
アニメ漫画がメインカルチャーでファッションはサブカルチャーになったという話
2022年12月22日 トレンド 2
当方が就職した30年前は、アパレル業界には今でいう陽キャみたいな人が多かった。
当方は、そこまで陽キャではない。陽キャというのはだいたいが学生時代からイケてたり人気者だったりする人がほとんどだが、残念ながら当方はイケていたわけではないし、学生時代からも今も人気者ではない。
人気者はだいたいスポーツ、アウトドア系を趣味としていて、その当時から2000年代半ばまでのアパレル業界人の趣味というとだいたいが音楽(バンドも含む)、サーフィン、アウトドア、サッカーあたりが多数派だった。もるろん無趣味な人もいたが、その場合の趣味は服と酒だった。
当方はそのどれもが趣味ではない。服は好きな方だが無理をしてまで自分の収入を越えるような服を買いたいとは昔から今まで思ったことがない。酒は好きだったがそんなに強くないのと、ジジイ化して飲みすぎるとしんどいので最近は量を減らしている。
サッカーのルールは知っているが興味はないので見ないしもちろんプレーもしない。アウトドアは野外が嫌いなのでしない。特に夏は屋外にすら出たくない。サーフィンは海が嫌いなので絶対にしない。音楽には全く興味が無い。
30年前当時、まだDCブランドブームの余波は残っていた。そしてユニクロブームはまだ訪れていなかった。スーパーマーケットに安い服はあったが、デザインソースは同じはずなのに、仕上がり具合はDC系ブランドとは似ても似つかなかったので、かっこよさげな服を買うとなると、DC系ブランドか百貨店ブランドかの高い服しかなかったが、それを買いたいという人は今よりも多かったと感じている。
もちろん携帯電話もまだ普及していないし、インターネットなんて影も形も存在していないから、個人の支出先の種類は今よりも少なかった。だから洋服に金をつぎ込む人も多かったのだろうと考えられる部分はある。また個人の趣味というのも今よりは選択肢が少なかった。
2000年代半ば以降、アパレル業界でも以前のような陽キャ趣味以外の趣味を好む人が増えた。具体的に言えば、アニメ、漫画、ガンプラあたりである。こちらは当方も好む趣味であるから、業界の居心地は昔よりは良くなった。
実際にSNSが普及し始めて以降は、業界人とガンプラの話でつながることも増えた。
また、以前にも書いたが、ファッション専門学校の生徒と、洋服のブランドやアパレル企業の話題を振っても、全く知らないから会話にならないということは珍しいことではなくなったが、アニメや漫画の話をすると、50代のオッサンと18歳の生徒で世代間格差の無い話題が生まれる。
昔はアニメや漫画、特撮などは「サブカルチャー」と総称されており、今でもその総称は残っているが、実際のところは全世代で共通の話題が通じる「メインカルチャー」に格上げされたといえる。
それが証拠にアパレルブランドとアニメ、漫画、特撮とのコラボは国内外で途切れることがなく続いている。
直近の発表だけを抜粋しても以下の通りである。
というような具合で、コラボするブランドはマイナーではなく、名の通ったブランドばかりである。
これを見てもわかるように、有名ブランドにとってもアニメや漫画、特撮とのコラボは「オタク趣味の恥ずかしいこと」ではなく、売れ行きがある程度期待できるキラーコンテンツとなっていることがわかる。
昔は「洋服ブランドが〇〇(各ジャンルの商材)とコラボ」という打ち出し方だったのが、今では「アニメ〇〇と洋服ブランドがコラボ」という打ち出しに変化しており、アニメ・漫画が主で、洋服ブランドが従であるという主客逆転が起きているといえる。
そして、当方はこの主従関係は今後もさらに強固に固定化して行くと見ている。洋服ブランドが主に返り咲くことはかなり遠い未来まであり得ないだろう。
