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南充浩 オフィシャルブログ

今後、30年前の消費マインドはには戻ることはないだろうという話

2022年11月22日 お買い得品 4

89年に大学に入学した。

91年にバブル経済が崩壊したのだが、実際のところ、95年頃までは不況感は多少あるものの、大不況という感じはなかった。

97年に山一證券と北海道拓殖銀行が倒産して、にわかに不況感が強まったが、それでも百貨店の婦人服売り場は97年に史上最高売上高をたたき出している。

96年・97年はレディースでいうと、アムラーによるバーバリーブルーレーベルブームだったし、メンズでいうとビンテージジーンズブームで、どちらも平均価格何万円という商品で、それが飛ぶように売れていたのだから、今の衣料品からすると考えられないような時代だったといえる。

98年からユニクロのフリースブームが起き、ここからユニクロの大躍進が始まるわけだが、やはり97年の金融倒産が相当衝撃的で、消費者は一気に節約モードに入ったと考えられる。

 

この辺りから大衆の価値観が変わったといえる。

当方が大学生だった89年~92年までは、男子学生がステイタス性を感じていたことの1つに自動車を持つことがあった。

当方は自動車には全く今も興味がないが、当時の同級生たちは、バイトで頭金の50万円とか100万円を貯めたら、すぐにローンで自動車を買っていた。

その当時のイケてる同級生が買った自動車がスポーツカー?みたいなやつで、スープラとかレビンとかそういう類の車種だった。

97年以降、この手のスポーツカータイプはメッキリと減っており、代わって道路では日産のキューブとかマツダのデミオみたいなそこそこ見た目がかわいい感じで実用的な自動車が増え、スポーツカーに乗っているのはイキリくらいになってしまったと感じる。

 

洋服に関しては、98年にユニクロが全国ブランド化するまでは、低価格のイケてるブランドというのはほぼ存在しなかった。辛うじて、レディースの鈴屋とか鈴丹とかキャビン、リオチェーンあたりがなんとか認められていた程度だろうか。

それでも今ほど低価格ブランドに市民権があったわけではない。

 

物価は今とそんなに変わらない。今より少し安い程度である。

バイトの時給は当時は今よりも格段に低い。大阪だと最低時給は1000円を越えているが、当時は700円台だった。それにもかかわらず、男子学生の何割かはバイト料とローンを組み合わせて何百万円もする割に実用性に乏しいスポーツカーを買っていたわけだし、男女ともにバーゲン値引きされても数万円もするDCブランドを買っていたのだから、一体どうやって資金繰りをしていたのか、今から思うと不思議でならない。

4つくらい年上の業界人に改めて尋ねると「当時はローン地獄やったで」という答えが返ってきたのだが、恐らく他の大学生も同様だったのだろう。

ちなみに当方は堅実経営をモットーにしているので、カネを借りてまで高い自動車や高い服を買いたいと思ったことは今まで一度もない。

 

 

当時と今で大きく変わってしまった要因は

 

1、高い物(服、車)を是が非でも買いたいという人が減った

2、「高い物=良い物、カッコイイ」という価値観ではなくなった

3、低価格ブランド衣料の見た目(デザイン、シルエット、色柄、アレンジ)が向上した

4、浪費が美徳ではなくなった

 

あたりではないかと思う。

当方は堅実経営を19歳から続けているが、例えば、同級生たちは初任給を高い店で飲み食いしてあっという間に散財していたが、今の新入社員でそんなことをする人は少数派だろう。当方の次男は就職してから「いかに生活コストを下げて暮らせるか」に挑戦しているという。この辺りは教えていないのに親に勝手に似るものである。

 

 

衣料品に関していえば、オフィスで着用するチノパンを例に挙げてみると、正直ジーユーの1990円あたりで何ら問題がない。特に第三者から見て違和感は全くない。細かいディテールにこだわればやっぱり違いはあるだろうが、ディテールにこだわらない人にとってはどうでもいいことである。ジーユーのサイトから画像をお借りしたが、これとそっくりなチノパンが某大手セレクトショップのサイトにもあるが、値段は2倍以上違う。似たような物なら安い方で買うという人が多くいてもそれは当然だろう。

 

また、故スティーブ・ジョブズ氏がいつも黒無地のシンプルなタートルネックセーターを着用しており、あれはイッセイミヤケの商品だそうだが、各部の細かい寸法などの違いにこだわらなければユニクロの2990円の黒無地タートルセーターを着ていても全く変わらない。そういう違いがあまりわからない服に対してむやみにカネを費やしたくないという層が相当数現れるということは、経済合理性から考えると当然の選択だといえる。

 

