
メンズの低価格パターンオーダースーツ市場規模は大きくないという話
2022年11月28日 決算 3
2018年ごろから、紳士スーツの有望な新規市場として「低価格(パターン)オーダースーツ」が期待を集め始めたが、当時から今に至るまで当方にはその理由が全くわからない。
全く売れないとは思っていないが、落ち込み続けているメンズ既製スーツに取って代わるような大きな市場とはなり得ないだろうと考えていることは、その当時から今まで変わっていない。
各社の価格にばらつきはあるが、だいたい3万円強くらいからパターンオーダースーツができるというのは、大きな魅力であることは間違いない。既製スーツでもチェーン店で3万円弱くらいするのだから、値段がさして変わらないのであれば低価格パターンオーダースーツを作るというのは魅力的である。
当方もその昔、オンリーで3万8000円くらいで1着作った。
値段がさして変わらないなら低価格パターンオーダースーツを作ろうという消費者は一定数いるとは思うが、既製スーツの落ち込みを完全補填できるほどの人数はいない。これが当方が疑問を呈していた理由である。
また世の中的にはビジネスシーンでのドレスコードは緩和され続けている。
ジャケットとスラックスが別々なジャケスラスタイルは一部の業界を除いてほぼ認められているし、ジャケット+カジュアルパンツもそれなりに市民権を得ている。そうなると、既製スーツの売れ行きは低下するのは当然であることは言うまでもないが、だからと言って、低価格パターンオーダースーツの需要が劇的に高まるはずもない。スーツ自体を着用しなくなっているのに、低価格パターンオーダースーツを作ろうという人が増える道理がない。
試しに1着作ってみようかという人はいるかもしれないが、そこからリピートして何着も作る人はほとんどいないだろう。何せスーツ自体の着用回数が減っているのである。スーツ自体の着用回数が減っているのに低価格パターンオーダーを何着も作ろうというそんなおかしな考え方をする人は絶対的に少ない。
だから当時から「メディアの持ち上げ方」「メディアの有望視」は違和感しか感じなかった。
低価格パターンオーダー市場というのはたしかに形成できるかもしれないが、1社あたりの売上高は最大で100億円くらいではないかと考えられる。
理由は、以前にも書いたが、この分野で最大手と見なされている「グローバルスタイル」を展開するタンゴヤの売上高がいまだに100億円を突破していないからだ。
タンゴヤの2022年7月期決算の資料を見てみよう。
期末店舗数は30店舗
売上高は90億9300万円(対前期比9・2%増)
営業利益5億4800万円(同77・7%増)
経常利益5億5900万円(同75・0%増)
当期利益3億4300万円(同40・4%増)
と大幅な増収増益となっている。1店舗あたりの平均売上高は3億円ということになる。
2020年春からのコロナ禍の影響もあって、過去にも一度も売上高100億円を越えたことがない。2020年7月期は当初は100億円越えの期待がかけられていたが、コロナ禍による営業自粛によって100億円は未達に終わった。2023年7月期は売上高105億5300万円を見込んでいる。
仮に来年7月末時点でこの計画が達成されたとして、その後、どんどん売上高が伸び続けるかというと当方は疑問である。ジワジワと伸びるかもしれないが、売上高200億円突破はほぼ不可能ではないかと見ている。達成できたとしてもそれは10年以上先のことになるのではないか。それほどに100億円突破後の増収はスローペースにならざるを得ないだろう。理由はスーツ需要が減少し続けているからである。
先日、「がっちりマンデー」というテレビ番組で「儲かる〇〇」と題して某パターンオーダースーツブランドが特集されたが、官報への決算報告を見るにおいて、全く儲かっていない。
株式会社FABRIC TOKYO 貸借対照表の要旨
東京都渋谷区
純利益:▲8億4302万9000円
利益剰余金:▲29億2144万2000円
総資産:9億5443万7000円https://t.co/9Frh9OQMPS— 官報決算データベース (@kessan_db) October 28, 2022
