
衣料品は気温によって売れ行きが大きく左右されるという話
2023年2月6日 天候・気候 2
1970年生まれの当方は、バブル絶頂期にはまだ働いておらず、その当時の売れ行きの好調さを体感したことがない。
バブル崩壊後から衣料品販売で働き始めたわけだが、その時、すでに「バブル頃はもう少し売りやすかったけどなあ」という声を自社の先輩諸氏から聞かされたものだったが、自店で扱っていた商品でいうと、92年~95年ごろまではなんだかんだ言って、ボブソンの04ジーンズが定価7900円にもかかわらず、平日昼間でも3~5本が毎日売れ、それだけで2万数千円~4万円の売上高が稼げた。95年以降はビンテージジーンズが売れ、という具合だったし、ユニクロも全国進出していない時期だったので、今から思うとまだ衣料品が売れやすい状況だったといえる。
90年代後半に業界紙記者になった(なれた?)が、この辺りから衣料品の売れ行きは目に見えて鈍り始め、ユニクロブームも到来したため、苦戦に転じるアパレル企業、ブランドが増え、その要因の説明として常に「異常気象で云々」という言葉が使われた。毎年何かしらの異常気象の弊害が記されており「じゃあ異常じゃない気象はいつなんだよ?」という具合だった。
ちょうどボジョレーヌーボーが毎年「〇〇年に1度の出来栄え」と銘打つのに似ている。
このころぐらいから、業界のエライコンサル氏や業界メディアでは
「気温や気候に左右されない魅力的な商品作り、売り方を模索すべき」
という提言がなされており、当方もそれはその通りだと思ったし、今もそう思っている。
しかし、最近それはあくまでも理想論に過ぎないのではないかと思うようになった。
実現できるとするなら、コアなファンに支えられた小規模・中規模なブランドやショップに限定され、ある程度の数百億円以上の大規模な売上高を望むブランドやショップ(高額・低額問わず)は気温・気象とは無関係ではいられないものではないかと思っている。
この手のまとめ記事はありがたい。
もちろん、すべてを鵜呑みにするのは危険だが、ざっとした概略を手早く知れるという利点が大きい。そこから気になる部分をピックアップして個別のIR発表に飛んで項目別に確認すれば良い。まずは第一歩の概略を知るという意味で非常に有益だと思っている。
専門店チェーン、セレクトショップの2023年1月度売上高(既存店ベース)は、月半ばの気温上昇に苦戦した企業も一部あるものの、下旬の冷え込みで再度浮上したという声が中心だ。
国内ユニクロは前年同月比10.9%増だった。「寒さが後押しして冬物の販売が順調だった」(広報担当者)
とのことであり、夏が暑くて冬が寒いと基本的に衣料品はマス向けブランドは売れやすい傾向にある。
これだけをピックアップすると「高額ブランドガー」の人々が「それは低価格マス向けに限られているのでは?」と言ってくるので、こちらも概略を掲載しておく。
1月のファッション小売り商況 寒波でコートなど防寒物が動く | 繊研新聞 (senken.co.jp)
1月のファッション小売り商況(速報値、既存店売上高)は前年実績を上回った。中旬からの寒波でコートなど冬物の動きが良かった。百貨店はラグジュアリーブランドなど高額品の売れ行きが引き続き好調で、セール期ながらプロパー商品の売り上げが全体を押し上げた。専門店は前半に客足が鈍かったが、中旬以降に防寒アイテムが上向いた。
個別に見ると優勝劣敗はあるだろうが、総じて、百貨店・専門店も1月22日ごろからの大寒波によって防寒衣類の売れ行きが好調だったようである。
実際に「真夏に人気の〇〇ブランドのダウンが完売した」とか「真冬に人気の〇〇ブランドの半袖が売れた」とかそういう報道を見かけることがあり、実際に一部の人気ブランドではそのような動きはあるが、それは一部の人気ブランド特有の現象にとどまり、他のマスブランドには波及しない。さらにいえば、人気ブランドとて、その動きは数年くらいで終わってしまう。
ということは、気温や気象に左右されない客層というのはその程度の人口しかいないということになる。
繊研新聞の先の記事では、百貨店客層でさえ気温に購買動機を大きく左右されているということである。季節先取りで買うという消費行動はほぼ無くなっていると考えた方が適切だろう。
当方なんてセール品しか買わない人間だが、それでも季節に先んじて値段が下がっている服を見つけても「今の時期には着られず、2カ月ぐらいタンスに寝かしておかないといけないから買うのをやめておこう」と思うようになっている。
そうなると、マサ佐藤氏ではないが、天気予報、それも長期予報をこまめにチェックすることがいかに重要なのかということになる。
1月20日くらいから1週間、久しぶりに大寒波に見舞われたが、2月4日の立春からは気温が上昇した。東海地方から西は今月はこのまま高気温が続きそうだと予想されている。
2月は「10年に1度の高気温」だと予想されている。
ということは、残っている冬物は2月前半でなるべく投げ売りするか東北・北海道に店舗間移動してしまい、春物を早く立ち上げた方が良いということになる。
当方は最近、必ずこの天気予報解説YouTubeを見ているが、これによると今年の夏は猛暑日が少ないとも予想されている。
天気予報は外れることもあるが、何の指針も無く個人の勘だけで盛夏物・防寒類の数量を決定するよりは、データに基づいた長期予報と組み合わせて、数量を決定した方が怪我が少ないだろう。
1勝9敗ペースで大勝の1勝を目指すよりも、当方も含めた凡人は「勝てないまでも負けにくい戦い」を目指した方が適切ではないかと思う次第である。
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comment
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/02/07(火) 10:23 AM
> 1勝9敗ペースで大勝の1勝を目指すよりも
>「勝てないまでも負けにくい戦い」を目指すべき衣食住は生活必需品です
だから、相場の世界のような1勝9敗的な勝ち負け論が
なじむわけがない世界のはずところが、なぜかこの業界の人たちはアパレル・ファッション
にコンプレックスがあるから、1勝9敗的なマーケティングに
流れるんですな・・・下着・肌着の世界は上代が低いので、
必然的に原価率が高い世界ですこうした業界の古参企業はどこも今回紹介された
「大もうけはないけど、負けにくい戦い」
「振り込みづらい麻雀的経営」をしています
ただしレナウンを除いてはw
(注レナウンがアパレルを始める前の祖業は
小伝馬町のメリヤスつまりパッチ問屋でした)
1月に寒波がきても、コートはセールの値段でしょうかね…
南さんがおっしゃる通り、寒さは3、4日しか続きませんね~
こうなるとやはり、半袖や七部袖アイテムの充実が大切ですね。
半袖は5月~10月まで、長きにわたって着られますものね。
セール時期が7月というのがツライ!
秋までまだ3ヶ月も着られるのに、セール時期を遅らせる事は難しいのでしょうか。