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南充浩 オフィシャルブログ

「安い服が大好き」というのが世界的な本音ではないのかという話

2022年11月2日 トレンド 3

唐突だが、当方はメディアや自称有識者が語る「Z世代は消費する際にエコかどうかをとても気にする」という説はあまり当てはまらないのではないかと思っている。

理由は世界的にSHEIN(シーイン)が売れていることだ。

全世界での売上高が2兆8000億円に到達したと伝えられ、日本国内売上高は一説によると「数百億円」と言われている。

ブランド直販開始からたったの10年足らずでここまで売れるようになったということは、いかに世界的に安物が好まれるかという証明である。

もちろん、ファッション性ガーとか、短サイクル投入ガーとか、その他の要因もあるが、これが1着1万円とか2万円もするような服ならネット通販のみでここまで売れるはずもない。

ネット通販のネックは、サイズが合わない、着てみたら似合わない、というところにある。当然返品か交換するということになるが、この作業がどんなに簡素化されても実際はめんどくさい。返品や交換しないのが最善なのである。これが1万円、2万円以上するような商品なら購入することに慎重になるが、数百円とか1000円程度の服なら、「失敗しても寝間着にすればいい」とか「最悪は捨てても惜しくない」というふうに割り切ることができる。

シーインが短期間で爆発的に伸びたのは、圧倒的安さが最大の理由だと当方は考えている。そして、日本人がフィーバーするよりも売り上げ規模から見ればアメリカ人を筆頭とする海外の国がその安さにフィーバーしているということが分かる。(全世界売上高2兆8000億円のうち日本の売上高は数百億円。日本以外での売上高が2兆7000億円強ということになる)

 

在庫処分品を数百円に値引きして投げ売ることは理解できる。後生大事に残しておいても洋服が値上がりすることはない。産業廃棄物として有料で捨てるくらいなら投げ売りをした方が財務的にはマシである。これは全ブランドに共通している。しかし、シーインのように商品によっては定価が数百円というのは、いかにその製造コストが安く抑えられているかである。

シーインの商品の製造コストがかなり安いということは、商品の定価から考えれば明白である。そこでこんな記事が掲載された。極めて当然の報道である。

 

SHEINの製品を作る労働者は1日18時間働き、報酬は1着わずか6円…英チャンネル4が潜入調査の動画公開 | Business Insider Japan

 

SHEINの服を作っている中国の工場の労働者は、1日に18時間働くことが頻繁にあり、週末はなく、休日は月にたった1日であることがイギリスのチャンネル4とThe i newspaperの潜調査入でわかった。

  • 最新の調査によると、SHEINで販売される服を作っている労働者は、1着につきわずか4セント(約6円)しか得ていないという。

調査によると、1つ目の工場では月4000元(約556ドル:約8万2000円)の基本給をもらっている従業員は、1日少なくとも500着を作るが、初月の給料は保留にされたという。労働者の多くが、1着わずか0.14元(約2セント、約3円)の手間賃を稼ぐために苦労している。2つ目の工場では、労働者は基本給がなく、服1着を作るごとにわずか0.27元(約4セント:約6円)を受け取ることがわかった。

また、1つのミスをすると日給の3分の2の罰金が科せられるという。

 

とのことである。

これらの協力工場に対してシーインからの指示があったのかどうかはわからないが、シーインの提示した定価で販売するとなるとこれくらいの抑えつけは必要にならざるを得ないだろう。

 

また圧倒的に速く安く商品を販売するためには商品の品質も低い物も多いようで、シーインの商品については「お値段以上」という評判のある品番もあるが、「値段相応に雑な品番も珍しくない」という声もある。

当方が教えているファッション専門学生は1年近くシーインで買い物を続けているが「たまに値段以上の物が来るが、値段相応にチープな物も珍しくない」と評している。

ウェブ上では「良い物が当たるかどうかわからない」という意味を込めて「シーインガチャ」と呼ばれることもあるそうである。

 

で、結局はこういう物が日本以外の国々で2兆7000億円強も売れているということはいかにサステナブルなんて気にもしていない人が多いかということになる。またポップアップストアの心斎橋店に連日行列ができるということは日本でも気にもしていない人が多いということにもなる。