売上高や営業利益は報告されていないようなので不明だが、当期損失は8億4302万9000円となっており、利益余剰金もマイナス29億円となっている。ちなみに官報を見る限り、毎年赤字が続いている。
ご存知の通りに、当期利益というのは、本業の儲け(営業利益)とは別だが、最終赤字が続いている会社が「儲かる〇〇」であるはずがない。
ちなみに資本金の額を7億5759万6155円減資して資本金5000万円にしている。資本金1億円未満は中小企業扱いとなり税制優遇が受けられるのでそれが目的ではないかと考えられる。毎日新聞の手口と同じである。
何会社の日々の運営手法にも問題があるのかもしれないが、これほど当期赤字を毎年続けており、利益余剰金がマイナスになっているような状態では、普通に考えれば低価格パターンオーダースーツという市場は有望どころか、衰退市場と捉えられてもおかしくない。
低価格パターンオーダースーツという市場の需要は絶対にゼロには今後もならないものの、かつての低価格既製メンズスーツのように1企業の売上高が1000億円にも達するような大きな市場では決してなく、スモールビジネスでしか対応できない市場だと考えた方が良いだろう。
業界人のおかしな妄想が覚めて手堅いビジネスを展開されることを願ってやまない。
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comment
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とおりすがりのオッサン より: 2022/11/28(月) 12:52 PM
利益剰余金29億円とか、もう普通には回復出来ないレベルなんじゃないっすかね。可哀想。
私、何度か書きましたが、某経営コンサルタントに訴えられた時に外見だけでもハッタリかまそうと、イージーオーダー店でスーツ作ってから、その後にカジュアル用のコットンスーツ2着とジャケット1着、スラックス2本オーダーしました。
高いからそんなに頻繁には買えませんが、一回サイズが決まるといちいち裾上げとか袖の長さを直したりとかしないで済んで、身体に合った服が作れるのは良いっすね。
とはいえ、そのお店も都内に3店舗のみの展開で、いつもお客さんは多いですが今以上の規模には出来そうもないですね。 -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/29(火) 9:43 AM
むか~し「カジュアルフライデー」とかありましたでしょ?
その頃を知ってる人間としては、しみじみ感慨モードです
今では、内勤が基本で社外の人間と応対しない場合は
ほぼ全ての業界で非スーツOKじゃないですか?社外の人間に会う場合でも、関係構築済の取引先なら
非スーツな業界が既に多いように見えますそして、ここからが大問題なのですが・・・
スーツ着用が未だに義務なのは、面識ゼロの社外の人間に
会う仕事=つまりいちげんさん相手の高額セールスwww
になりつつありますつまり、インチキ臭く、低所得な商売
代表例がチンタイの営業マンなどでしょう
(そうだ!いちぶのアパレル関係者もそうだったww)裏かえすと、スーツ着用が義務の仕事は
もはやステイタスにならない仕事なんですよwwwしたがってそういう仕事をする層相手の商売だから
単価が取れず、けど話題になって有頂天で
販管費をかけ過ぎてアップアップwwこのあたりが20年前のクラシコうんちゃらプチブ~ム
との大きな違いです本格靴も同様の構図になっています
というわけで、ワタクシは月星の5000円ブーツに
セブンの800円下着とGMSの1000円アウターを着て
最高のパホーマンスを出すべく仕事をするのですたww
(でもクロゼットには手縫のJKTがいちおうあるヨwww)
職場が公務に近い所です。その立場から書きます。スーツ着用のシーンが多いですが、作業着と同じです。着てればいい感じです。それってここだけの話と思っていましたが、結構な職場がそのようですね。メンズファッションなんて物好きの極みという感じです。ただしメンズ館に行くような人たちは、昼飯をカップラーメンにしても、欲しい服を買うようですけども。オンリーは生地が他のオーダーよりもデザイン性があって当方は好みですね。カシヤマも作ってみたいですが。韓国に帰国する際にでも。