MENU

南充浩 オフィシャルブログ

アパレル企業は暖冬が基本だと考えて商品計画を立てた方が賢明だという話

2023年1月6日 天候・気候 10

天気予報がそろって1月15日周辺は10年に1度の高気温になると伝え始めた。

大阪市の1月15日までの気温変化予想を現時点で書くと、8日の日曜日から12度くらいの気温が続き、来週金曜日は15度、土曜日は17度、15日は16度になっている。

三月中旬並みの暖かさである。これは東京も同じで、東京は15日は17度の予想となっている。

この年末年始も大阪市は比較的暖かく、当方の住んでいる地域も暖かかった。

流石に曇りの日や強風の日は体感温度が下がるが、無風で晴れている日は昼間は年末年始とは思えないほど暖かかった。

昨年12月30日・31日と住んでいる実家の窓ガラス吹きをやっていたが、昼間は晴れて暖かく、手がかじかむこともなかった。何なら吹いていると汗ばむほどの陽気だった。

窓ガラスを拭くには気候的には適していない(水拭きがすぐに乾くから乾拭きしても水跡が落ちにくい)が、人間の活動には優しい気候だった。

 

1月15日以降、また気温が低下し、最高気温は9度になるが、それとても数字だけを見ると極寒ではない。

もちろん、湿度や風速によっても体感温度は大きく左右されるが、晴れて無風ならさほど寒いとは感じない気温といえる。

総括すると、今冬は12月の22~24日まで厳しい寒波が襲来したが、それ以外は暖冬といえるだろう。

もっとも、北海道、東北、北陸、内陸寒冷地は全く異なっており、12月は豪雪となっているが、東京、横浜、名古屋、大阪はそろって暖冬傾向だったといえる。

「12月の寒さは厳しかった」と言っている人もいるが、それは22~24日の大寒波の強烈な記憶に引きずられているだけに過ぎないといえる。

 

 

ここから考えたいのが、アパレル各社は業界の花形ともいえる防寒アウター類を今後どのように考えるべきなのかである。ここでは豪雪地帯や寒冷地は除いて、消費数量が多い東京、横浜、名古屋、大阪を基準としたい。

2022冬は期初にはラニーニャ現象の影響で極寒が予想された。

ラニーニャ現象の影響による極寒といえば、記憶に新しいのは2021年末から始まった寒波で2022年1月・2月は「何年かぶり」の低気温が都心でも続いた。

これはアパレル各社には一部を除いて予想外だったようで、ユニクロですら2022年1月度売上速報では「防寒物の在庫が足りなかった」と説明しているほどに防寒着の製造枚数を抑えていた。

そのため、年末からの気温低下が始まった1月は大きな機会損失が生じたということになる。

これに懲りてか、さらにはラニーニャ現象の予報も加味してか、ユニクロは2022冬では防寒アウター類の在庫数量を増やしたように店頭を見ていると感じる。

しかし、残念ながら12月に入っても11月よりは気温は低下したものの、比較的暖冬が続いていた。記憶をたどると、12月11日に京都の清水五条にある大谷本病へ亡父の納骨に行ってきたが、その際、シャツ+綿セーター+ブロックテックコート(中綿無し)という組み合わせで出かけたが日中は汗ばむほどの暖かさだった。

これでは防寒アウター類、防寒セーター類は動かない。

ラニーニャ現象による寒波はいつ来るのか?と思っていたが、「何年かぶり」に、22日からクリスマス寒波が襲来した。この寒波がもっと長く続くのかと思っていたら、24日午後には強風がおさまり、25日から日中の気温が上がり始めた。26日以降は曇ってヒンヤリしたり、晴れているのに風が強い日はあったものの、日中の最高気温は10度を越えた日が続いて年末大掃除が捗った次第である。

