ワークマンの勢いが今後鈍化する?かもね
2022年12月6日 企業研究 6
11月度の前年同期比増減が上場各社から発表された。
それを受けて林さんが全社まとめた上に19年同月比も算出してくださっており、めんどくさがりの当方からすると非常にありがたい。これを毎月やってくださっているので、このアカウントはお勧めである。
11月既存店売上高前年比 ※()内は19年11月比
・Uアローズ 102.0%(78.9%)
・アダストリア 102.9%(99.6%)
・しまむら 101.7%(118.5%)
・国内ユニクロ 96.2%(92.2%)
・無印良品 92.0%(86.0%)
・ニトリ 102.7%(108.8%)
・ワークマン 91.2%(96.0%)
・ライトオン 89.5%(75.9%)ワークマン不振
— 林 亮介 │ スーツEC👔責任者 (@Rin0717Hayashi) December 5, 2022
これを受けて「ワークマンが前年同月比も19年同月比も合わせて100%を下回ることは初めてではないか?」とおっしゃっておられる。
恐らく当方も初めてではないかと思う。ワークマンはこれまで両方をクリア、もしくは最悪でも片方は必ずクリアしていた記憶しかない。
前年同月比8・8%減で19年同月比4・0%減ということは、コロナ禍以降も11月度売上高は前年実績を越えていたということになり、これまでのワークマンの快進撃のほどがうかがえる。
ではなぜ、単月とはいえワークマンの快進撃が止まったのか。
当方は品切れ多発の機会損失が最大の要因ではないかと考えている。これまで何度も書いてきたが改めて繰り返すことになる。
あらゆる組織に共通するのが、これまで上手く行ったシステムが未来永劫上手く行くとは限らないということである。組織の大きさや活動範囲によって適正なシステムは常に異なるのである。そして、不適切になったシステムを使い続ける組織は必ず衰退へと向かう。
ワークマンの必勝パターンとなった主だった既存システムをおさらいしてみよう。
1、フランチャイズ店比率が常時95%前後ある
2、商品を大量に作り置いて2~3年かけて売り切ってからモデルチェンジする
3、2のおかげで大量生産が可能になりそれを低価格・高機能商品として反映できる
である。
しかし、カジュアル市場に進出し快進撃を繰り返して売上高1000億円を越える大企業になると、1と2が足かせになりつつあり、それが売り切れ品切れの続出につながっている。これが当方の見るワークマンの2022年の現状である。
まず、大量に作った商品を3年くらいかけて売り切るというシステムは、一見するとアパレルブランドとしては理想的だと映るが、これは作業服分野だから可能になった作り方・売り方であり、ファッショントレンドに左右されるカジュアル市場においては、需要に全く対応できないシステムといえる。実際にこんな売り方をしているブランドはない。あったとしてもごく一部の定番と呼ばれる継続品番に限定されている。
ワークマンが作業服の片手間にカジュアルに進出した頃なら、カジュアル客も少なかったからこのシステムが有効に機能した。しかし、今はどうだろうか、カジュアル客需要が激増しているため、3年かけて売り切りますというシステムは通用しなくなりつつある。売れる商品は瞬殺されるが、売れない商品は何年も残り続ける。それがカジュアル市場である。
次にネックになっているのが高すぎるフランチャイズ店比率である。需要が水物のカジュアル衣料市場においてはフランチャイズ店が95%も占めていると、スムーズな補充追加がやりにくい。
理由は簡単である。フランチャイズ店に納入される商品はすべてフランチャイズ店が買い取っているという体制だからである。
例えばフュージョンテックダウンが好調で1週間で完売したとする。(実際にした店舗もある)その際、直営店なら本部から「完売したから来週〇〇着倉庫から送っておく」と通知すれば済む話である。そこに何の支払いも発生しないから、販売員としては送られてきた商品を受け取って、検品してから店頭に並べればそれで終わりだ。実際にチェーン店に勤務していたころの当方もこの一連の流れは体験している。
しかし、フランチャイズ店ならどうか。いくら完売したからと言って、本部がホイホイと送るわけにはいかない。何せ商品は店側の買い取りで支払いが発生するからだ。フランチャイズ店オーナーからすれば、「この品番は確かに大人気で完売したが、安易に仕入れてしまうと売れ残る可能性があるからやめておこうか」という発想になりやすい。特にカジュアル衣料品になると需要と人気は水物である。急にそのアイテムが不人気に転じることも珍しくない。また完売したからと言って追加しても、実はその完売状態が需要を目いっぱい取り込んだ結果という場合も珍しくない。
そうなると、いくら完売しようが追加補充されないということが多発する。
毎年・毎シーズン、ある程度の需要数量が見込めていて変化しにくい作業服市場とは全く性質が異なる。
さらに言えば、期初に作り置くシステムは完備しているワークマンだが、補充生産システムは無いのかもしれない。(推測)
畢竟、ワークマン、特にプラスや女子などのカジュアル需要の多い店舗は品切れ完売品番が続出である。
おまけにユーチューバーやらインフルエンサーが相変わらず煽り続けているので、特定の品番への需要は増えている。新商品が投入されたばかりなのに数日で完売というのが珍しくない。
じゃあ、ネット通販があるじゃないかという人もいるだろうが、ネット通販も状況は同じだ。
NEWマークが付いている品番でも完売品切れが多い。ワークマン店舗が近隣に無い人ほどネット通販を頼るから瞬殺傾向は強くなる。
じゃあ、ネット通販ブランドくらいネット通販での販売力を高めて補充追加生産システムを強化すればどうか?
