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南充浩 オフィシャルブログ

彼を知り己を知れば百戦危うからず

2022年12月21日 企業研究 0

先日、真冬のなんちゃってランニング用にダイソーで220円のタッチパネル手袋を買ったというブログをアップした。

帰宅して着用してみると、これまで真冬のなんちゃってランニングで愛用してきたアダストリアのタッチパネル合繊ニット手袋と何ら変わらない装着感である。

黄色×紺色というのがさすがにアダストリアのセンスだと思わせられるが、別段ダイソーのグレー×黒で何ら問題はない。むしろ、グレー×黒の方が無難で良いという人の方が多いかもしれない。

これで220円なら、当方のようななんちゃってランナーはこれで十分といえるだろう。ただし、これでは満足できないから黄色×紺色が欲しいとか、グリーン×ブルーが欲しいとか、そういう嗜好を持つ人もおられるだろう。そういう人のために各価格帯に各ブランドが存在するのではないかと思う。

その辺りを分けて考えないと、例えば先日からしつこく書いているように、各インフルエンサーの8割方が期初から褒めたたえているにもかかわらず、3990円にまで値下がりしてしまうユニクロのスタジャンのような悲劇が生まれてしまうのではないかと思う。

 

この辺りを冷静に見極めて判断を下すのが、マーチャンダイザーだろう。

その部分での実務経験が無い当方が、内容的に最もその知見を信頼しているのがマサ佐藤氏のブログである。

最新版にはこんな記事がアップされている。

過去のブログを紹介しながら、MDの改善ポイントを纏めてみた

A 商品の管理・分析ルールを顧客動向が見えるように構築すること
B MD予算設計をしっかりと行うこと
C 商品そのものを良くする努力を怠らないこと

 

 

という3つの項目について述べられているが、小見出しだけよりも内容を読まれた方が良いだろう。

で、当方が昔から感じていることに「C」の項目がある。

小見出しだけだと、「商品が良くないと売れないよ」と言っているだけのように感じられるが、内容はそれだけではない。

 

今年の11月は、当初の予報と反して、気温が高く推移しました。そのことで、冬商品(特にアウターやニット等)の動きが鈍ったということは、上場企業の月次報告にも記載がありましたし、私の周りでもそのように証言される方が多くいました。しかしながら、暑かった11月でもダウンの動きは良かった!と、多くの方が証言されていました。(これはレディースの方も、メンズの方も証言されていた)顧客視点でこのことを考えると、「(かわいい・カッコイイ)防寒アウターは欲しいけど、重いアウターは嫌!」という意識が、多く働いているのでは?と推測されます。

 

とある。これはユニクロを始めとした大手チェーン店の概況であることは言うまでもない。今年の11月は気温が高く、ついに月内で冬物の防寒アウターを着用することがなかった。だから、11月末までに当方も防寒アウターを買おうという気が起きなかったし、事実買わなかった。

これはマス層の購買意識と等しいといえるだろう。

 

しかしながら、ショップやブランドによっては、冬の防寒アウターをダウンや中綿アウターばかりにしてしまうと、コンセプトとかけ離れる!ということもある筈です。このことを解消するには、Aの部分。特に小分類のルールを詳しくしておくことが重要です。また、トレンドに左右されない、自ブランド・ショップの強みを活かした”看板商品”を、開発する等商品そのもの精度を上げることが必要です

 

ともある。

例えば、マス層に売れる物だけを揃えるというのでは、例えばユニクロやジーユーに売り負けてしまうだろう。何せ相手は安値である。

ユニクロは少し値上がりしたがそれでも他のブランドも値上がりしている中においては、その価格差は縮まっていないといえる。

ダウンジャケットを大量に販売したいということになると、ユニクロ、無印良品、あとダウン混のワークマン辺りと競争することになってしまう。当方のような安物好きのみならず、洋服にさほど興味の無い人が増えているから、なにやら込み入ったシャレオツなイメージのブランドをわざわざ探そうとも思わず、この辺りのブランドで手を打つ人の方が現在の世の中的には多くなっている。

 

しかし、マサ佐藤氏も今回触れておられるように、業界内では毎年「暖冬だったが、真夏からダウンが完売した」とか「分厚いウールメルトンのコートが10月に完売した」とかいうブランドが必ず出現する。

これは当方が業界紙記者時代から変わらずに存在するから、もう25年前から存在することになる。

 

この評判を聞いた他のブランドが「なら、うちでもダウンを夏から売ろう」とか「来年はダウンを多めに仕入れよう」とかそういう判断を下すのである。これも25年前から変わらずにある。

ただ、これらの追随組はだいたい失敗する。

ではなぜそうなるのかということを考えると、そもそも「真夏にダウンが売れた他社」と「自社」の客層や客数の違いを認識できていないからではないか。

ユニクロはマスに落とし込んで訴求するのが上手かったブランドだが、スタジャンで客数と客層を読み違えたといえるから、ユニクロでさえ百発百中ではないのである。

 

ユニクロを支える大衆からすると「なんぼ最新トレンドか知らんけど、重いし着こなしが難しいスタジャンなんか高品質低価格でも要らん」ということだし、逆にファッションを売るブランドを支持する少数派からすると「実需のダウン一辺倒ではユニクロと変わらないからもう少し捻りの効いたアイテムが欲しい」ということになる。だからこの手のファッションブランド顧客からすると「目新しいスタジャン」は動きやすい。ただし、動いた数量は1ブランドあたり何千枚という程度で、ユニクロでは全く物足りないということになる。

 

今年の夏はカナダグースのダウンに行列ができたというニュースは聞かなかったが、真夏から高額ダウンに行列が過去にできていたことがすごいといえるが、逆に高額なダウンを買うような人はあの行列程度の人数に過ぎず、そういう人はマニアだから真夏に並んででも買うだけのことである。ちょうど、ガンプラファンが新商品発売日にジョーシンの開店前から行列を作るのと同じであり、ガンプラに興味の無い人からすると「一体何のために並んでいるの?」ということになる。

 

その辺りは本当に自社の客層(嗜好など)と客数を冷静に捉えて数量を決定する必要があるだろう。

昔から「真冬に麻シャツが売れた」とか「真夏にダウンが売れた」とかそういう特殊事例は業界内で噂になりやすい。その噂だけに振り回されてその商品を追随したところで、客層や客数を分析していないのだからほとんどの場合が失敗してきた。それはマニア客なのか、それともマス層が動いているのか?その部分だけでも見極めることが重要だといえる。

マサ佐藤氏の想いとはもしかしたら異なる結論を当方は読んでしまっているのかもしれないが、各ブランドの責任者には注意を払ってもらいたいと思う。

 

 

久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました。↓

テレビに出演してみて感じたシーインへの薄気味悪さ(個人的体験と個人的感想と)|南充浩|note

 

 

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