年が明けてもその傾向は変わっておらず、日曜以降気温は上昇し続ける。

1月16日から気温が下がると言っても時すでにお寿司遅しである。一度春の暖かさを味わった消費者は、もう分厚い防寒物を買おうとは思わなくなる。

2022年1月・2月のような寒波はたしか4年前の2018年1月・2月にもあった。

とすると、昨年1月の長期寒波は4年ぶりということになる。2018年1月・2月の寒波もたしか5~6年ぶりのはずである。

人間は誰でも直近の強烈な記憶に引きずられやすい。それは当方も同じだ。だが、気温データを見ると、年末から1月にかけて長期寒波が襲来するのは、だいたい4~6年に1度という周期となっている。

となると、防寒着を大量に仕込んでもそれが当たるのは4~6年に1度ということになり、確率で考えるとかなり低い。逆に暖冬だと考えて防寒着の数量を絞っておく方が当たる確率は高いということになる。

 

気温データの収集や数量予測については、当方にはそのノウハウは無く、マサ佐藤氏に頼られることをお勧めしたいが、基本的には、4~6年に一度の周期でしか巡ってこない長期寒波に備えて防寒着の在庫を増やすことは負ける確率が高いと考えるべきだろう。プロ野球でも2勝1敗、3勝1敗ペースでシーズンを終えれば優勝できるので、5年に1度の長期寒波襲来で機会損失をする程度なら優秀な経営戦略と呼べるのではないか。

逆に4~6年に1度の長期寒波に備えて防寒着を常に仕込んで売れ残り在庫を抱え続ける方が経営としては悪手だろう。

防寒アウター類・防寒セーター類はアパレルでは花形商品である。当方も含めてアパレル業界人は防寒アウター類・防寒セーター類が大好きなので注力してしまいやすい。しかし、自分の好みとビジネスは別である。ビジネスとしては、特に防寒アウター類は暖冬を基本と考えて、在庫量を抑えることを平常とする方が賢明だといえる。

防寒アウター類があまり要らない冬というのは、少し寂しい気がするが、そういう現実の気候に対処しなくては企業は生き残れない。

 

↓仕事のご依頼はこちらからお願いします~↓

SERVICE

この記事をSNSでシェア
 comment
  • BOCONON より: 2023/01/06(金) 12:26 PM

    ひろゆきじゃないが,僕も「地球温暖化なんて誰かげんみつに証明した人がいるんですか?」「北極の氷河が解けても南極はそうでもないのはたぶん海流変化のせいだし,北極グマの頭数も増えてますが?」「もし温暖化したとして,それで農産物の収穫が増えたら困るんですか? それとも “地球は灼熱地獄になる!” とおっしゃるか?」とつむじ曲がりな考えをする人間であります。
    例のノーベル賞を取った地球温暖化のコンピュータのシミュレータも “進化論の厳密な数学的基礎付け” と同じく「しかし100年後なんて実際どう変化したとしても責任は持てません」と云ったもので。

    とは言え,南さんの仰言ることに反対というのでもない。ここ数年たとえば欧州の異常な暑さだの,アメリカの少なからぬ人死にが出るほどの異常な寒波とか,世界的に異常気象が頻発しているのは事実だから。そして(あまり知っている人がいないけど)今地球は氷河期,正確に言えば間氷期にあるので,この異常気象続きは本格的な寒冷期=氷河期に向かう予兆かもしれないと考える研究者もいるし,僕もそれはあり得ないとは言えない気がする。
    まあ今のところ日本においてはビジネスとしては南さんの言うような方向で大過なくいけるでしょうが,これがずっと続くと考えるのは,今言ったような理由で少々お気楽すぎるので,そこはアパレル業界は「じわじわとまるで逆の方向に行く可能性」も常に念頭に置いておかないと大やけどしかねない気がします。

