往年のブランドイメージを塗り替えることができないサマンサタバサの苦境
2023年2月16日 決算 9
人間個人でも同様だが、企業イメージ、ブランドイメージというのは重要で、確立させるのも大変な作業だが確立させた後塗り替えることはより一層大変な作業だと感じる。
例えばこのニュース。
以前から、サマンサタバサの苦境が取りざたされ続けているが、今回も業績予想の下方修正を発表しており、巨額の赤字を計上することになりそうである。
2023年2月期連結業績の純損益が20億円の赤字になりそうだと15日に発表した。従来予想は1億円の黒字だった。
とある。
ぶっちゃけ、最終損益が赤字か黒字かよりも、本体の事業が好調なのか不調なのかは営業利益で判断するものなので、営業利益に触れずに最終損益がどうのこうのという報道はいただけない。
で、IR情報と他メディア記事を見てみよう。
サマンサタバサの23年2月期は20億円の赤字へ、年末商戦不振 赤字決算 – 不景気.com (fukeiki.com)
前回予想では営業損益は3億6000万円の黒字だったが、今回の下方修正では18億6000万円の赤字となっている。本業がいかに儲かっていないかということがわかる。
その理由については
バッグの稼ぎどきである年末商戦が低調に終わり、計画値に大きく届かなかった。最終赤字は7期連続となる。
とある。
年末商戦、すなわち12月のクリスマス需要とそれ以降の年末需要のことである。メンズ商品も一部にはあるとはいえ、サマンサタバサの主力はレディース商品だが、このレディース商品がクリスマス商戦、それ以降の年末商戦で不振だったということになり、若い女性や若い女性へのプレゼント用としては「選ばれない商品」に成り下がっているということになる。
サマンサタバサの経営陣はこの現実を直視した方が良い。
ここから考えられる状況としては
1、ハンドバッグ類という商品そのものの需要が減少している
2、サマンサタバサの商品がデザインも含めて選ばれにくくなっている
3,サマンサタバサというブランド自体が選ばれにくくなっている
という3つの要因が考えられる。そして、この3つが複雑に絡み合って相乗効果をもたらしているのが現状の苦境を招いているといえるのではないだろうか。
まず、1の要因である。これは以前からも書いているように、ハンドバッグという商品の需要が女性の間で減少している傾向が強いといえる。
カジュアルシーンでいうなら、圧倒的にリュック、そしてトートバッグ、一部にメッセンジャーを含めた肩掛けバッグだろう。
ビジネスウーマンの就業シーンでは伝統的な手提げバッグも多く見られるが、こちらはサマンサタバサがかつて得意としてきたフェミニンフリフリのテイストが選ばれることはない。もっとシンプルで地味な商品である。
リュック、肩掛けバッグという「楽さ」に慣れた女性がハンドバッグなどという不便な製品にカジュアルシーンにおいて今後回帰することはほぼあり得ないだろう。これはメンズも同様である。リュックや肩掛けバッグの快適性に慣れた男性がカジュアルシーンで手提げバッグに戻ることはほとんどない。
次に2である。
引用したWWDの記事内で使われている製品の画像がある。このようなフェミニンフリフリテイストの手提げバッグは現在の若い女性の服装を道端で眺めていても、マストレンドではないことがハッキリとわかる。
となると、こんなテイスト・デザインの商品が売れるはずもないし、クリスマス商戦・年末商戦においても女性の自家需要としてもプレゼント用としても選ばれるはずもない。
そして3だが、これは2とも連動している。
画像のようなマストレンドとは隔絶したフェミニンフリフリ商品もあるが、サマンサタバサの公式サイトで確認すると、そうではないテイストの商品も多数存在する。これは当方も確認して初めて知った。やはり何事も勉強は重要である。
それでも売れないということは、
1、従来型とは異なる商品が存在することを認識されていない
2、そして従来型テイストのイメージが大衆に頑固にこびりついている
という2点が考えられ、それぞれが別個に存在しているのではなく、これもまた混然一体となって味わいのハーモニーを奏でていると考えられる。
従来型のイメージがこびりついているから公式サイトへ行って新型商品を確認しない。だから新型商品が認識されない。というハーモニーである。知られていないのは存在しないのも同然なのである。
2000年代前半以降長期間に渡ってエビちゃんのイメージを前面に押し出すことでサマンサタバサというブランドは高イメージを確立することができた。
