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南充浩 オフィシャルブログ

富裕層狙いを強化しても全国百貨店店舗数の減少は止まらない

2023年2月1日 百貨店 3

百貨店が外商を含めた富裕層狙いを強めるという報道が相次いでいる。

個人的にはこの方針は正しいといえる。百貨店側(納入業者も含めて)が希望する価格で販売するためには、富裕層や準富裕層を相手にするしかない。

前回にも書いたが、都心商業施設といえども低価格ブランドの導入が激化している状況下で、低価格でない物を売るならこれしかあり得ないだろう。

しかし、富裕層狙いで百貨店が復活というのは、あまりにも楽観的に過ぎ、現実味の乏しい見通しと言わざるを得ない。

例えばこの記事。

百貨店はこのまま消えてしまうのか 「いや、復活できる」これだけの理由:スピン経済の歩き方(1/6 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン

無駄に長いだけので、お読みになる必要は全くないが、要するに富裕層狙いにシフトした百貨店は国内外の富裕層客によって復活するという主旨である。

だが、現在、百貨店協会の発表によると1月末時点で全国百貨店は71社・185店舗と発表されている。200店舗を下回るどころか190店舗をも割り込んで現在も絶賛減少中である。

 

2212N.pdf (depart.or.jp)

 

結論から言ってしまえば、百貨店が国内外の富裕層に特化することで、百貨店全体の売上高は下げ止まる可能性はあるが、全国の百貨店店舗数は1月末の185店舗すら維持できず、もっと減少するだろうと考えられる。その状態を「復活」とはとても呼べないだろうと当方は思う。

理由は、まず国内富裕層・準富裕層から考えてみよう。

まず、国内富裕層・準富裕層は全国に満遍なく散らばっているわけではない。人数でいえば、大都市か大都市近郊に集中しているだろう。

ということは、伊勢丹新宿本店とか阪急うめだ本店とか、難波の髙島屋大阪店とか、JR名古屋高島屋などの都心大型旗艦店への需要が集中し、地方小型店・郊外小型店はその恩恵をほとんど被らないと考えられる。そうなると百貨店本社側も不採算店廃止をせざるを得ず、地方小型店・郊外小型店は富裕層に絞り込んでも閉店が止まらないことになる。

 

ただ、国内には「祖父の代から百貨店でしか服を買ったことがない」という富裕層が少なからずいるのも事実である。

かつて百貨店アパレルビジネスの基本的な理屈を教えていただいた先輩が

「東京の大手メディアの中には『祖父の代から百貨店でしか服を買ったことがない』という若い人が少なからずいるんだよ」

とおっしゃっていたことがある。

その後、当方も、著名人ほどではないが東京の大手メディア担当者と何度か接する機会を持つようになると、先の先輩の言葉が事実だと認識することができた。

彼らは、イオンモールやユニクロ、ジーユーなどでは買ったことが無いのである。だから、必然的に百貨店重視の視線になってしまう。

閑話休題。

富裕層狙いを強化すると、この手の人々を百貨店がさらに強く取り込めることは間違いないが、彼らの買い先となる百貨店は都心旗艦店か百歩譲っても各県内1番店のみとなるだろう。そういう人々の口から「地方小型店を愛用しています」と聞いたことがない。

 

次に外国人富裕層について考えてみよう。

外国人富裕層が日本の百貨店で買い物をするためには、観光やビジネスで来日することが前提となる。百貨店のインターネット通販もあるが、大勢を左右するほど外国人客を取り込んでいるわけではなく、せいぜい誤差の範囲内だろうと考えられる。

そして、いわゆる富裕層インバウンド客が買い物をする百貨店というのは、これまた都心旗艦店か、有名観光地にある店舗に限られることになる。

観光地でもない僻地にわざわざ好んで出かける外国人はさほどいない。日本人が海外旅行をする際のことを想像すれば容易にわかるはずである。有名でもなく観光地でもない外国の僻地に観光旅行に行く日本人はほとんどいない。

となると、いくら富裕層インバウンド客が増えたとしても都心旗艦店と観光地店舗以外の百貨店は売れ行きは伸びず閉店となる。

 

極端な言い方をすると、国内富裕層もインバウンド富裕層もわざわざ京阪百貨店枚方店くんだりまで出向いて買い物をすることはないということである。

京阪百貨店枚方店と同類の地方小型店は、富裕層強化をしても何の効果も出ない。

結果的に富裕層を強化しても全国の百貨店店舗数の減少は止まらない。都心旗艦店と地域1番店、一部の観光地立地店が残るだけということになるだろう。百貨店は決してゼロにはならない。

 

