百貨店は都心大型旗艦店しか残れないだろうという話
2022年11月11日 企業研究 6
そごう・西武の売却が概ね合意したという報道が始まった。
感想を言うなら、無難なところに落ち着いたというしかない。それ以上でもそれ以下でもない。
セブン、米ファンド・ヨドバシ連合にそごう・西武売却へ: 日本経済新聞 (nikkei.com)
セブン&アイ・ホールディングスは百貨店子会社のそごう・西武を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却する最終調整に入った。売却額は2000億円を超えるもよう。家電量販店大手のヨドバシホールディングスはフォートレスと連携し、東京・池袋や千葉にある百貨店内に出店するとともに、店舗不動産の取得などを通じて資金拠出する方向だ。セブン&アイは日米を軸にしたコンビニエンスストア事業に経営資源を集中する。
近く決定する見通し。セブン&アイはそごう・西武の全株式をフォートレスに売却する一方、そごう・西武子会社の生活雑貨店、ロフトはグループ内にとどめる。
とある。
そごう・西武という百貨店は現在、西武が6店舗、そごうが4店舗しかない。西武6店舗のうち2店舗は百貨店と一部量販店が入った郊外型ショッピングセンター形式(名称がSCとなっている)ので純然たる西武百貨店の名称は4店舗しかないということになる。
で、このうち、都心大型旗艦店というのは、西武池袋店とそごう横浜店しかない。渋谷にも西武はあるが、西武に限らず渋谷の百貨店は弱い。
ハッキリ言って、そごう・西武が自力で再建するのは至難の業だし、セブンアイも何か秘策があるわけでもない。秘策があるなら時間はたっぷりあったのだから何かしら実践しているだろう。
米・フォートレスとヨドバシは
関係者によると、フォートレスは西武池袋本店(東京・豊島)やそごう千葉店(千葉市)などの主要店舗にヨドバシを誘致する。ヨドバシは店舗不動産の一部を取得して営業するもようだ。
と説明されているが、百貨店にファッションガー丸出しのイキリブランドを大量導入したところで、目に見えての集客は改善しない。効果が表れやすいのは池袋と横浜だけだろう。
その他の地方・郊外店は導入したところで効果は表れないし、そもそもイキリブランド群が寂れた地方・郊外店への導入に賛同するはずもない。
となると、目に見えて即効性のある施策はヨドバシカメラの導入だろう。百貨店よりヨドバシカメラの方がよほど集客力が高い。
ヨドバシ側も池袋と横浜への導入に期待していると考えられる。
そして、セブンアイが腐っても鯛だと思わせられるのが「ロフトはグループ内に残す」という判断で、極めてまともである。
ブランド衣料品を主体と考えがちな百貨店が今後マス層に支持されることはないが、雑貨のロフトは、現在の雑貨ブームを鑑みるとまだまだ利用価値は高い。
梅田ロフトのように個別店舗を出店することも可能だし、ファッションビル内やショッピングセンター内へのテナントとしても出店ニーズはある。また下手をすると他の百貨店への出店ニーズも生まれやすい。
となると、まともな経営陣ならロフトをセブングループに残すのは当然である。
他の百貨店グループが買収することはできないのか?という百貨店ファンからの声もSNS上では見られるが、他の百貨店グループも地方・郊外の小型店は不要である。
今回に先立って、そごう神戸店と高槻西武が阪急百貨店に譲渡されたが、その際、阪急は集客力の弱い神戸西神店の受け入れを断っている。あくまでも自社の電鉄沿線にあり駅近くに位置する神戸店と高槻店だけしか要らなかったわけである。
そごう神戸西神店は「神戸市西区」に位置しており、近畿以外の地方民からすると「神戸市」なので集客が見込めると感じるかもしれないが、神戸市と言っても西区や北区は相当に寂れていて決して都心ではなく地方・郊外と変わらない。阪急もそんな寂れた地方・郊外店まで面倒を見る余力はない。
阪急に限らず他の百貨店グループも同様である。自社の地方・郊外店ですら撤退したいのに他社の地方・郊外店なんて面倒を見るはずもない。
ヨドバシに限らず、他社に売却したところで、欲しいのは池袋と横浜くらいだろう。渋谷は商業施設にするよりもオフィステナントにした方が儲かるのではないかとも思う。
