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南充浩 オフィシャルブログ

スキニーは死んだのではなく定番化・定着化していたという話

2023年2月8日 トレンド 2

20年強もの長い期間、タブー視されてきたオーバーサイズ・ルーズシルエットが2015年から復活し始めたことによって、ファッションは多様化したといえる。

2000年代前半からずっと上下ともにピチピチなタイトシルエットが続いてきた。2008年以降のスキニージーンズ一辺倒はそれが極まった現象だといえる。

昔から「陰極まりて陽生ず」「亢龍悔いあり」と言われるように何事も極まるとあとは反転あるのみである。

上下ともにピチピチタイトシルエットが長年標準となり、ついにボトムスはスキニーにまで行きついてしまった。となると、反転してルーズシルエットが20何年ぶりに再評価されることは当然の結果だといえる。

当方が2015年以降を「多様化」と呼ぶのは、それ以前とは決定的に異なっており、オーバーサイズ・ルーズシルエット一辺倒にはならなかった点である。

ジーンズトレンドに的を絞って90年代から振り返ってみる。

90年代半ばはビンテージジーンズの空前のブームとなり、ゆったりストレートが主流となった。この時代、通常ラインのレギュラーストレートジーンズ(リーバイス501など)はチョイダサと見なされ、特に若い男性はほとんどがビンテージ系ジーンズ一色に染まっていた。

90年代後半になるとローライズタイトシルエットジーンズがトレンドとなり、レディース先行という形でこの辺りからズボンの股上は浅めが標準となり、これ以降、股上の深いジーンズは「ダサい」と見なされるようになり、売り場でも陳列される商品の95%はローライズ化した。

そして、ローライズ化と同時にブーツカットが持て囃されるようになり、2000年代半ばには20代~40歳手前くらいまでの女性は99%がローライズブーツカットを穿いているようになった。この間メンズにもブーツカット化(トゥルーレリジョンなど)は波及し当方とてリーのブーツカットと、リーバイスエンジニアドジーンズのブーツカットを買った。(結果として当方の体型にブーツカットは激しく似合わないことが判明した)

2008年からはスキニー一辺倒となり、ブーツカットを穿いている人は少しトレンドに遅れた30代半ば以上の女性に限られるようになり、2015年を迎えた。

この間、全体的なシルエットもそうだが、ジーンズのマストレンドも移り変わるたびにそれ以前のマストレンド商品はことごとく売り場から駆逐され、その時々のマストレンド一辺倒となっていた。

 

しかし、2015年以降のルーズシルエットトレンドの復活はそれ以前とは様子が異なった。当然ワイドパンツも復活したわけだが、それ以前とは異なりワイドパンツ一辺倒とはマストレンドはならなかった。スキニージーンズの着用者はその前の時代までとは異なり、撲滅されなかったのである。ここが当方の言う「多様化」である。2010年代後半にはレギュラーストレートパンツもそれなりに見直され、それなりの着用者数を見ることができるようになった。何なら、1人の人間がその日のコーディネイトや気分によってワイドパンツ、スキニー、レギュラーを穿き分けることも多々あった。だから当方は多様化と見ている。

 

スキニーが2015年以降全く無くならなかったのは、ユニクロとジーユーの売り場を見ていれば容易に理解できる。

どちらの売り場からもスキニージーンズ(スキニーカラーパンツ)が消えたことが無い。ユニクロ、ジーユーともにマス層に向かって売っているため、マス層に売れなければ1シーズンか2シーズンでその商品は売り場から消されてしまう。次シーズンには企画されない。しかし、ユニクロ、ジーユーともに2023年までスキニージーンズを毎シーズン継続している。ということは一定数量は必ず毎シーズン売れているということであり、利用者数は相応にいると考えられる。

当方はスキニーは「定番化」「定着」したと見ている。

だから、先日この記事を読んだときに驚いた。

スキニージーンズはまだ死んでいないし、股上はどんどん浅くなる —— リーバイスのCEOが指摘 | Business Insider Japan

え?ファッション業界の最先端のイキリたちの間ではスキニーは勝手に死んだことにされていたのかと。

  • スキニージーンズは第4四半期にリーバイス(Levi’s)で最も売れたアイテムだと、CEOのチップ・バーグ(Chip Bergh)氏は語った。

  • トレンド予想やZ世代は”スキニージーンズの死”を2年近く前から予想しているにもかかわらず、だ。

  • とはいえ、ゆったりしたジーンズの売れ行きも良く、ミッドライズやローライズのジーンズも売れている。

スキニージーンズはまだ死んでいない —— 実際、リーバイスで一番売れているのがスキニージーンズだ。

とある。

だが、よく読んでみるとスキニー以外にもゆったりジーンズも売れ、ミッドライズ、ローライズも売れているとかたっているから、要するに「何でも満遍なく売れている」ということでしかない。

 

リーバイスの全世界での現在の売上高はどれくらいかというと、

リーバイスが決算受け上昇 デニムの減速懸念が行き過ぎであったことを示唆=米国株個別 – (minkabu.jp)

 (2022年9-11月・第4四半期)