しかし、サマンサが得意としてきたフェミニンテイストはマストレンドからはその後外れてしまった。当然、サマンサタバサ側もバカではないから、新テイストの商品やブランドも開発してその都度投入してきた。
だが、それでも2000年代に確立したあのイメージが強固すぎて、大衆の持つイメージを今に至るまで塗り替えられなかったというのがサマンサタバサの苦境の最大の要因ではないだろうか。
イメージを確立させるという作業も大変な費用と労力と時間がかかる作業だが、確立したイメージを塗り替えるというのはそれ以上に費用と労力と時間がかかる作業だといえる。
そして、サマンサタバサはこの塗り替え作業が不調で苦しんでいるともいえる。
本来、そこで必要となるのは宣伝広告だが、多くのブランドは不振に転じると真っ先にこの宣伝広告費を削減する。露出が減るから当然知名度も下がる。そしてさらに売上高が減少するという悪循環スパイラルに陥る。
たしかに、宣伝広告の中には「メディアとのお付き合い」みたいな物も多数含まれており、それを削減することは理解できる。また「効果的な宣伝広告とは何か?」ということもケースバイケースなので一概には言えないし、それを探求するにも労力と時間がかかる。
現在ならSNSとインフルエンサーを活用してということになりやすいが、やみくもにフォロワー数の多さだけでインフルエンサーを選んでも失敗に終わる。またSNSにもさまざまな種類があり、適していないSNSを死ぬほどがんばっても何の効果もない。
その辺りの分析と見極めが必要となり、それはこんな外野から眺めた無料ブログで指摘できるようなものではないから、どなたか優秀な専門家(世間的に名高いとは必ずしも一致しない)に相応の費用を支払って依頼すべきである。
長くなってきたが、少し余談を。
先日、またリーボックのスニーカー「フューリーライト95」を公式サイトからポチった。年末に2足買い、1月に2990円に値下がりしたキナリ色の1足を買ったが、今度は黒である。理由は2600円にまでさらに値下がりしていたので、安物好きの当方としては欲望を抑えきれなかった。
2600円で買ったスニーカーとはいえ、リーボックというブランドでしかもフューリーライト95という品番なら、イキリファッション人からもバカにされることはない。褒められることはないにせよ「クソダサ」とは言われない。
それはリーボックというブランド、フューリーライト95という品番の両方のイメージがそれなりにマシだからである。
一方、昔のダサいオッサンのイメージが強いスニーカーのブランドとしては「ダンロップ」「スポルディング」「ブリヂストン」あたりがある。
当方も大学生時代に国道沿いの靴流通センターで2000円のブリヂストンのスニーカーを買って履いていた。
現在、Amazonなどのネット通販で両ブランドの商品を見てみると、中には「結構マシなデザイン」の商品もある。おまけに2600円くらいで安い。
しかし、いくら「マシなデザイン」であっても、ブリヂストンやダンロップやスポルディングのスニーカーは「ダサい」とみなされがちである。さすがの当方もわざわざ買おうとは思わない。
これがいわゆる「ブランドイメージ」だといえる。
2600円にまで投げ売られていてもリーボックならそこまで「ダサい」とは思われないが、いくらマシなデザインであってもブリヂストンやダンロップやスポルディングなら「ダサい」と思われてしまう。
ダンロップもスポルディングもブリヂストンも30年以上前からあるブランドだがいまだに「近所のオッサンが日曜日に履くダサいスニーカー」というイメージを覆すことができていない。
これと同様のことがサマンサタバサというブランドにも起きているといえる。
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comment
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キムゴンウ より: 2023/02/16(木) 12:59 PM
仕事用の鞄が古くなったので、お袋の保険金がわずかばかり入ったので
ブランドもんという鞄を購入しました
が…重たいし思えばそんなに資料を入れたりPC持ったりする仕事じゃなかった
高かったんで仕方なく使用していましたが たまたま心斎橋の以前はGAPだったとこの
鞄屋さんの前を通りかかり 冷やかしに入ると全然使える鞄ばっかりでした
