スタジャンの売れ行きが期待外れだった理由を考えてみた
2023年1月18日 トレンド 2
バラクラバには及ばないが、それよりは幾分かマシな売れ行きだったが、業界人の期待ほどには売れなかったアイテムとしてはスタジアムジャンパー(通称スタジャン)があるのではないかと思う。
ちなみにバラクラバデビューしたい人はユニクロマルニのバラクラバを買ってみてはどうだろうか。今は500円に値下がりしている。500円なら失敗しても惜しくないだろう。
で、そのスタジャンだが、各ブランドで12月から大幅値下げが始まっているが、完売しているブランドはあまり多くはない。
顕著なのがユニクロで、定価7990円が3990円にまで値下がりしたがいまだに売り切れていない。ジーユーは定価6990円が3990円に値下がりしているがこれもまだ完売していない。ジーユーだとMA1ブルゾンは定価3990円で長いこと売り続けてきたが、先週ようやく2990円に値下がりした。そして色によっては完売している。
あとはセンスオブプレイスは12100円がやっと8990円に値下がりしたがこれもいまだ完売していない。
中価格帯でいくと、アーバンリサーチ本体のスタジャンは定価38500円が26950円に値下がりしているが、これも完売していない。これが低価格ブランド群よりも高い理由は、ボディはウール53%混(残りは綿・合繊6者混)のメルトンであることに加えて袖が羊革であるためだろう。
使用素材が如実に低価格ブランドとは異なっている。
当方は以前にも書いた通り、ユニクロのスタジャンが3990円に値下がりした時に紺×黒を買った。
ボディの合繊メルトン調生地も分厚いし、袖の合繊も安っぽい光沢がほとんど無い。おまけに中綿入りなので暑がりの当方からすると厚手ダウンの代わりとして十分の保温力である。
購入してから1か月くらいが経過し、その間何度となく嬉しがりのように気温の低い日に着用を繰り返してみた。
結果から言うと、決して悪くない。むしろ、物の品質、保温性、デザインからすると、定価の7990円でも安いくらいで、センスオブプレイスのスタジャンよりはるかに上である。
センスオブプレイスのスタジャンは中綿が入っていないので真冬の着用は難しい。それでいて定価12100円である。ただ、ユニクロには無い茶色という色があるので「ワシはどうしても茶色が欲しいんじゃ~」という人は買っても良いかもしれない。が利点はその程度である。
ジーユーは定価、値下げ後ともに価格はユニクロ並みだが、使用素材の品質は合繊メルトン、合皮ともにユニクロより劣る。
あと、デザイン面でいうと、胸にデカイワッペンが貼り付けられている。オッサン・ジジイだと若作りしすぎているように見えてしまうのではないかと思う。若い人なら年齢相応だろう。
定価7990円、値下げ後3990円はコスパの高さとデザインの無難さでいえば、スタジャンというアイテムはユニクロの圧勝だと当方は判断する。
ただ、ちょっと贅沢をして値下がり後のアーバンリサーチのウール混メルトン&羊革袖のスタジャンを買ってみても良いかなと思うこともある。
しかし、それでも各ブランドとも完売しない。
メンズのショート丈カジュアルブルゾンでいうなら、MA1ブルゾンに惨敗している。ユニクロとてMA1だけは5990円のまま値下げせず、いまだに期間限定値下げで1000円値下げて4990円にするにとどめている。要するにジーユーもそうだがユニクロもMA1ブルゾンは値下げせずとも定価で売れるという状態にあると考えられる。
半額以下に値下がりしたスタジャンの扱いとは雲泥の差である。
ではなぜ、スタジャンはユニクロを含めて売れなかったのかを着用してみて思ったことを挙げてみる。
1、ダウンジャケット(中綿入りブルゾン含む)に比べてやはり重い(自分は気にならない程度だが)
2、ダウンジャケット(同)に比べて素材特性上伸縮性が少ない(要するに動きにくさを少し感じる時がある)
3、ダウンジャケット(同)に比べてコーディネイトを考える必要性が少しある
4、これまで特定ファンのアイテムだったので馴染みがない(ダウン、MA1ブルゾンは馴染みがある)
あたりが理由なのではないかと思う。
要するにどの理由も大衆がダウンジャケット(中綿入りブルゾン含む)に慣れ過ぎた結果だろうといえる。通常のダウンの概念に近いままでいて、少しだけ目先の変わったアイテムとしてはMA1ブルゾンの方を大衆は支持しやすく見慣れているということになるだろう。
同じショート丈ブルゾンに属し、シルエット的にはMA1とほぼ似通っているが、メルトン調生地と革っぽい素材使いという点で見え方は大きく異なっている。
ダウンブルゾン類に慣れた人からするとMA1の方がはるかにとっつきやすいし、これまで愛用していたダウンブルゾンをMA1に着替えるだけだからコーディネイトにも取り入れやすいといえるが、スタジャンはもう一工夫する必要がある。