国内百貨店の今後だが、百貨店各社が80年代のような勢いを取り戻すことはないだろう。各百貨店の都心旗艦店だけが残り、地方・郊外の中小型店はほとんど消えることになるだろう。採算の取れている店舗だけがわずかに残るだけになる。
中元・歳暮の需要だって、焼き菓子の詰め合わせとかコーヒーの詰め合わせ程度なら、各百貨店のネット通販で済む時代になっている。
これまで百貨店が得意としてきたファッション衣料だって、郊外型ショッピングセンターで十分である。品質ガーという人もゼロではないがかなり少数派でしかない。品質ガーが多数派ならシーインなんて世界規模で売れるはずがない。
そもそも、地方・郊外百貨店は中小型である。
郊外大型ショッピングセンターを見慣れている地方民からすればかなりショボい空間と映る。都心の大型旗艦店を見慣れている人からしてもショボい空間としか映らないだろう。
そうなると、ほとんどの人は近隣の大型ショッピングセンターへ行くか、都心大型旗艦百貨店へ行くかのどちらか、もしくはその両方となり、わざわざ小規模な地方郊外百貨店で買うことはない。
そごう・西武も売却された後は地方・郊外店のほとんどは採算に応じて順次閉店して行き、数店舗が残る程度になるだろう。
そして都心大型旗艦店はヨドバシカメラとの併設店として幾ばくかの期間は存続できるのではないかと思う。
当方は百貨店に対して何の思い入れもないし、何のノスタルジーもないから、淡々と観察するだけのことである。
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comment
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とおりすがりの元・服売り より: 2022/11/11(金) 6:18 PM
この件に関して、「ヨドバシカメラが西武そごうを買収する話、ヨドバシカメラがカメラ→家電→PC→ホビー→アウトドア・酒と取り扱いを広げてきたのが、呉服屋が百貨店になる過程と相似で歴史は繰り返すんだな、と感慨深い」というツイートを見かけて「あぁ言われてみれば」と思っておりました。
https://twitter.com/lm700j/status/1590295808120827905
ヨドバシカメラが西武を買収…はちょっと意訳すぎますけど、それはさておきヨドバシカメラやビックカメラもいずれは他の似たようななにかに取って代わられてしまうのかもしれませんね。
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BOCONON より: 2022/11/12(土) 2:03 PM
”とおりすがりの元・服売り” 氏同様,家電量販店もすでにその先を考えるべき時期に来ている気が僕もしますね。それはヨドバシAkiba を見れば分かる。明らかに大きすぎる,高すぎるビルを建ててしまったせいで,自社の売り場はともかく,7Fより上のテナント用フロアを埋めるのに苦労しているのは見れば誰でも分かりますからね。実際レストランフロアは撤退する店が続出して一時話題になったくらいだし,まあそりゃフツー「ヨドバシカメラで優雅にランチ/ディナータイム」なんて思いませんわな。
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BOCONON より: 2022/11/12(土) 3:16 PM
ファッション関連もわざわざ「ヨドバシAkiba に入っているショップで買いたい」なんて思う奇特な人がそんなにいる訳もない。リーガルの靴も,元々あまりお安くはない上に,あそこにあるのは品揃えの良くない小さい店だし,その他比較的お安いカジュアル服の小さめのお店もスーツ量販店も,いつも客が入っていなくて,寂しいし存在意義が不明である。タワーレコードの店もなくても誰も困らない。ヨドバシカメラ自体に似た売り場があるし。
…こんな塩梅だから,フロアが歯抜け状態になっては見苦しいので,たぶんビルのオーナー(誰だか知りませんが)も家賃を安くして何とフロアが埋まるだけの店舗を確保しているのでしょう。