しかも非常にお安い!早速購入しましたが 使えば使うほど良さが出てきて非常に気にいってます また関係無い私事。
サマンサも一回セシルマクビーみたくチャラにしないと
エビちゃんもえちゃん今一度という再現できない夢を見続けるんじゃないかなぁ
まぁアントンクレージュが一回 浜崎あゆみさんが着て瞬間はやったけど あぁいうこと
サマンサではないだろうな
でも鞄も含めファッション業界って客層を想定したブランド展開の資料をつくるわけですよね
サマンサはそういう分析してのこの状態って、アナライザー大丈夫なのって事なんですかね?良い物作ってれば、お客さんはついてくるのかな? -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/02/16(木) 1:18 PM
これは南理論の応用ですが、
バッグの世界でも、量販店ものが
各段に良くなりました揉み革・加工革で作ったもの特に
ハンド・ショルダー兼用サイズは、
ヨーカドーに並んでいるモノの出来が
サマンサ以上ですしまむらでは厳しいけど
GMS専用流通品なら
充分すぎるクオリティです加えてジェイコブスやコーチが
振り屋経由のロゴだけ商品を乱発した結果
ハイブランドの次の価格帯が
軒並みダメになりましたそのおかげで、200x年代に学生だった
旧サマンサ層が
30代40代になってオフに使うバッグが
ハイブランドor量販店の2択になりましたそして、非・元サマンサ層は
革バッグに移行せず、エコバッグへ加齢に伴う買換え需要をサマンサも
狙ってはいたのですが、ダメでしたね・・・旧サマンサ時代の平均単価は3~4万
ところが今では同じクオリティの物が
1万以下で手に入ります休日のモールで子連れの層のバッグを
見て下さい。サマンサはもちろんコーチを
提げてる人は、ほぼゼロです今やバックは「ノーブランド」の時代です
ただ、デザインはエルメスかプラダから
拝借という感じですなぁ -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/02/16(木) 1:27 PM
回顧ばなしですが・・・
むか~し、実家がイナカな女の子が
こぞってサマンサだった記憶がありますけど、この層はサマンサをいくつも買えない
(フーゾクでバイトしてる層は除くw)加えて、学生だと荷物が多い
しかし、バックはキャンディーカラーのエナメル調
だから傷だらけになっていて、形が崩れまくった
ハート型リンゴ型ぎょうざの耳みたいなフリルがついた
サマンサをそこいら中でみかけたものです彼女たちが、今はグッチを買えるご身分になってりゃ
いいんですけどねぇ・・・ -
読者 より: 2023/02/16(木) 7:52 PM
バッグは衣料品と違って安く作れない。
ファストブランド的なのもあるけどリアルレザーでは
不可能。靴と同じで手作業が多く単価が高いし
素材が布より遥かに高い。
また新規の型とか作るコストが半端なく高いので、
新作をバンバン出せずファスト化は無理がある。
ZARAでも種類多くないのは売れないのもあるけど、
コストの問題もあるのだと思う。
近年牛革の価格が跳ね上がってハイブランドのバッグの価格は昔の倍以上になった。
だから国産ブランドにはむしろチャンスがあったように思う。サマンサは現在のマッシュホールディングスのブランド群の位置に本来はあるべきだったろう。
そのためにはサカイやマメ等の人気ブランド衣料に似合うデザインやマーケティングをすべきだった。
経営層にそういう意識や感覚がなかったのだと思う。
販売や流通等の組織力はまだあると思うが肝心の商品が厳しい。
この辺はエビちゃんブームの頃から価格に見合わないと言われていて、そこの強化を怠った結末だと思える。
たぶんサマンサが流行った頃より婦人アパレル市場のレベルが上がって上質化していったが、サマンサは逆に商品力が低下。
その結果が赤字の連続ということなのではないかな。無理だと悟って廃業したセシルや外資?になったマウジーの方が経営者が賢かったということなのかな。
などと南さんや皆さんのコメント読んで思った。 -
大阪のオバチャン より: 2023/02/16(木) 10:27 PM
高校生の甥っ子に話を聞くと、「ブランド物とわかるデザインの物ってダサすぎ」と。
でも、サマンサタバサにはシンプル路線のバッグもあるので、南さんのおっしゃる通り、イメージを変えるのは、相当難しいのですね。別の鞄屋ですが、「マザーハウス」というブランドをご存知ですか?