この点が「不便」「めんどくさい」と判断されて、半額以下に値下げされてもユニクロでさえ売り切れないのだろうと考えられる。
業界人の中には、黒いダウンブルゾンばかり売れることを「感性が貧しくなった」などと嘆く人がいるが、洋服に対して興味があまり無い人からすると、黒が無難だし、変に色で冒険してもコーディネイトに頭を悩ませることになり、その労力が嫌、その時間が無駄と考えることになる。そしてそう考える人がマス層には増えているということに過ぎない。
しかし、この考えを突き詰めると黒のタートル、Tシャツにジーンズしか着用していなかった故スティーブ・ジョブズの姿勢に近くなる。自分は故ジョブズは全く好きではないが、ジョブズの姿勢を褒めている業界人は少なくなく、そしてその業界人が黒いブルゾン、ハーフコートしか売れない点を嘆いているということも少なくないので、ダブスタもよいところであるといえる。
それはさておき。
衣料品・ファッションに興味を持つ人の人数が2005年以前よりも減ってきていると考えられる現状においては、「黒無地アウターなら無難やろ」と考える人がマスを占めるのも当然だといえるし、スタジャンみたいにコーディネイトに一工夫必要なアイテムは敬遠されても当然だといえる。
決して需要がゼロだったわけではないが、業界人が思うほどには総需要量は多くなかったということだろう。
低価格ゾーンでは今後、ダウン使用アウターはユニクロか無印良品、タイオンくらいでしか手に入らなくなり合繊中綿アウター類が主力となるだろうが、スタジャンやメルトン風コート(Pコート、ダッフルなど)の売れ行きはあまり期待しない方がよいのではないかと思う。
蛇足だがユニクロのダッフルコートは定価12900円だったにもかかわらず12月半ばには5990円にまで値下げされ、さらに正月明けには4990円に値下げされている。これもダウン・中綿類に慣れた人からすると「めんどくさいアイテム」と映ってしまったのではないかと考えられる。
小規模・零細専門店ならコアなファンに向けて逆張りのスタジャン、メルトンアウター提案というのも生き残り策の一つといえるが、ある程度のマスに売りたい店は、ダウン・中綿類のアウターが適品ということになるのではないか。もちろん、暖冬傾向ではあるから、変化をつけるとすると、そのダウン・中綿類のアウターが分厚いか薄いか中肉か、というあたりしか手立ては無さそうである。
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comment
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BOCONON より: 2023/01/18(水) 6:19 PM
南さん自身でも言っていた通り,スタジャンというのはよく言えば名前通りスポーティ,悪く言えば子供っぽい感じになりがちだから,彼らの言う通り着こなすのはなかなかむつかしいですね。
↓
https://fashion-news.net/archives/8266449.htmlましてそれが以前取り上げた MB クンみたいなビッグシルエットだと「そういう風に着るような性格の服じゃないだろ」と僕なら思いますね。
そもそも今のお若い人たちの中には――これを言っちゃあおしめえですが――うっかりするとスタジャンもスカジャンも良く知らない子もいますし。南さんのお買いになったものについて言えば,おっしゃる通りで,たぶんユニクロのデザイナーは「オジサンでも着られるように…」と思ったのでしょうし,それは失敗してはいない。でも着やすく便利でも「これを “スタジャン” と呼ぶ理由があるのかな。そこにスタジャン愛はあるんか?」という気はしますね。
僕個人的には昔から,先日『ロンドンハーツ』でアルピー平子の着ていたような茶スエードのジャンパーが欲しい(でも高くて買えないでいる)ので,ユニクロでも無印良品でもいいから人工皮革で作ってもらいたいと思っています。
年ふりてまた流行るらむと思ひきや命なりけり MA-1 は
中わた化繊ブルゾン(ダウンJKTに非ず)と スタジャン の
比較検証として、実にち密な考察ですねぇ・・・
前者は化繊時代初期・70年代のダウンJKTが起源
後者ははるか戦前が起源
つまり歴史が70年も違うわけです
そしてどちらも化繊化に従って
値段が安くなり、着やすく、扱いやすい服に変わった
そして最後に売れ行きを決めるのは
「コーディネイトがラクちんかどうか」
過当競争下でも生き残ったアイテムやスタイルは
生き残れる然るべき理由が
ちゃ~んとあるという事ですな
インナーやJKTが何であれ、
ひとまずクロでテカリ控えめの60~80丈の
物を着ちゃえばカッコウはつきますもんね
そして中綿入りなら暖かいし
10年前ブームだったキルティングコートが
その前哨戦だったのかも