最近うちの近所もこんなんばっかしだな・・・で,池袋西武がヨドバシカメラになっても似たような悲惨な事になるのは必定だろうと思う。上記 ‘南ミツヒロ的合理主義者’ 氏も言うように,確かに売り場のつくりはヘンだけれど,田舎デパートよりはずっと広いし,11階まであるビルをヨドバシカメラだけで埋めるのはどう見ても無理,百貨店フロアを残したところで,そんな「つはものどもが夢のあと」のような哀しい場所なんて見るに忍びないから少なくとも僕は行きたくない。
屋上の水すましの見られる小庭園やかるかやのうどんは惜しいから,なくなる前にいっぺん行きたいですが。まあヨドバシは良く言えば “ドミナント戦略” ,身も蓋もない言い方をすれば「池袋でもどこでもビックカメラやラビヤマダと潰し合いじゃあ!ということなのでOKなのでしょうが,どうもなんだかなあ・・・
今のイオンモール,あるいはいにしへの百貨店みた様に「”子供を安心して遊ばせられる場所がたくさんあって,買い物も食事も出来て,一家で一日中楽しめるような場所” はもう存在し得ないのだろうか,都心では?」と僕は思わずにはいられないのでした。 -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/14(月) 9:45 AM
小売業態の中でも後発であまりイメージが良くないセクタは
高感度の頂点であるデパ~トに憧れがあるんでしょう、なぁ・・・元服売りな人がいうとおりで、今のビックとヨドバシは
デパートの5‐7Fをひとまとめにした業態になっています
(むかしは並行物のブランド品も売ってましたw)ただね、ロビンソンやプランタンのような先行事例を
よく研究すべき、だったな・・・渋谷西武もそうだけど、小売の中でも古い業態であれば
あるほど、新参者は高コストの売場しか買えないんですよそして、商売には、ならない
そしてドンキやむかしのビックで売っていた
怪しい並行モノのブランド品やそれこそブランディア
あたりが入る池袋西武になるんでしょうな・・・そして最後は中華資本へ・・・
ハロッズと似たようなもんですよ・・・(注:イギリスでは百貨店そのものが小売の中でも
後発の業態です。ちなみに怪しいアラブ人の持ち物) -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/14(月) 1:28 PM
百貨店では従来ぜったいに扱わなかった新物を
扱っていたのが池袋西武です(委託やテナントではない)関連会社のCDのWAVE、美術書や現代思想に強いリブロ
が有名ですが、単価が高い洗濯機やオーディオ、
スポーツ用品は西武の社員が売っていました労組がコメントを出してニュースになりましたが
イケセイはヨドバシの人間を売場に入れたくない筈
量販店ごときの人間は嫌いでしょうしねそして1~3Fはそのままで4~7Fを
「高級家電売り場」に変えると思いますスマホPCはアップル製品だけ
オーディオはマッキントッシュなど
日本メーカーの家電は
美容モノかデザイン性が高い高級機種だけ~のような売場です。で、売場に立つのは西武の社員
んで、びんぼー人は道渡ったビックかヤマダ
あるいはパルコへどうぞヨドバシネームをいっさい出さず
イケセイネームオンリーで家電を売れば
それなりに売場が回る可能性はありますただいかんせん高コストな売場ですからね・・・
家電量販店がイケセイは・・厳しいと思いますよ
逆に横浜はいけるのでは?
イケセイは上物がとにかく古いので
天井が低いしフロアの形も悪い
池袋は駅から何分よりも
売場の総面積が勝負の決め手になります
そのテストケースが書店戦争でした
これで池袋に家電量販店最大手3社が出揃います
しかし、3社の売場面積を合計しても、
地方のヤマダ電機1店舗と同じになるかどうか
というレベルですから
ただね・・・治安が悪い上オーバーストアな
ターミナル駅に大きく投資して儲かる可能性は
限りなくゼロに近い
マンハッタンもどきでマンションにコンバート?
でも要するに天井が低い昭和3x年築のボロビルです
だ~れも改革できずに20年
とうとう死がやってきましたか・・・
あと10年もすれば戦後の池袋のように
「街全体がボロ市」に戻るのかもしれません
あの東口・西武村がパルコを含め
ここまで没落するとはね・・・