    大阪人などは東京に越して来ると「夏なのに東京って夕方風が吹くやん! Tシャツ短パンでいりゃ涼しいやん!」と驚いたりするらしいから,南さんと僕みたいな北関東の人間とは気候に対する感じ方,それに応じた服の選び方が違うというのも多分あるでしょうしね。
    僕は自分では別にそうは思っていなかったが,うちの比較的近所の立正大学熊谷校卒の千葉県出身者は「入学してすぐ “関東一気候の良いところから関東一悪いとこに来てしまった…” と思ったよ」なんて言っている始末であります。東北人ですら「寒いさむい」と言う空っ風の季節はまだこれからが本番だし,その季節が穏やかになる気配は一向にない。毎年の事ながらやれやれであります。

  • kta より: 2023/01/06(金) 12:36 PM

    値下がり前提の現況からして、
    ヘビーアウターはプロパー消化できる期間がなさ過ぎる。

  • とおりすがりのオッサン より: 2023/01/06(金) 3:47 PM

    南さんがツイートしていた12,900円から4,990円に驚異の62%オフになったユニクロのダップルコートは、さすがに5,000円以下になったら捌けてきたようで、M、L、XL以外はネット通販分は売り切れてましたね。ブラウンはちょっと欲しいと思ったりしましたが、他に着るものあるしオッサンだしでやめておきましたw
    ZOZOとかでも防寒アウターは爆死しているのが結構あるっぽくて、40,000円弱が20,000円弱に半額になってても、全カラー全サイズ在庫あったりしていて、ご愁傷さまです・・・。
    しかし、やっぱり40年前くらいより冬は暖かくなってますよね。小学生の頃とか東京でも通学時に水たまりの氷を割ったり、霜柱踏みつけたりしてましたし。
    一回、日暮れ間近に小学校の校庭で何か作業させられていた時、校庭の水たまりが凍っていくのを見た記憶があります(いや、記憶違いかなぁ?w)

  • BOCONON より: 2023/01/06(金) 8:26 PM

    ▶今の高校生などはコートを着ないのがカッコいいと思っているかのようなアンバイだし,電車の中で聞こえてくる女子高校生たちの会話では「陰キャって冬はたいていダウンジャケット着てるよねー」「そうそう,それもたいてい黒のダウンジャケットw」なんて調子だったりするから,そこらじゅう黒だらけのこういう世の中で重衣料を売るのはなかなかむつかしいでしょうね。
    アクアスキュータムなどは昔ながらの丈の長いダッフルコートを推してたりして,僕が目をつけると販売員氏が熱心に勧めてくれ,僕が「今風の丈が短いダッフルコートだと子供っぽくなっちゃうから,これはいい感じですね。でも今日は見るだけなんで…」と言っても「それでも是非一度着てみて頂いて――」と言うので着て見たら軽いのでびっくらしてしまった。気に入ったけど,15万円じゃ「買わんけどw」ですね。(百貨店では僕は過大評価気味だ。そんなにお金持ってるように見えるのかしらん)。

    ▶関東だと東京を中心に(CO2に限らず)クルマや事務所・工場・家庭の排熱等で巨大な熱のかたまりが出来ているので,台風が来ても跳ね返してしまう。おかげでここ何十年も台風が関東直撃なんて事がない。いいんだか悪いんだか,いづれ僕らジジイの幼少期よりはそりゃ暖かいですわな。

  • BOCONON より: 2023/01/06(金) 8:34 PM

      ひさかたの天見るごとく仰ぎ見し池袋西武の荒れまく惜しも

      ひさかたの茶のぬくもりや今朝の秋(僕ではなく中曽根康弘大勲位の句)

  • キムゴンウ より: 2023/01/10(火) 10:38 AM

    昨日、アベノキューズモールにてユニクロのダッフルコートを見てきました。
    ここ最近同社の店舗で我知れず「ただでもいらんわ!」と悪態をつきがちなのですが、
    今回もそれが出てしまいました。素材の安っぽさが受け付けられないのです。
    たまたま大学生3人が同じように見ていましたが、「ないな」とすぐにラックにもどしていました。
    といっても、隣の廉価なスーツブランドのコートも同様に「ただでもいらんわ!」という品物でしたから、同社だけの問題ではなく「コート」というアイテムへの憧憬が無くなり同時に、生産者の熱意も消滅してしまったということなのかもしれませんねぇ。
    大門圭介はコートを着てショットガンを撃ちまくり、小暮課長はコートを着て堂々と歩きたばこをしていましたが、あの頃にはもどれません。
    そういえば森保監督、黒いサングラスかけたら寺尾聰みたい。関係ないけど.

