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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店客は御贔屓店が撤退しても近隣の他百貨店店舗には流れにくいという話

2023年2月7日 百貨店 1

ヨドバシカメラの西武百貨店池袋店への出店を巡る外野からの異論が喧しいが、何をそんなにこだわっているのか当方には理解に苦しむ。

そんな中、昨日発表されたのがこのニュース。

ダイソー、東武池袋店に出店 都内の百貨店に初進出: 日本経済新聞 (nikkei.com)

大創産業(広島県東広島市)は22日、東武百貨店池袋店(東京・豊島)に100円ショップ「ダイソー」など3業態を開業する。ダイソーが都内の百貨店に出店するのは初めて。合計した売り場面積は約2400平方メートルで、2022年4月に東京・銀座に開いた旗艦店より1.5倍近く広い。

東武池袋店の6階で、家具店の「ニトリ」が退店したスペースに出店する。

とのことだが、同じ池袋の百貨店で他方へのヨドバシカメラの出店には意味の分からない異論が相次ぐが、他方への百均のダイソーが出店することには何の異論もない。

ダイソーは構わなくてヨドバシは文化を壊すという言いがかりは最早意味不明である。このダブルスタンダードぶりはなんだろうか。(笑)

 

ことほど左様に、ある界隈の人たちにとっては、百貨店というのは何らかのシンボルであり金科玉条になっているといえるのだが、大手メディア・業界メディア・エライコンサル先生方の語る百貨店論や百貨店再生論がなかなか当てはまらない状況が続いているが、それとは一線を画した百貨店分析が掲載されたので、引用しつつご紹介したい。

当方は、この分析・指摘は当たっている部分が多いのではないかと思っている。長文なので引用抜粋しながら、時々文意が読みづらい箇所もあるので、その部分は当方なりの超訳で補いたいと思う。

 

百貨店の行先 | コンサルタント | 生地 雅之 | アパログ | ファッション、アパレル業界のブログポータルサイト (apparel-web.com)

 

以前から何度も書いているが、若い時分に、百貨店の基本構造とメンズ百貨店アパレルの基本を教えていただいた生地雅之さんの記事である。

この記事の内容で、当方がご紹介したい部分を大別すると

1、百貨店の外商が伸びている理由と外商の将来見通しについて

2、百貨店が閉店しても近隣他社百貨店の売上高が伸びにくい理由について

の2点である。

もちろんこの見方が全て正しいわけではないだろうが、巷間流布しているような説が適切なら百貨店業界は今頃とっくに再生できているはずである。

 

まず、1の「百貨店外商の伸びと今後の外商見通し」についてである。

コロナ禍においても百貨店各社の外商は伸びていると発表されている。これについて多くは「所得・資産の二極化が強まり、金持ちはより金持ちになっている」とするが、果たしてそれだけだろうか?当方は富裕層になったこともないので、その消費心理はわからないが「所得や資産が増えたから宝飾品とか高額ブランド品とかをいつもより多めに買っておこうか」とはならないのではないかと思う。しかもコロナ禍でそれを見せびらかす場も無かったわけだから尚更である。

これについて

この現象(海外渡航禁止)が現在の百貨店を支えているのです。
外商が伸びているのは殆どこの理由なのです。
これからの百貨店は外商の伸びが見込めず、行先は不透明です。

とある。海外旅行がコロナ禍によって事実上禁止されてしまっていたから、それが百貨店外商へ流れたという見方である。もちろん、中には美術品のコレクターやマニアもいるだろうから、自己満足のためだけに買っていた富裕層もいただろう。しかし、富裕層全員がコレクターやマニアではないから、海外旅行できない代わりに何かを買っていたというのはあり得る選択肢ではないかと思う。

また、外商は今後伸びが見込めないと指摘しておられるが、富裕層の人口が増えるか、富裕層の所得がさらに上昇するかしないと、今以上の外商の伸びは期待できないという分析は当然だろう。

 

次に2の「百貨店が閉店しても近隣他社百貨店の売上高が伸びにくい理由」である。

これは当方にとっても不思議だった。A百貨店が「惜しまれつつ(爆笑)閉店」しても、近隣の他社百貨店はほとんど売上高が伸びない場合が多い。

通常の考え方なら、A百貨店客は同等ランクの近隣のB百貨店へ流れるはずである。B百貨店の売上高が倍増とまではいかなくても1・5倍くらいに伸びても不思議はなさそうである。にもかかわらずそういう事例はほとんどない。

