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南充浩 オフィシャルブログ

高級な天然素材が必ずしも売れやすいとは限らないという話

2023年1月30日 素材 0

高品質な生地、特に高品質・高額とされている天然繊維(綿・麻・ウール・シルク・獣毛)は洗濯や保管などのメンテナンスに手間のかかる物が多い。というかほとんどがそうである。

逆にイージーケア性を売りにしている素材は高級素材にはほとんど入れられない。宇宙空間でも使えるナントカみたいな特殊な超機能繊維は別として。

極細の超高級ウール生地で作られた高額なメンズスーツは何日も連続して着用はできない。膝や肘が伸びてしまうし、袖口も擦り切れ始める。

そういうスーツは1日着たら必ず休ませて次の日は別のスーツを着なくてはならない。

要するに高額な天然繊維というのは、スーツに限らず、何着も持っていて必ず次の日は着替え、執事やらメイドやらが完璧な洗濯と保管をしてくれることが所有の前提条件となっており、庶民がなけなしの金をはたいて青息吐息で1着買うような代物ではないといえる。

逆に吸水速乾とか形態安定加工とか防水透湿とか防シワとかそういう合繊機能素材こそ我々庶民に適した生地だといえる。

もちろん、庶民でもメンテナンスを完璧にやることが趣味であるなら高級天然素材の服を買われれば良いと思うが、そうではないなら、合繊機能性素材の方がライフスタイルに適している。

当方はメンテナンスがめんどくさいので合繊機能性素材風の方を買う。その方が安いし。

 

和装業界の人々とは12年くらい前はけっこう交流していたが、2017年くらいからほとんど交流が無くなった。まあ、それはそれで構わないのだが、以前交流のあったころ、和装業界の人たちからは

「本物の絹生地を知らないから着物が売れない。本物の絹の良さを知ったら着物が売れる」

なんていうめっちゃ楽観的希望論をたくさん耳にしたが、正直その見解には疑問しかない。控えめに言って見通しが甘すぎるのではないかと思う。

逆に絹生地を増やした方が着物は売れないのではないかと思う。洋服でも同様である。

理由は絹には洗濯や保管がめんどくさいというイメージが強くついてしまっている。虫に食われやすい、黄変しやすい、普通の洗濯機では洗いにくいなどなどだ。

となると、コアなファン以外は手を出しにくい代物になる。

以前に、日本蚕毛という加工業者なら洗濯可能な加工があると耳にしたことがあるが、そういう業者に頼まねばならないということは、やっぱりハードルが高いということになる。

 

10年くらい前にユニクロがシルク(絹)のワンピースやブラウスを発売したことがあった。

繊維業界、和装業界の人々は

「ユニクロがついに絹にまで進出してきたか?」

と色めき立ったが、実際はあまり売れなかったようで、2シーズンくらいで終了し、その後絹についてはユニクロから何の音さたもない。すっかりなかったことにされている。

 

厳密にいうと絹には等級があって、ユニクロが使用した絹はそれほど高い等級ではなかったと言われているが、これが高い等級だったとしても売れ行きは変わらなかっただろう。

理由は、メンテナンスがめんどくさそうなイメージが強いからだ。

良い素材なのかもしれないが、洗濯やら保管がめんどくさそうだから買わない、そういう判断を多くの消費者が下しただろうと考えられる。

継続しなかったということは売れなかったと考えられる。

メンズアイテムは無かったが、もしあったとしても当方ですら買わなかっただろう。まあ、990円とか590円に値下がりすれば買ったかもしれないが、定価でなら絶対に当方ですら買わない。

 

ユニクロが継続しているカシミヤセーターもどうだろうか?

定価で完売することは珍しい。だいたい残っていて半額の5990円くらいに最終的には値下げされている。もちろんカシミヤにも等級はあるし、梳毛か紡毛かの違いもあるから、ユニクロのカシミヤが最高級とは言い難いが、ユニクロ顧客からすると、カシミヤをすごく欲しいと思っている人は少ないのではないかと、いつも売れ残り量を見ながら考えている。

理由はメンテナンスがめんどくさそうだからである。

 

絹とカシミヤだけのことではない。極細番手の綿生地や極細番手のウール生地なんていう高級生地がマス層の消費者に求められていると業界人は考えがちだが、果たしてそうだろうか?

当方はマス層には求められていないと思う。もちろん何事もゼロではないだろうが、多くのマス層は合繊機能性素材の方が使い勝手が良いだろう。

当方も元々は天然素材が好きだが、もう合繊機能性素材服無しでは生活できなくなっている。

洗濯や保管も気を付ける用にはしているが、それでもやっぱりめんどくさい。

以前だとアウターはダウンでないと嫌だったが、最近は軽量で保温力の高い合繊中綿アウターでも構わなくなった。

外見のデザインが良ければそれでいいし、何も当方は冬山登山をするわけでもない。

 

業界からは「高品質は天然繊維を使った高級衣料品でどうのこうの」みたいなブランドをともすると新規立ち上げしたがるが、当方からすると到底マス層には売れにくいだろうなと思って眺めている。

今回、今冬最後と思われる寒波が数日間襲来したが、やはり機能性素材のインナーやアウターはある程度の寒さを軽減でき、使い勝手が良かった。

マス層に売るには合繊機能性素材が最早必要不可欠だと見ている。

 

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