それでも日本人は全員洋服を着て生活しており、全裸で過ごしているわけではない。多くの一般大衆はどこで服を買っているのかというと、ユニクロ、しまむら、ジーユーあたりにハニーズやワークマン、無印良品なんかを加えたラインナップで大部分を賄っているのだろう。実際に当方が着用している服の7割は現在ユニクロ+ジーユーになっており、残り3割がアダストリア、一部にベイクルーズとアーバンリサーチとワークマンが含まれるという具合になっている。(もちろん全て値下げ品である)
ユニクロ、ジーユーだけでは飽きるとはいえ、それ以上に物凄くファッション性の高い洋服への強い渇望があるわけでない。アダストリアや大手セレクトショップオリジナルの値下げ品を差し込めば何となく満足である。これは当方の感想でしかないが、一般消費者の多くもこんな感じではないのかと思う。
服屋は服が好きだから、いつも服のことを考えていて、いつも服が欲しい。
でもそうじゃない人は、いつも服のことを考えていないし、いつも服が欲しい訳ではない。何かきっかけがないと服のことは考えないし、欲しいとも思わない。— アパレルEC| 藤村淳一郎 (@jun_fashionec) December 19, 2022
このツイートはまさにその通りだといえる。
価格が高くてファッション性を売りにしている中小零細規模の洋服ブランドは、もう決して「メインカルチャー」ではなくなっていることを強く認識してビジネスプランを組み立てなれば生き残れないだろう。「ファッションというサブカルチャー」の中のマニアに向けて提案するというスタイルで丁度良いのではないか。
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テレビに出演してみて感じたシーインへの薄気味悪さ(個人的体験と個人的感想と)|南充浩|note
comment
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BOCONON より: 2022/12/22(木) 9:13 PM
仰言る事に反対なわけではないですが,南さんのお仲間みたいな人たちもこんな風に言っているようなアンバイですからね。
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http://gunpla-news24.info/archives/11928どうもアニメとアパレルは相性が良くない気がしてならない。「Tシャツくらいならまだしも,アニメキャラの私服,あるいは戦闘服,ステージ衣装を再現した服なんてものはコスプレ好きな人でもなきゃ実際には着て歩けそうもないし,実際あんまり見たことがない」という意味で。僕も『ルパン三世』などを除けばアニメは苦手なので,サブカルものと言ったらせいぜい「トトロハンカチは持っているし,スターウォーズTシャツくらいなら着るけど…」といったところであります。
今回の記事のヨウジヤマモトの『チェンソーマン』コラボも帽子も,ベルばらハンカチも――分かり切った事かも知れないが――洋服紳士雑貨のたぐいと言うよりは一種の “ノベルティグッズ” と思った方が良い気がする。「持ってるだけで満足」あるいは「1,2回シャレで着用するだけ」と云ったような。
それゆえあんまり大きなマーケットにはなりそうもないので,深入りするのは危険だと思います。一時 AOKI で大量に売れ残っていた『鬼滅の刃』ネクタイみたいにね。
まあ僕みたいに今どき「このセーター,アンゴラだぜ」「このアイリッシュツイードのジャケット,いいだろ?」などと言っては顰蹙を買っていたりするより,分かりやすいノベルティグッズの方が「一般人」相手の話のたねとしては余程ましでしょうが。
カルチャーだとこそばゆいのでw「文化」という言葉を使います
大勢の人が関心・あこがれを持つ対象であるが故に
大勢の人に広がる可能性がある文物を「文化」と定義します
先鋭的で、時代の先をゆくデザインの服にお金を使うのが「文化」だった
93年ぐらいまでじゃないのかな
相応の階層の人は相応のブランド、相応のお店で服を買うのが「文化」だった
2008年ぐらいまでで完全に死滅しました
服を売るのに相乗りしやすい「文化」は
2022年現在、何でしょうね?
アニメはもうピークを過ぎている感がありますし・・・