という意見を持つ方もおられるだろうが、現状のワークマンにそれは不可能である。
なぜなら、ワークマンのネット通販は本部直営だからである。
本部直営のネット通販が強くなりすぎてしまうと、95%のフランチャイズ店から必ずクレームが出るし、離反も相次ぐ。フランチャイズ店にとっては本部直営通販は共食いする可能性があるからだ。大きくなられると困るわけである。
そして実際にクレームでもあったのか、ワークマン公式通販サイトから以前にはあった「店舗在庫検索システム」が今は無くなっている。
たしかにフランチャイズ店で展開する方が、本社にとっては人件費や販管費を抑制できるし、不良在庫も抱えることもなく良いシステムだといえるが、物事には必ずメリットとデメリットが存在する。上手く行ったシステムが未来永劫上手く行くこともない。人気と需要が水物のカジュアル衣料品市場において、1000億円を越える売り上げ規模に達するとフランチャイズ95%というシステムは有効に作用しなくなる。もしそれが可能なら何故これまでの数多あったカジュアル衣料品店がそれを導入していないか、である。できない事にはそれ相応の理由が必ず存在する。
そして、店頭も通販サイトも品切れ品番の山となっている。
こうなると、発売と同時に店頭に行くか、ネット通販を連打するしかなくなるが、通常の学生や勤め人に店頭と通販サイトに四六時中貼りついておくことは不可能だし、ワークマンの商品にそこまでして入手するほどのプレミア価値もない。
今のワークマンは実店舗でも通販サイトでも買いにくいブランドということになり、めんどくさいブランドということになる。
それが顕著に表れ始めたのが2022年11月度商況ということではないだろうか。
今後、ワークマンの売上高が大きくなればなるほど、カジュアル市場にシフトすればするほど(実際に中期経営計画ではそうなっている)今の商品補充追加体制とフランチャイズ偏重システムは効果を発揮するどころか足を引っ張ることになるだろう。
カジュアル市場にシフトするなら、ワークマンは新たなシステムを構築する時期に差し掛かっているのではないかと思う。
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comment
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/12/06(火) 12:28 PM
南サンが指摘している内容は、構造的な問題の中でも
中ワクぐらいの大きさの構造問題だと思いますそしてその指摘はおおむね正しいように思います
ただ、それ以前に最大の大きさのワクの中での
構造問題があるのではないでしょうか?1.話題になって時間が経ったので、もう飽きられた
2.人口と可処分所得が減ってきたインフルエンサ~インスタグラマ~がいくら取り上げた所で
大して購買に結びつかないのは周知の通り。それにこの手の
煽りに乗る層は話題になってりゃなんでもいい訳で
彼ら彼女らはSHEINに乗り換えたんじゃないですか?それなりに話題に追随する層にとっては、たいして魅力的な
商品でもないですワークマンごときは。要は化繊の服だから
いくらでも代替商品がありますそして何気に怖いのが、所得減と景気悪化と人口減少
1年前と比較すると不要不急な消費をするムードは
確実に冷えています。そして今のワークマンが売ろうと
しているのは不要不急のカジュアルウェアですしかもノースフェイスと違ってワークマンは、
消費にタテの広がりが見込めないSCでは家族3人みんなノースフェイスという
人たちを結構見かけます。いっぽうワークマンは単身者と
高齢者が主たる客層だから、消費が世帯に広がらない加えて既に指摘があったように「みんなが着ているから
ワークマンを着よう」とは絶対になりませんこれでは、その他おおぜいの人が参入する事で成り立つ
大ブームにはなりづらい。3年5年スパンで売上を伸ばす
事すら不可能でしょう業界人が騒ぐほど、ワークマンはふつうの若者・社会人には
響いていないと思います特に世帯年収800万ぐらいの現役世代層にとっては
ほとんど認知度がないブランドだと思います -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/12/06(火) 12:55 PM
ノースフェイスはロゴ・ブランド浸透度が
ズバ抜けている印象があります。以下実例特異なパターンではなくごくありふれたケースです
・母子おそろいリュックがノース
・JKTは3人全員ノース
・ニットキャップが母子おそろいでノース
・ブーツは母子おそろいでノース1家族3人で都合10点近くノースフェイスの物を
身に着けている訳ですこれが大衆化したブームの到達点
まちがいなくワークマンのフィ~ルドうんちゃら~
ではこうはなれないでしょう・委託個人配達業者に代表される新進肉体労働者
・よその眼をきにする必要がなくなった高齢者には間違いなく普及している実感はあるのですが
この範囲に留まっているのがワークマンなんですよね・・・ -
元古着屋さん より: 2022/12/06(火) 7:18 PM
仰る通りの要因で客離れしてますよねー!