百貨店顧客はFBやSCやGMS層の他業態に移行は殆どしないので、勿論FB層もGMS層も同様ですが、SC層はFB層の将来系であり、シングルから結婚して子供が増えるワンボックスカーでのお出かけがメインになるのです。
勿論、百貨店層がすべて(衣食住)を百貨店で買っている訳はないのですが、いまや,全部(衣食住)の一つでも百貨店で買っているのが百貨店層というべきなのです。でないと百貨店売上が4兆円程度にシュリンクしている筈はないのですから、
しかし、百貨店層は暖簾跨ぎはしないので、東急日本橋店が数百億円も売っていたのに、コレド日本橋(FB)に代わり100億円強しか売れていないが、近隣の日本橋高島屋や日本橋三越、東京大丸にお客様が流れていないのです。町田の東急百貨店が業態変更して、東急TWINS(FB)に変わった時も隣の小田急百貨店の売上が伸びなく、1シーズン化粧品売上が20%UPした程度に過ぎなく、他の東急が伸びてもいなく、百貨店は不要なモノを売っていた(喫緊の必需品ではなく、必欲品)ので買わなくても生活ができるのです。

とある。

まず、太い百貨店客層がファッションビルやショッピングセンターに移行しないというのは以前からも言われている通りであるが、なるほどと思わされたのは「百貨店層は暖簾跨ぎしない」という箇所である。

例えば、そごうの太い客はそごうが閉店されても近隣の大丸には行かないということである。

これに関連するかもしれないと思わされるのが、2011年5月にオープンしたJR大阪三越伊勢丹である。当時オープン内見会に当方も参加させてもらったが、報道陣以外にも顧客が多数招待されていた。大阪には伊勢丹はこれ以前には存在しないから「一体どういう顧客なのだろうか?」と訝しく思って眺めていたが、「ファッションの伊勢丹」の顧客にしては70代以上と見られる老人がかなり多く含まれており、さらに訝しく思った。

よくよく考えてみると、恐らくは2005年に閉店した三越北浜店の顧客だったのではないかと思い至った。それなら年代的にも符号が合う。

JR大阪三越伊勢丹は不振で2014年に閉店に追い込まれるわけだが、不振の理由の1つにはここで言われている「暖簾跨ぎはしない」があったのではないかと今にして思う。

北浜三越の顧客からすると、合併したとはいえ、伊勢丹は別の百貨店ということなのだろう。だから内見会には酸化したものの定着しない旧顧客は多数いたのではないかと考えられる。

 

また、ここで例に挙げられている東急日本橋店とその後身のファッションビル「コレド室町」だが、調べてみるとたしかにコレドに変わってから売上高は大幅減少している。

1月31日 東急百貨店、日本橋店閉店 336年の歴史に幕: 日本経済新聞 (nikkei.com)

この記事によると、閉店前の98年度の売上高は455億円となっている。

一方でコレド室町は

コレド室町テラス/日本初出店含む31店、シリーズ計売上250億円へ | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

「当社の日本橋再生計画は2010年コレド室町1、2014年コレド室町2・3開業と続き、現在合計年間3000万人が来館している。コレド室町テラスを加え、シリーズ全体で売上250億円規模を目指す

とあるように、1~3とテラスの4つを合わせて250億円を目指すとある。「目指す」ということは現時点では250億円未満しかないということである。これがコロナ禍前でインバウンドが絶好調だった2019年9月の記事である。

百貨店とファッションビルではビジネスモデルが異なることと、東急閉店時の99年と2019年では20年の開きがあるとはいえ、売上高だけで見れば200億円以上縮小しているということになる。

 

これらのことを総合すると、百貨店の外商は今後大幅な伸びは見られず(微増はあるかもしれない)、近隣百貨店の閉店が相次いでもそのおこぼれを頂戴することも難しいということになる。またファッションビルへの転換も売上高だけで見るならほとんど効果がないということにもなる。まあ、松坂屋銀座店はギンザシックスに転身して売上高は伸びたようなので一概には言えないだろうが。ただ、「百貨店層は暖簾跨ぎはしない」というのはかなり重要なキーワードなのではないかと考えられる。

まあ、巷間言われているような「富裕層狙いで百貨店大復活」なんていうことはあり得ないということである。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/02/07(火) 12:51 PM

    なんか豊島区はビックカメラと2022年10月6日に『豊かなまちづくりのためのパートナーシップ協定』とかいうのを結んでるそうですね。
    区内にはビックカメラグループが運営する保育園があったり、「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」というのにはビックカメラ創業者が8,000万円寄付してたり等々、相当な繋がりが豊島区とビックカメラにはあるようでw

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