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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品・服飾雑貨が「水商売」だと改めて感じられたという話

2022年11月9日 売り場探訪 1

先日、東京から出張に来られた方と久しぶりにお会いしたのだが、その席上

「国内はマストレンドが5年間くらいほとど変わらないですね」

という話しになり、例えば「MA-1タイプのブルゾンなんてもう何年間流行っているんですかね」となった。

たしかに、ユニクロもジーユーもワークマンも毎年発売していて、各店頭を見る限りそれがある程度かなり売れている。

国内マストレンド市場を見ている限り、マストレンドのスタイルも着用されているブランドもこの数年間ほとんど変わらないように感じるが、よくよく思い返してみると微妙な変化もある。

 

まず、アネロのリュックを背負った人の数がめっきり減ったことだ。

2015年頃から急速にあのアネロのリュックを背負った女性が増え始めたが、2022年現在、ゼロではないにせよあの頃に比べると着用人数はかなり減っている。

女性のリュックスタイルが廃れたわけではない。リュックは依然として活用されているがアネロを背負った人が激減したといえる。

2017年に心斎橋に直営店をオープンしたが、この頃から2019年末までがピークだったと考えられる。

2020年以降はめっきりと着用者数が減った。一つにはコロナ禍によるインバウンド消滅はあるだろう。しかし、背負っていたのはインバウンド客ばかりではなく日本人も背負っていたので、原因がコロナ禍だけではないと考えるのが論理的だろう。

実際に沈静化を如実に感じたのは、2019年か2020年のことである。2014年以降ずっと手伝ってきた在庫処分店にアネロのリュックがそれほど個数は多くはないが入荷したのである。

在庫処分店に商品が入荷されるということは相当に在庫がダブついていると考えられる。この店に入荷したということは他の店にも入荷している可能性は高いし、他の在庫処分業者に売られている個数も相当数あると考えられる。

在庫処分業界で、例えば通常のアパレルのようにユニクロ、しまむら、ジーユーほどの突出した巨大業者は存在しない。ということは、ここに流れてくるということは他業者にも在庫が流れているという可能性が非常に高い。この時に当方は「アネロブームも終わった」と感じた。

そこから2~3年が経過して現在に至るのだが、現在、大阪市内で観察していてもアネロリュックを背負っている女性は数少ない。

ともすると、5年前にはあれほど大ヒットしたリュックがまるでなかったかのようになっており、当方すら「アネロ」というブランド名をわざわざ考えることは少なくなっていた。

 

これと似たように感じるのが、ドン・キホーテのPB衣料品である。

2017年にユナイテッドアローズ出身の小田切正一氏が立ち上げに携わったと大々的に報じられた。「ポストユニクロ」「ポストジーユー」としてかなり期待を込めて記事を掲載した業界メディアが複数あったことを今も鮮明に記憶している。

 

ドン・キホーテがアメカジとアスレジャーのPB強化、スケールメリットで“驚安”実現

 

当時の某インフルエンサーも盛んに言及していたことも記憶している。

この頃、ワークマンは今ほどには注目されていない。

 

人間は飽きる動物だからユニクロとジーユーばかりでは飽きてしまう。当方のような人間でさえユニクロとジーユーの商品ばかりでは飽きてしまうから、ポストユニクロ、ポストジーユーの低価格ブランドの出現には非常に興味があった。

当然、ドンキのPBはその最有力候補と当方も含めた多くの人の目には映った。あくまでもその当時は。

 

しかし、2019年にもなるとすっかりとその存在を当方は忘れてしまっていた。ちょうど2020年以降にアネロの存在を忘れ去ってしまったのと同様にである。

恐らくドンキのPBのピークはスタート時から2018年末か2019年初頭にかけてで、その後はどうなっているのかは不明である。一度売り場に確認に出かけてみたい。

ドンキの場合は、日々の報道を見ていると、その後、社長が交代したり元社長がインサイダー取引で逮捕されたりと、経営方針が大きく変化したのではないかと推察される。

社長が交代するというのはドンキほどの大企業であっても社内体制や方針が大きく変わる。また20年からのコロナ禍で変わらざるを得なかったという部分もあっただろう。また元社長のインサイダー取引逮捕ということも変化の1つの要因にはなっているだろう。

 

結局は2022年現在、ポストユニクロ、ポストジーユーの国内低価格ブランドは、売上高1000億円を突破したワークマンに絞られたといえ、ドンキのPBは完全に人々の脳裏から消え去ってしまった。

 

勢いを保ったまま大手ブランド、定番ブランドへと成長するブランドもありながら、一方でアネロのように短期間のブーム後に突然沈静化してしまうブランドもある。華々しく始まった割には短期間で忘れ去られてしまうドンキのPBのようなブランドもある。

この違いは一体何なのだろうか。

衣料品・服飾雑貨のブランド化を確実に確立できるという手法は知る限りにおいては存在しない。家電製品や自動車よりもその「ブランド化」は難しく不安定ではないかと当方は感じる。そこにこそ衣料品・服飾雑貨ビジネスの面白味を感じる人もいるのだろうけれど。

消費者側の嗜好も変化するし、供給側のリーダーもメンバーも交代する。その結果、これまで売れていた物が急速に売れなくなる。商品自体が変わったから売れなくなることもあるし、変わらなさ過ぎて売れなくなることもある。

だからこそ、「ファッションは水商売」と言われるのだろう。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/09(水) 12:52 PM

    >ポストユニクロ、ポストジーユー

    この業界特有のうすっぺらさ・ですねぇ・・・
    ウニクロGUのポジションに代わる事が出来る
    ブランドなんざハナからある訳ないでしょうに

    ウニクロGUと並行できる存在の・が正確でしょう

    ここ10年ぐらいずっと求められているのは
    一時的な浮気先wとしてのブランドです

    今のところ、まだ決定打がない印象があります

    南サンみたいにセレクト2ndレーベルを
    セール時につまみ食い程度が
    現実的なところか?

    ただ、GU以上に最大公約数的な商品が多いのが
    今どきのセレクト。南サンみたいに劇色系を
    買うぐらいしか活用法がない・・・

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