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南充浩 オフィシャルブログ

意外に品質は高かった(過去形)

2014年7月16日 未分類 0

 某チェーン店で昨年、一昨年と夏のセールでTシャツを複数枚買いこんだが、今年は1枚も買っていない。
在庫で残っていた昨年物が格安で並べられれば買うかもしれないが、今季物にはちょっと食指が動かない。

メディアや業界ではあまり話題にならなかったが、昨年、一昨年物は素材が良くて、洗濯を繰り返してもあまりヘタらない。
今季物は店頭で見る限り、素材のクオリティはワンランク落ちるように感じる。

先日、そのチェーン店のOBの方と久しぶりにお会いする機会があった。
そのとき率直に「今春夏物の素材のクオリティが下がったように思うのですが?」と尋ねてみた。
そうすると「今春夏物は利益確保のために原価率を引き下げています」との答えが返ってきた。
さらに「昨年物までは原価率が40%内外ありましたが、今季からは30%くらいに引き下げられています」とも付け加えられた。

これにはちょっと驚かされた。
このチェーン店のPBの原価率が40%内外もあったことは世間的にあまり知られていない。
原価率の高さでは定評のあるユニクロが、平均で38%なのだから、それを上回る原価率である。
原価率が高ければ何でも良いというものではないが、それでも製造品質の一定の目安にはなる。

OBも「世間的にはあまり知られていませんが、原価率は高かったのです」と笑っておられた。

低下したとはいえ、原価率はまだ30%台を維持しているというのも驚きだ。
百貨店に納入するようなブランドやセレクトショップのPBなんかでは原価率20%台というのは珍しくない。
それらの中には原価率20%以下という商品もある。

それにしてもこのチェーン店の商品品質の高さがこれまで世間に伝わってこなかったのはなんとももったいない話である。
あからさまに原価率をアピールするわけには行かないのだけれど、何とか手はなかったものだろうか。

この業界に長いこといるせいかもしれないが、2000年代半ばまでの販促・広報手法というのは徐々に通じなくなってきているように感じる。

タレントの〇〇と契約しました、テレビドラマ〇〇に衣装提供しています、ファッション雑誌に掲載されました、というやり方が以前ほどの効果を発揮しなくなっている。

奇しくも、13年ぶりに木村拓哉さん主演のドラマ「HERO」の続編が開始された。
ドラマ内容は13年前と変わらぬノリで往年のファンは楽しめたのではないかと思うし、2話以降も期待したいと思う。
さて、13年前の「HERO」は冬クールのスタートだったので主人公は明るい茶色のレザーダウンを着用していた。13年前はあの茶色いレザーダウンがドラマの影響で爆発的に売れた。

今回の「HERO」での着用服は以前ほど売れないと思う。
いくらドラマの内容が面白くて視聴率が高くてもだ。

2000年代後半以降、人気ドラマの影響で爆発的に売れた洋服というのはあまり記憶にない。
だから今回も同様の結果になるのではないかと考えている。

「HERO」の主人公はいつもジーンズ着用なのだから、今一つの売れ行きが数年間続いているジーンズというアイテムがそれにつられて復活するかといえば、それはないだろう。

一事が万事そんな感じである。

話を元に戻すと、品質が高い商品を作っているブランドは、そちらをアピールすることを考えた方が良いのではないか。
タレント使用で売上高が今も伸びるなら、かつての大手ジーンズナショナルブランドは軒並み売上高を伸ばしていないとおかしいということになる。
しかし、かつての大手ジーンズナショナルブランド各社はろって売上高を減らしている。

先のチェーン店は依然として30%台という高い原価率を維持しているとはいえ、やはり原価率40%台の商品と比べれば見劣りしてしまう。
IR情報を見ていると、業績は苦戦中である。
この苦戦はちょっと長引きそうだと感じられてならない。

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