あるのかないのかわからん商品を買いに行くのはめんどうだし疲れますもん補足するとしたら
★アンバサダーの山田さんにもうアイデアがないのでチェンジ
★WORKMANがユーチューバーなどに使われているだけで使ってない
①バズる(程度確度の高い)商品を大量生産
確度上げのために既売商品の限定デザインをデザイナーに
確度上げのためファステリのように外ブランドとコラボなど
②①をユーチューバーなどインフルエンサーにステマ依頼
③本部がFC店舗毎に売れる数+α数、一定期間ブチ込む
④FCで期間中売り切れたら売切スピード&近隣FCの販売動向を加味しつつ在庫数を決め追加
⑤期間が来て余ってるFC在庫は回収しECで販売
⑥場合により②「あの品切の神コラボが再入荷!(ウソ)」行い在庫処分(笑)①が外れたら死亡www
③のポテンシャルをPOSに頼ると(FCが絞ってたぶん)当面は販売ポテンシャルの過小評価になるので④が必要
④の近隣FCの部分はココになかったからアッチの店みたいな顧客の動きをPOSの販売時間で追いつつ仮説思考でみたいなーどうでしょう
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ハマオ より: 2022/12/06(火) 7:46 PM
ワークマンスニーカーを仕事で平日5日毎日使うと
1ヶ月もたないですね
Guだとだいたい2ヶ月から3ヶ月使えます。
1000円位の作業服の化繊のパンツも1ヶ月も経たないうちに
色落ち変色してきます。
確かに安いけど安いだけですね
品質の悪さに消費者がきずいてしまったかもですね自信満々のあの専務も最近余りメディアで見ないですね。
確かセールはやる必要がないと言ってましたが
最近では駐車場にのぼりまで立てて
アピールしてますねnorthはブランドで
ワークマンはスーパーの平場位の差があるのでは -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/12/07(水) 9:17 AM
ハマオ氏>物の悪さに消費者が気づいた
それも「実用品として品定めをする人たち」が気づいた
ピンチです
作業着の世界もブランドが既に確立していて
ワークマンはPB品扱いですPB品は安くても品質がNBと同レベルでないとね・・・
けど販管費に取られて原価を削り過ぎたんでしょうなぁ
このあたりは無印とまったく同じwww東大卒の元商社マンが考える事は
コンサル出身の無印社長とほぼ同じでしょうNB品メインの品揃えの建デポあるいは
現業系の人が多く住むエリアにある個人店に
勝てるわけがないと思いますPB品ならPB品らしく、ヘタなロゴやヘタなマーケティング
を打たないで、原価率を上げる事だけに注力すりゃ
良かったのにね・・・実用品としてみると、今のワークマンはスーパーの平場以下です
GMS平場の衣料品は年中たたき売り価格なせいもあり
確実に「オネダン以上」ですが
ワークマンは確実に「オネダン未満」ですから
防寒 防風JKの裏地が銀色パラダイスなのは
非常にいただけない
昔はユニクロ着ているの隠したかったから
タグがサイズだけになったのは助かった
ワークマンも現状は ばれるの嫌だなぁ
なんばのワークマン女子もVMDもあったもんじゃないしね