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南充浩 オフィシャルブログ

昔よりも金の使い道が増えたから洋服への支出が減らされるのは当たり前という話

2022年11月29日 回顧 3

えてして自分が生まれる前の時代を人間は美化して考えがちだが、30数年前のバブル期も今の若者に美化されすぎているきらいがあると感じる。

根本的には江戸時代を過剰に持ち上げたり、戦国時代を過剰に美化する心理と同じだろう。

バブル期に大学生だった当方からすると、その頃と今と、収入や物価はそんなに大きく変わっていない。初任給もさして変わっていない。

物価は少し上がったが、初任給もその分少し上がっている。バブル期以前と比べると昇給システムは不明瞭で、いつ、どれだけ昇給するのかわかりにくいという点は異なる。バブル崩壊前までは入社何年目で月々何千円昇給するというのが決められていたし、よほど経営が悪化した会社以外はそれを守られていた。

バブル崩壊後は、いつどれだけ昇給するのかわからなくなってしまった会社が多く、その分、消費者心理が縮こまったままという部分は大いにあるだろう。

 

一方、バイトの時給は大幅にアップしている。バブル期のバイトの時給は地方ごとに異なるが600円台~700円台だったが、今は大阪市内では1000円を越えている。

それでいて、洋服の平均価格は下がった。

バブル期にもダイエー、マイカル、ジャスコ、イズミヤ、イトーヨーカドーなどにも安い洋服は売っていた。しかし、色・柄、シルエット、アレンジはすべてDCブランドやトラッドブランドとは似ても似つかない安物仕様で、その差は歴然だった。

現在は、一部の独特な高額ブランドを除いては、縫製仕様や使用素材には差はあるものの、色・柄・シルエット・アレンジにおいては低価格ブランドも遜色なくなっている。

実際にユニクロUの値下がりした無地ウールセーターと、イキったブランドの無地ウールセーターを一瞬で判別できる人間など業界にもほとんどいないだろう。

 

80年代後半からのDCブランドブームによって、ファッションビルだけでなく、百貨店もDCブランド一色になった。当時のDCブランドは高額なうえにバーゲンでもあまり値引きがなかった。何度も書いているがスーツ類は定価が8万円から10万円くらいで、それがバーゲン時には6万円くらいまでしか値下がりしなかった。当方のようなケチでさえ、6万円に値下がりしたアトリエサブのスーツを買っていた。90年代後半になると、4万円に値下がりしたドモンのスーツを買うようになったが、その水準で、定価7000円のジーユーのストレッチスーツと比較しても値段は雲泥の差だった。

その6万円のスーツ、4万円のスーツを初任給やボーナスの時に必ず購入していた。初任給が手取り17万円くらいで残業を含むと20万円になったから、当時は残業したくてたまらなかった。

その3万円で酒を飲みに行って、余った月々の金をプールしておいて夏・冬のバーゲン時に5万~10万円くらい使っていた。

今の若者が時々「バブル期の若者は金を持っていた」という幻想を抱いていることを見かけるが、実際は今と当時ではそんなに懐具合は変わっていない。

それでも当時の若者は金を貯めて高いDCブランドの服を(バーゲンで)買っていた。

 

では当時と現在では何が異なるのだろうか

1、マシな低価格ブランドがなかった

2、ファッションに対する関心が今より高かった

3、カネの使い道の種類が少なかった

あたりではないかと思っている。

 

まず、1についてだが、ユニクロブームが起きたのが98年、ツープライススーツストアの登場が99年なので、それ以前にファッション的にマシな低価格ブランドは存在していなかった。もちろん、そうなろうとしていたチェーン店はファーストリテイリング以外にも多々あって、当方が入社したチェーン店もその一つだったが、結局は各社とも競争に破れて98年にユニクロが大ブレイクを果たす。

必然的にそれ以前は、「トレンドの〇〇」が欲しければ高いDC系ブランドで買うほかなかった。

 