バングラデシュで作られていて、現地の工場員には他の工場よりもよいお給料で働いてもらっている、エシカルな企業という感じでしょうかね。
そこのブランドには、一流大学の学生が新卒で入りたい企業に選ばれている人気の会社です。
デザインは普通に可愛いですが、こちらの売りは社長なんですよね。
苦労してバングラデシュで工場を立ち上げた社長に人気があって、鞄が売れるんですよ。
サマンサとは別次元の鞄屋だと思います。 -
とおりすがりのおじさん より: 2023/02/17(金) 12:49 PM
バッグについてはコロナ禍とセクシー大臣エコバッグとの悪魔合体が影響大きそうだなぁとは
その中で既存のバッグ定義から大きく変わらずのままで進んだらこうなったのですかね -
キムゴンウ より: 2023/02/20(月) 10:51 AM
昨日2/19 娘の猫カフェに付き合うために心斎橋に行きました。
帰りに御堂筋の海外ブランド店をぶらぶらしており
「おばあちゃんの遺産が入ったから、鞄かってあげるよ」
とヴィトンとかバーバリーの前で言いましたが
「こんなのいらない。」
と見もしませんでした。一緒にお店に入ってあげるよと言ったのに…。
で結局2nd streetで古いオーラカイリーのショルダーバッグがかわいいと
それをねだられました。
安くて良かったのですが、そういう時代の気分なのかしらと思った次第です。
娘27才。婚活パーティーでカップルになれない原因ってここらなのかしら?
非常に私事ですみません -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/02/20(月) 3:49 PM
kim氏>娘はブランドバックいらない
今どきの一定クラス以上の層では、それがふつうです
入学祝にバックだ時計だという文化がほぼ死滅しました
何かの機会にちゃんとお祝いしてもらえる層の子だと
物を買ってもらえても、喜ばないんですよちなみに7せんえん1万ぐらいのメシを
奢ってあげるよといっても乗ってきませんいまどき物やらメシで釣れるのは
よほど程度が低い層という事なんでしょうでは何にカネを使っているのか?何が欲しいのか?
そういえば中央大学の女子学生が詐欺やって捕まって
カネは何に使ってたかというと、推し活だったとか・・・
話をムリに集約しすぎでは?
ネーム単独としては、
サマンサの現状は価値ゼロに等しいです
つまり、若年層はそもそも
サマンサという名前を誰も知らないwww
したがって、知らないがゆえにイメージゼロです
そして、広告やタイアップ記事でネームの価値を
上げようにも、赤文字雑誌が死亡したので
宣伝する媒体がない
1998年以降にプチヒットした赤文字雑誌ブランド
はどこも同じ問題を抱えています
服ならそうなるのも理解できますが、
靴やバック専業ブランドも同じ状況です
ちなみにバーバリーですら、今の35歳で
知ってる人は5人に1人もいません
30歳以下はいうに及ばず