  • とおりすがりのオッサン より: 2023/01/10(火) 11:30 AM

    あれ、やっぱりユニクロダッフルは見送って正解だったんですかね?w

  • 大隅 より: 2023/01/10(火) 10:32 PM

    大門圭介も好きだけど、工藤俊作もカッコいい。探偵物語の女性は毛皮のコートを着た人が多く、今見るとそのいかつさにギョッとします。

  • BOCONON より: 2023/01/11(水) 11:36 AM

    “通りすがりのオッサン” 氏はユニクロのダッフルコートに未練があるようにも見えますが,まだ在庫があったとしても,今年のユニクロのあれは考えなしに買うのは危険だと思いますよ。

    ▶ユニクロ公式サイトでも言っている通り(無印良品同様)オーバーサイズだから,いつもMだかLだかだからと言ってそのサイズを買ってしまうと,たぶんこんな感じになってしまうと思う。
         ↓
    https://www.webuomo.jp/fashion/190755/?shm-vp=3

    オッサン氏が流行り物好きあるいはモード系の服が好きなら別に止めはしませんが,こういうの,10~20代前半ならまだしもおじさんあるいは爺様がこういうブカブカした服着ていたら馬鹿にしか見えないと思う。
    上記画像もせめて袖くらい直せば良かろうに。

    ▶色がベージュと黒しかないようですが,安物のベージュやカーキは大概安っぽくて見られたもんじゃない。黒も,ウール風の素材なら高級感がないと陰気またはガラの悪い/貧乏くさい感じに見えるので,画像やユニクロ公式の画像や動画から受ける印象は当てにはなりませんね,多分。
    最近のカメラ等はおおよそ汚いものもキレイに写るように出来ているから尚更。

    ▶今期のユニクロのダッフルコートは裏地がついていません。本来ダッフルコートというのは漁師の防寒作業着だから,厚く荒いウール生地に裏地なしが正しいようなものですが,生地が薄くて裏地なし,高級感もなしではペラい感じでいくぶん貧乏くさい。

    > 大学生3人が同じように見ていましたが、「ないな」とすぐにラックにもどしていました

    ――と云うのはその所為かどうかは知りませんが。

    ▶ユニクロの昔のダッフルコートは確か木製だったと思いますが,今期はどうか,僕は知りませぬ。プラスチックでなく木製だといいのですが。
    一般に安価なブレザーやカーディガンやダッフルコートはボタンやトグルで一目で安物と分かってしまう。
    「でもウールマークついてるぞ」と言うならますますいけない。ある程度以上の服はウールマークは一見しただけでは見えないところ(ポケットの中とか)についているからです。

    …そんな事はともかく,これまたダッフルコートのトグルというのは本来漁師の網についている浮きを流用したものだから,水牛の角製より木製が正しいようなものですが,ダッフルコート買うなら水牛の角製または木製の安っぽくないトグルを選ばないと貧乏くさく見える惧れありであります。
     
    以上老婆心ながら。

       ユニクロを取り入るるにさへ上手下手

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/01/11(水) 1:56 PM

    丈が長い・正確には体をおおう面積比率が高い重衣料
    つまるところ80丈以上のコートは
    近年のアパレル標準価格だと厳しいと思います

    このレングスに化繊で挑戦した会社が過去にありましたが
    「サッカーの試合中に監督が着るコート」になっちゃう

    私見ですが激寒期用のコートは
    さっこんのアパレル標準価格品ではなく、
    セールで2万ぐらいの物を買ったほうが
    満足度が高いと思います

    もしくはペラいコートのサイズ大きめに
    中にニットを着込みまくるか

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