百貨店全体としてかつてのピーク時である90年代前半の規模感への回復を求めることがそもそもナンセンスで、くだらないセンチメンタリズムでしかない。

終戦後から80年代半ばごろまで、百貨店が家族層を取り込めた理由を考えてみれば、現在の百貨店にそれが不可能なことが理解できるだろう。

まず、その当時の百貨店には

 

1、大食堂があった

2、アミューズメント施設があった

3、洋服以外の物も多く販売されていた

 

といえる。これがあるから子供連れ家族層も百貨店へと足を運んだ。

だが、今の百貨店にはこの3つは無くなっている。飲食店といえば、気取ってイキったようなカフェか老舗のナンタラばかりで子供連れが気軽に入店することは難しい。

そして、屋上遊園地などのアミューズメント施設は無くなり、80年代半ば以降、洋服、特にレディース衣料と化粧品に特化している。

飲食店要素は除いてもアミューズメントも無く、婦人服と化粧品ばかりの商業施設に行くことは子供は嫌がる。当方も幼少期に母親に服屋に同伴させられることはたまらなく嫌だった。退屈で仕方がなかった。洋服なんて1ミリも興味が無かったからだ。特に小学校を卒業するまでは。

となると、必然的に百貨店への子供連れ客は増えるはずがない。

 

当時の百貨店の代わりとなっているのが、イオンモールなどのショッピングセンターである。

1~3まで全てそろっており、子供連れが行きやすい場所となっている。

大食堂はないが大型フードコートはある、ゲームセンターなどのアミューズメント施設もある。そして服屋以外におもちゃ屋や本屋がある。

当方も息子たちが小さい頃、イオンモールやアピタなどのショッピングセンターには何度も連れて行ったが、百貨店へ連れて行ったことは一度も無い。

 

子供時代から親しみの無い店舗に、大人になってからヘビーユーザーとなる人は少ないから、富裕層狙いを強化したところで、百貨店は都心旗艦店と地域一番店を維持することがせいぜいだろうし、売り上げ規模が90年代前半にまで回復することは不可能だろう。

そんな実現不可能な「復活」を目指すよりも実現可能な主要店舗の維持に努める方がよほど気楽だろう。

 

 

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 comment
  • 長屋健一 より: 2023/02/02(木) 11:11 AM

    日本橋三越や梅田の阪急さんはともかくJR名古屋高島屋さんはいわゆる富裕層の外商弱いですよ
    マッチャカヤさんが横綱、高島屋は市外の人が栄までいくのが億劫でいく場所ですから
    松坂屋矢場町は同じJリテ傘下の名古屋パルコがすぐ横にあるんで若者向けはそっちに置いて
    トータルで考える、松坂屋単体での売上は見てないと
    外商さんが言ってました

  • 読者 より: 2023/02/02(木) 2:06 PM

    名古屋は全国でも特殊な市場で外資ハイブランドでは売上単価が一番高い。
    近年は知らんけどコロナ前はそうだった。
    故に松坂屋が強いけど、店頭はイマイチやね。コロナ以降行ってないけど変わらんか悪化してそうw
    T社関連の管理職以上の富裕層が存在するので高額品がよく売れる特殊市場。
    高島屋は新規出店業者だからむしろ健闘してるという感じなのでは?

    それでも近年の市場の流れにはあがらえず栄パルコの売上は落ちてるんじゃなかった?
    全体的には南さんの指摘通りだと思う。
    若者は減少傾向だしマーケットの低価格化が進行中で、アパレルは低価格が主流なのは名古屋も一緒。

  • バブルを生きました より: 2023/02/02(木) 2:40 PM

    当方も現在、名古屋在住でございます

    過去の商況は存じ上げませんが
    昨年のクリスマス前に駅前のT島屋の某店へ
    予約したプレゼントを取りに行きましたところ
    「LV」(隠語になってねぇな…)や「H」「C」などの
    人気のショップには入店待ちの行列ができておりました

    知人に聞いたところ、クリスマスに関わらず
    週末の特選(ラグジュアリー)フロアは毎週こんなもんだよ…
    とのことでございました

    成約すれば、最低でもン十万円の顧客を
    ただ、廊下に並ばせておくというのは如何なる差配?
    せっかく、大きな「ハコ」なのですから思い切って
    サロン?ウエイティングバー?的なスペースを広げて
    もっと、プライドをくすぐってあげれば良いのに…
    などと思ったりしました

    百貨店が今後、例えば「10人から1万円」ではなく
    「1人から10万円」あるいは「1人から100万円」の売上を
    恒常的に目指すならもっとスノッブな空間になるのもアリかと思います
    でも、それが成り立つのは確かに大都市圏だけかもしれませんねぇ
    で、我々庶民は更に足が遠のく…それで良いのではないでしょうか

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