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南充浩 オフィシャルブログ

安くないブランドは小資本であっても海外進出を考慮すべきでは?

2023年3月9日 企業研究 1

自動車や家電、実用雑貨類に比べると、衣料品の価値は分かりにくい。

当方もよくわからない部分も多い。一方、機能性衣類の価値は誰でもわかりやすく体感しやすい。

2018年の秋だっただろうか、ちょうど台風襲来の大雨が降っている中、仕事に出かけた。10月だったが少し肌寒かったので長袖Tシャツの上からブロックテックパーカを羽織って出かけた。

かなりの大雨だったにもかかわらず、ブロックテックを羽織っていた上半身は濡れなかった。ブロックテックの防水性の高さを体感したというわけである。

こうなると、ブロックテックへの評価は自身の中で高まる。雨が降っている日はブロックテック(夏場を除く)ということになる。

ただ、やっぱりデザインはイマイチだよな、とかそういう不満はあるが当時の定価5990円という安さと防水性の高さを考慮すると、デザインはイマイチでも使おうかという選択になる。

もちろん、デザインの良し悪しにこだわって使わない人もいるだろうが、そういう選択をする人は2010年代以降少数派になりつつあると感じる。

今のマス層の気分は「デザインはイマイチでも高機能性で安い方がイイ」というものではないかと思う。その象徴がワークマンブームだろう。

逆に「デザインはカッコイイけど高くて機能性は不明」という服はマスでは売れにくくなっており、そこに価値を見出す人は少数派になっているといえる。そしてその手のファッションがさらにサブカル感を高めていて、ライト層が入門しづらくなっているともいえる。

その狭い市場に向けて数えきれない小ブランドがパイを奪い合っているというのが今の国内市場ではないだろうか。

これは国内市場の在り方がかなり欧米化して来たのではないかと感じている。

 

先日、こんな記事があった。

「A.P.C.」 Lキャタルトンに売却 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

フランスブランド「A.P.C.」(アーペーセー)がLキャタルトンに売却されることが明らかになった。Lキャタルトンはキャタルトン、LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、グループ・アルノーの3社によるプライベートエクイティ投資会社。これまで独「ビルケンシュトック」、仏「ジョット」などを買収している。A.P.C.の売却額は公表されていない。

A.P.C.は87年にデザイナーのジャン・トゥイトゥが妻のジュディスと創設した。仏で数少ない創業者経営のブランドとして存続してきたが、今後の発展を理由に22年11月に売却の意を伝えていた。

 

とある。87年創設とあるから、売却の理由の1つには老齢ということが挙げられるだろう。若くても60代半ばということを考えるとそろそろ売却しようかということになる。当方が60代半ばで売れる会社をもし所有していたなら間違いなく売却する。そしてその売却したカネで老人ホームを確保するかヘルパーと契約する。

 

APCというブランドは当方にとっては90年代半ばから2000年代半ばにかけてファッション雑誌で随分と見かけたという印象が強い。ジーンズというアイテムが看板の1つだが、当時はもっとジーンズ類だけに焦点が当たっていた。ビンテージジーンズとは異なるフランス風綺麗目なジーンズという感じである。

ジーンズがだいたい2万円前後とそこそこお高いので一度も買ったことがないが、ともすると汚らしく見えやすいビンテージ調ジーンズ全盛期にあって、綺麗な着こなしができるブランドとしては異彩を放っていた。

その後、国内ジーンズはローライズブーム、ローライズ美脚ブーツカットブーム、スキニーブームと変遷する中でこのブランドはファッション雑誌への露出が激減して行った。

それが何年か前に国内でまた復活し始めた。

 

当方がブランド名を認識してから25年前後と長いのでブランドの売上規模はそこそこ大きいと勝手に思い込んでいたところがある。

仏メディアによると同ブランドは直営100店舗、従業員300人と小規模ながら、22年の売上高は推定で1億ユーロ(国外80%)。ウィメンズ、メンズ、レザーグッズとバランスの取れた収益で、コロナのパンデミック(世界的大流行)によりECは総売上高の3分の1に成長した。

とのことである。

今の為替が1ユーロ=143~145円なので、仮に145円として計算すると、全世界売上高は145億円で、フランス国内売上高はそのうちの20%なので29億円ということになる。EC売上高は43億5000万円となる。

国内知名度の高さの割に小規模だと感じる。

 

で、冒頭の話に戻るが、APCというカッコイイかもしれないが高いし機能性はわからない服に関するフランスの需要というのは29億円程度しかなく、それは今の日本国内も同様ではないかと感じられる。物を単体で比べた場合、同じ程度にカッコよくてもっと安いブランドはいくらでもある。ブランドにこだわらないならそちらを買った方がお得である。となると、フランスでは29億円しか売れないのだろうと思うし、日本国内も同様ではないかと思う。

逆にだからこそ、APCは早い時期から海外に進出したし、欧州ラグジュアリーブランドも世界展開を目指したと考えられる。国内の需要が少ないと考えられ、日本もこの手の「高いファッション」についてはそうなりつつある。

そうなると、国内の小規模ブランドこそ売上高拡大の限界突破を目指すなら海外進出するほかないということになる。とはいえ、海外進出は言葉の壁もあるし、いろいろと予期せぬ手間もかかる。何よりも金も必要になるから、これまで海外進出は大手資本に限られてきた。

もちろん、仲間数人と数億円規模の売上高が稼げたら十分というなら日本国内で十分だろうが、天井を越えたいと思うなら、小ブランドほど海外市場に進出する必要があるのではないかと思う。

2010年代半ばに、CTプラージュという国内ニットブランドと知り合った。少人数経営で年商わずか(失礼)数億円という小規模ながらフランスでの販売をメインとしているが、それは先見の明があった(実際は苦し紛れの選択だった可能性もあるが)ということである。

C.T.plage (ct-plage.com)

多分、イシキタカイ系声の大きい人とか、当方より上の年代のノスタルジー丸出しな人とかが、いくら叫んでみてもDCブランドに行列を作ってまで高い服を買っていたような洋服への消費行動は日本国内には二度と戻ってこないと考えられるので、安くないブランドは海外進出が欠かせない時代になってきたといえる。

 

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APCのジーンズをどうぞ~

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/03/10(金) 9:38 AM

    大成功したと思われているAPCですら
    実態は100億ジャスト程度
    それも先進国中心に世界で売って、です

    日本国内では実のところ10億の大台にすら
    乗っていないんじゃ?

    ニット~2万、重衣料~5万のゾーンだと
    仲間10人未満を10年食わせていければ
    大成功といったところでしょう

    まがり間違っても社員を10人以上にしては
    いけません

    やっぱり1人で振り屋・兼・副資材を中心とした
    横流し屋をやるのが無難なのかな・・・

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