのだが、今日は少し別の話を。

そのブランドを始めた男性と話をしていると、
彼は「高額だけど機能性も耐久性もないという服や生地は個人的にあまり買う気にならない」という。
その部分は筆者も非常に共感する。

筆者の場合は単なる貧乏性にすぎないのだが。

例えばスーツである。
1着20万円とか30万円という高級スーツがある。
もちろん生地も高級である。

以前、大手生地商社のベテラン管理職の方が
「若いころは奮発して1着20万円くらいのスーツを購入していたけどね~。生地がデリケートすぎて2日間続けて着用することができない。下手をすると袖口が擦り切れたり、ひざが出たりする。1日着用したら最低でも次の日は休ませないといけないから意外に不便だったよ」と嘆いておられたことがあった。

多くの場合の高級スーツ生地は非常に細い繊維で織られており、デリケートである。
それだからこそ高額なのだが、逆に耐久性がないということにもなる。

金持ちが1週間5着くらいのローテーションを組んで、1日1着ずつ着まわすというのが本来の使い方ということになるのだろう。

しかし、1着20万円もするようなスーツを5着そろえられる人はあまりいない。
とくに繊維業界のサラリーマンにはほとんどいないのではないだろうか。
筆者も含めたそういう人々にとっては高額だけどデリケートな生地で作られた製品というのは、値段に見合わない不便な商品としか感じられなくなる。

もしかしたら量販店の1万円均一のPBスーツの方が使い勝手が良いかもしれない。
おそらく耐久性は高級スーツをはるかに上回るだろう。
連日着用しても即座に袖口が擦り切れるというようなことはないと思われる。

そういうことを考えると、ファッションというのはつくづく上流階級や資産家のものだなあと感じられる。

大量生産・大量販売によって衣料品の平均価格が下がり、有名カリスマデザイナーやアーティストと呼ばれるような人たちが「高い物の良さを見直しましょう」といくら叫んでも、その風潮があまり反転しない理由の一つには、筆者も含めてデリケートな高級品を手入れする余裕のない人が多いからではないのだろうか。
仕事と家事で毎日が忙しい。本当はほんの1分ほどの手入れで良いのに、時間的というより精神的に余裕がないのでその1分をなかなか創り出せない。

ユニクロが絹素材を打ち出したことがある。

絹業界の人たちは「あんな価格で絹を扱えることが驚異だ」と驚かれていた。
絹はデリケートである。綿の厚手生地のように汚れたら洗濯機でガンガン洗えるという素材ではない。
価格は3990~5990円(当時)程度なので一般人でも手に取りやすい。

しかし、ユニクロのシルクがかつてのフリースやウルトラライトダウンのように市場を席巻することはなかった。
その原因として絹の手入れの面倒さがあったのではないかと考えている。

考えてみれば、ユニクロのヒット商品のほとんどは「機能性」か「イージーケア性」を兼ね備えている。
フリースしかり、ジーンズしかり、ウルトラライトダウンしかり、ヒートテックしかりである。

こう考えてくると、我が国で高価格品として認めさせようとすると、イージーケア性も含めた「機能性」を追求する方が適切なのではないだろうか。
例えば、べたな打ち出しだが「ユニクロの〇〇の何倍の発熱量がある」とか「従来のフリースの何倍の軽量さ」とか、である。

こういうマインドの社会が、洋服の本家たる欧米から見たときに奇異に映るかどうかは別の話であろう。
欧米から見て奇異に映ろうが、今更、日本人のマインドが欧米に完全同化できるわけがない。

まあ、そんなことをつらつらと考えてみた。

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