 

以前のブログで、シーインに対するクーリエジャポンの記事から購入しているカナダ人のコメントを引用したことがあるが再度引用する。

 

激安ECサイト「シーイン」がアメリカの若者から絶大な支持を得ている理由 | エシカルじゃなくても爆買いする

 

仮にもしシーインが子供を強制的に働かせているなど児童労働法に違反しているという報告があれば、「私は絶対にボイコットする」。けれど、サプライヤーが労働法に違反して、その労働者が超過労働分のお金が支払われていないと訴えているという話には、それほど心を動かされていないと明かしている。

 

とのことであり、これが世界中の人間の偽らざる本音だろう。

日本人に建前と本音があるように欧米人にも建前と本音がある。

 

またアンケートの設問や集計に対しても疑問はある。「エコやサステナブルに関心はありますか?」と設問した場合、「無い」と答える人の数は少ないだろう。だが「とてもある」と答える人の数も少ないはずで、多くの人は「少しある」とか「聞いたことはある」とか「少し心掛けている」と答えることが多い。この「少しある」「少し心掛けている」という人が曲者で、「ごみをポイ捨てしない」とか「ごみは分別収集している」とかその程度でも「少し心掛けている」と答えていると考えられる。

そうした「少しある」と「とてもある」を合計して「〇〇%の人がエコとサステナブルに関心がある」とまとめてしまうから関心のある人の比率が異様に高い数値を示すことになるのだろう。

シーインの商品が安いのはそういう製造コストに抑えているからで、この世に魔術は存在せず、何事に対しても「タネ」はあるわけである。

 

シーインほどの低価格はいかがなものかと思うが、ただ、洋服をたくさん売りたいのならある程度の安さは必要不可欠だとも当方は思っている。高い服をたくさん売るなんていうことはラグジュアリーブランドを除いては世界のどこの国でも実現されていないので、ナンセンスの極みだと思っている。

 

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そんなシーインの商品をどうぞ~♪

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/02(水) 1:25 PM

    ファストファッションの功績として

    「どんなに値段が高い服でも
     そこそこの出来のコピー品でよければ激安で作れちゃう」

    というのがあると思います。ただし、同時に

    「ファストファッションの中で
     パターン・縫製がそこそこ良いものは1/3以下」

    なのも間違いない。したがって物を手に取る必要がある訳で
    その方便としてポップアップストアと思いきや、違う
    品番数がばく大だから、期間限定店頭で実際に見分できる
    アイテム数など、たかが知れています

    日本人相手の商売としては、やはり品番数を絞って
    手堅くモノツクリする以外ないなぁと思いますね

    マァでも話題作りが上手いのは間違いないです

    びみょーにシークレット感・ナゾ感を漂わしておいて
    世界中で期間限定店舗をやって、チラ見せを繰り返す

    ちょっと違った方向性ではありますが
    「ファッションの最先端」であるのは間違いない訳で
    したがって「話題性作り」がとても重要な世界です

    大阪では2時間行列ができた!なんて報道されたあたり、
    広報担当者の思うツボでしょう

  • ハマオ より: 2022/11/02(水) 1:44 PM

    高校の娘が買ったものを手に取って見て見ましたが
    これを服と呼ぶには私には出来ないですね
    ゴミ以外言葉見つかりません。
    こんなゴミをかわいいとか言って喜んでいる娘を見ていると
    10年後の日本のアパレルは絶滅してますね

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/18(金) 6:46 PM

    とうとうこのHPの広告にSHEINが登場!

    しかも選択クリックしないタイプ・
    つまり強制的に閲覧させられる広告枠です

    SHEINをディスる南サンの文章を読もうとすると
    SHEINの広告を見せられる
    という不思議な状態になっておりますwww

    SHEINの物が粗悪なのは周知の事実

    このHPを読めばもっと実態を正確に掴めます

    それでもSHEINが売れるという事実を考えると
    品質・きごこちよりも、
    デザイン・入手のしやすさ・話題性を
    好む人が一定数いるという事なのでしょう

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