次に2だが、今も洋服の低価格論争が四六時中SNSで起きていることから、それなりに関心は高いのだと思われるが、当時の熱気というのは今よりも高かったと感じている。

そしてこの2は、3とも連動するのだが、ファッション以外の金の使い道が90年代後半以降圧倒的に増えたと感じられる。

まず、携帯電話の登場である。当方が携帯を持ち始めたのが97年だが、2000年半ばくらいまでのガラケーは今のキャリアスマホに比べると月額使用料も機種代金も安く、当方はだいたい月額6000円くらいだった。それでも毎月6000円支払うのは痛かった。それがキャリアスマホが登場するともっと値段が上がった。今は格安スマホプランがあるが、バブル期に携帯電話を持っている若者はいなかった。

また、さまざまなサブスクリプションも挙げられるだろう。当方はこちらのジャンルは詳しくないが、詳しくない当方なりに考えてみると、Amazonプライムやらネットフリックスやらの各種動画配信サービスがある。また一昔前なら有料スマホゲームも盛んだった。さらにいうと、有料マッチングアプリなんていうのもある。

それに加えて、女性ならネイルやエステに定期的に通っているという人も少なくない。当方の新入社員時代にネイルやエステに定期的に通っている女子社員は皆無に等しかった。

さらにいうと、スポーツジムに入会している男女も多いし、あとは各種の習い事なんていうのもある。

 

年金や保険料などの社会保障費の値上がりによって可処分所得が減少しているということ以外にもこれだけの金の使い道が増えている。

いくら使い道が増えようと、収入は急激には増えない。必然的に各人はそれぞれ不要な部分の支出を削らざるを得ない。その時点で削られるのが衣料品代ということなのだろう。

2のように熱意が昔に比べると薄れているということもあるし、1のように、マシな低価格ブランドが増えたから高いブランドをわざわざ買う必要性が減少したということもあるだろう。

当方は完全に1が理由である。

 

このように考えると、今後も新たなサービスは誕生し続けるので、金の使い道は増え続ける一方ということになる。いくらイキった業界人が叫ぼう嘆こうととバブル期のような服の買い方はマス層には戻ってこないだろう。他の使い道に負けないように各社が自らブランドを育てることで自衛するほかない。

 

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/29(火) 10:28 AM

    ネタを使いまわすのがライターなのは仕方ないにしても
    今回は新たな分析の視点がないなぁ感じです

    むかしのモノを知る者としては
    中~高価格帯のモノ自体の劣化も大きいと思います

    いま3万で売ってるニットとバブル時の3万のニットだと
    中身が雲泥の差ですからね・・・

    ハイブランドも同様で、15万で買えるバックだと
    大きさがどんどん小さくなっていますwww

    既製品・プレタの極限クオリティとして
    バブル期のライセンス物は本当に良くできていました

    さしずめ今の中韓ブランドの低価格スマホみたいな
    ものですな

  • とおりすがりのオッサン より: 2022/11/29(火) 10:51 AM

    給料天引きであんまり気にしてませんでしたが、国民年金保険料とかは1989年(平成元年)が8,000円だったのに、2022年現在だと16,610円と2倍以上になってるんですよね。
    健康保険料も自治体、個人の年収によって違いますが、ネットで拾った数値だと一人平均で1989年が4,828円だったのが、2016年で7,861円と1.6倍になってるそうです。
    少子高齢化が進んでるから仕方ないんでしょうけどね(´・ω・`)

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/30(水) 8:56 AM

    ・年金は免除(でも給付は半額貰える)
    ・健保は住民税非課税

    これでも月平均で8000円は出費がある訳で・・・
    プラス消費税で5000円はいくから
    超低所得者でも「月額1.3万」は納税しないといけない

    ふつーに稼いでると恐ろしいですよ

    手取30万の人だと月額そーだな7万ぐらいは
    納税しなきゃいけない

    「手取額」は20年前より確実にマイナスになってます

    税金の増え方に給料の増え方が追いつかない

    しかも金回りがわるいから
    上司なり取引先がメシおごってくれないwww

    なんていーますかね、こういう世情だと
    「遊びのある服」「実験した服」が出現しづらいんですよ

    それがつくづく残念です
    オールベーシックみたいな回帰路線だと
    物としてもファッションとしても停滞しますし

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