アパレル業界・百貨店業界にも「仕事用のスラックスはユニクロの感動パンツで十分、感動パンツの類の方がメンテナンスが楽でイイ」という人が実際は相当数存在する。

感動パンツは現在3990円(ちょっと値上がりした?)だが、最近ワークマンが発売したプレミアムスーツパンツは2990円である。ワークマンのこのパンツは黒、チャコールグレーの2色しか展開がないが、今後は色柄のバリエーションが増えれば、価格が1000円安いこともあって、感動パンツの市場を浸食するのではないかと思うが、それは置いておいて、感動パンツやプレミアムスーツパンツのような合繊主体の低価格スラックスの方が便利で快適でしかも安いから、仕事着として業界人にも支持されている。

 

それに対してアンチも存在するが、アンチが掲げる「ブランド衣料の利点」は、ふわっとしたムード的なモノが多く、正直なところ大衆には響きにくいし理解しづらい。ちなみに当方も理解できないし、全く響かない。

恐らく、日本人の消費マインドが89年当時に戻ることは今後もないだろうということを前提として衣料品ビジネスを組み立てるべきではないか。

今回はなんだかとりとめのない話になったが、先日、久しぶりに同年代と30年前の買い物について盛り上がったので、改めてまとめてみた次第である。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2022/11/22(火) 12:57 PM

    ジョブズのあの服、「ジョブズT」とか言われてるらしいっすね。
    ジョブズは100着注文したけどイッセイミヤケには在庫が無く、似た生地で作って送ったらジョブズに突き返されたとかなんとかw

  • 大阪のオバチャン より: 2022/11/22(火) 11:46 PM

    私は南さんより少し年下の氷河期世代です。
    バブルの頃はまだ中学生で、バブルの恩恵はあまり受けていませんが、親がDCブランドの服をたまに買ってくれました。
    MILKやジェーンマープルなど、可愛くて夢のある服でした。
    それを千円で買ったセーターと合わせたり、オシャレが楽しかったです。
    大学を卒業して就職なんて全く決まらなくて、派遣に登録していましたが、給料の中から衣服に使う割合は高かったですね~
    20年前は付き合っていない友人でさえも、男性が奢ってくれたので、一人暮らしで洋服を買いながら破産しなかったのだと思います。
    懐かしい時代、不景気でも楽しかったのはなぜでしょう?

    今みたいにネットでマスコミが将来の不安を煽るからではないでしょうか?
    みんな貯金はそこそこにして、消費に使えば景気は上向くかもしれませんね。

  • 読者 より: 2022/11/23(水) 1:56 AM

    元百貨店販売の友人が今は霞ヶ関の国家公務員に転職して働いている。
    彼は感動パンツを着用しているが、化学繊維なのでデスクワークだとおしりが擦れて
    テカりまるで中学生のようだと言っていたw
    まあ安いのでテカったら捨てて買い替えたら良いのだけど、まあ普通にテカったの履きつづけるよねえと
    言っていたので、日本の貧しさが国の中枢にも浸透してますなw

    先日さんまのから騒ぎが復活放送してなかなか懐かしかったが、同番組が終了した理由が
    男女交際が地味な時代になってネタになるような飛び抜けた人がいなくなったことだそう。
    バブル期というのはいろんなジャンルでパワーがあって面白かった時代なんだろうと思う。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/25(金) 8:44 AM

    >当方、堅実経営がむかしからモット~

    の人がガンプラに万単位でカネ使ったりしますかwww

    南サンが書くところの「堅実経営」とは

    ・自分が心底興味がないマストレンドには
     決して乗らない

    という意味では?

    とはいえ、車は買わない南サンでもバブル期の
    501やMA-1をつまみ食いする機会はあった訳です

    マスブームが起きない起きないといわれてはや25年!
    のこの業界ですが、過去の巨大ブームとりわけ90年代
    前半までは、若かりし頃の南サンのような

    「ふく?親支給のきんじょのスーパーの服でいーや」

    という人たちが参入したからこそ成り立っていました

    そして当時の市場では501やMA-1はGMSの平場で
    売っていたコピー品とは明らかに異なる価値があった

    しかし、その後のブームはどうでしょう?

    ブルーレーベルブームにしても物は今のユニクロ以下だし
    限定No入りTシャツ3万円也のウラハラブームはいうに
    およばずです

    「自分が知らない世界を知るちょうど良い機会」

    として利用できるブームが今は無くなりましたよね
    ここ20年のブームは

    「うまくいけば売上倍増うっしっし」

    ここ10年の(プチw)ブームもどきは

    「スマホでつんつくさせてひっかけて物買わせちゃえ」

    という印象ぐらいしかしないです

    真面目に物を売る気があるんでしょうかね?

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