・ 売上高:15.9億ドル(予想:15.7億ドル)
  米国:8.40億ドル(予想:8.67億ドル)
  欧州:3.70億ドル(予想:3.85億ドル)
  アジア:2.51億ドル(予想:2.74億ドル)

 

とあり、通期では

・売上高:63~64億ドル(予想:62.6億ドル)

と見通されている。

通期では1ドル130円として計算すると、全世界では約8200億円の売上高となる。

ユニクロ、ジーユー、リーバイスと合わせて考えると価格帯の高低はあるが、マスに向けて売っているブランドではスキニーは定番の1つとなっていると考えられる。逆に上の記事にもあったように最先端層からは「死んだ」と見なされていたということになる。

これまで日本では2015年以前までは、ファッション最先端層の推す商品にマスの人気も集中する傾向が強かったといえるが、現在はそうではなくなりつつあるといえる。それがスキニーのマス定番化であり、ユニクロ・ジーユー・リーバイスでの売れ行きということになる。そういう点でも「多様化」しているといえる。

 

日本のメンズでいうと、2016年以降のスキニーは、風俗店のスカウトマンや田舎のマイルドヤンキーの半ば制服化したような印象が強いものの、レディースのマス層ではそういう層だけにとどまらず田舎の若い主婦層も着用しているから、やはり定番化といえるだろう。

 

で、ここから個人的な体験になるが、スキニーも持っているし、何なら最近も値下がり品を買ったが、当方のようなガッチリ体格の男にはスキニーはちょっと似合いにくいと感じる。特にふくらはぎがむっちりしたスポーツ脚には貼りつくようにシルエットを強調するスキニーはあまり見映えするものではない。

だが、顔が大きく首が短い当方にとっては、ブーツカットも鬼門だし、ゆったりトップスにワイドストレートパンツも「ただの小太りな人」に見えやすいので避けたいコーディネイトである。

ゆったりトップスには細めのパンツ、または先細りのパンツが当方のような体型には最もマシに見せる効果があるといえる。

細めのパンツが必要ならスキニーではないのか?と言われそうだが、スキニーよりは少しゆとりがあるがレギュラーよりは細めの「スリムストレート」が当方には最適である。あと、ゆったりボトムスが必要な時は腰回りと太ももにゆとりがあるが裾が少し細くなっているテイパードシルエットが最適なので、効率的に買うのであれば、スリムストレートとテイパードパンツの2本で事足りるといえる。

最先端層の提言なんて、自分に合えば取り入れれば良いし、合わなければ取り入れる必要などさらさらない。その程度の存在である。いわば「参考資料程度」に捉えておくのが最も適切な付き合い方である。

スキニーが死んだとか、〇〇(アイテム名)以外は認めないとか、そんな戯言を聖典のように受け取る必要はまったくない。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2023/02/10(金) 2:44 PM

    南さんの見方に反対するわけでもないが,欧米と日本では大分事情が違う気がします。僕らが若い頃は,服装のお手本といえば欧米白人(一部の人にとって黒人ラッパー)だったけれど,今のお若い人だとだいたい以下が基準になっていると思う。

    ①ネットで検索上位に来る格好やアパレルがそうさせている格好
    ②韓国人風ファッションやヘアスタイル(男でもキノコ頭だらけ)
    ③(都会に住んでいると)クルマはおろか洋服なんぞにお金はかけられないから,とに角無難なものを…って志向

    “スキニーは定番化した” というのは①②③総てにかかわりますね。たとえば BTS は(例外はあるが)およそステージで太いズボンなんて穿かない。踊りが売りの一つなんだから当然ですね。①では最近極端なビッグシルエット推ししているけれど,クセが強すぎて,日本人には誰でも似合う,誰でも着たがるというものではないから今ひとつ広まっていない気がする。世界的にも特に流行っているわけでもないし,③なら尚更。

    ②のBTSやビッグバンは結構スキニーな感じのブルージーンズも穿いているけれど,日本ではこんな具合。
          ↓
    http://sokuhou-z.blog.jp/archives/18263010.html

    どうやらこれは①一時の WEAR が黒スキニーだらけだった影響が強いと思う。実際今も WEAR で「スキニーブルージーンズ」で検索すると,出てくるのは男だとほとんどおじさんばかりだし(正直今回の記事のスキニーブルージーンズの画像もどこの商品なのやら)。結局これは①よりもむしろ③の問題なのでしょう。僕も若い頃,オシャレ初心者の頃は黒のスリムジーンズばかり穿いていたが,あれはまあ何にでも合うので便利なのよね。

    実は僕も「さすがに細身短丈の時代は終わるだろう」と思っていましたが,近ごろスーツもTVのアナウンサーは(タック入りのズボン穿いていて,多少は腰回りにゆとりあっても)全体としては細くてテイパードで③BTSのスーツ姿みたいな感じですね。

    かくして日本のファッションは――言葉のあまり正しくない意味で――ガラパゴス化する一方のように僕には思えて仕方がないのでした。

  • BOCONON より: 2023/02/10(金) 3:26 PM

       おろしたてタイにしみ入るカレーうどんクリーニングに出すも甲斐なし

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