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南充浩 オフィシャルブログ

現在の科学技術では「あちらを立てればこちらが立たず」という状態のエコ問題

2022年10月27日 トレンド 2

40年前とか45年前は日本も公害が酷かった。

現代史でいうと、復興が進み経済発展し始めた1950年代後半くらいから増え始めていたが、1970年代から80年代前半にはまだ結構公害は頻発していた。

当方が小学生の頃、夏休みには毎日光化学スモッグが発生していて、役場から放送が流れていた。琵琶湖も夏場には青潮だとか赤潮だとかが大量発生し、琵琶湖から水を引っ張っている大阪府北部の水道水はカビ臭くて飲めたものではなかった。

80年代半ば以降、様々な技術改良によって我が国から公害は消え始め、現在ではほとんど無くなっている。

そういう体験をしているので、環境対策の重要性は理解できるが、最近の世界的な潮流は少し行き過ぎだと感じられ、それに盲目的に追従している我が国の産業に危機感を覚える。

特に繊維・アパレル業界は猫も杓子もエコだとかエシカルだとかSDGsだとかに血眼だが、売らんがために無理やりそういうものを名乗っている場合も増えてきている上に、そもそもの理論として成り立たないのではないかと思えるケースもあり、首を傾げたくなるものも多い。

リサイクル〇〇素材が大流行りだが、リサイクル〇〇しか使いませんというような宣言をしているブランドも少なからず見かけるが、リサイクル〇〇素材はそんなにたくさん生産されているのかという問題がある。またリサイクル〇〇を増やすためには、リサイクルの原料となる製品が必要となるため、リサイクル原料となる製品の増産も必ず起きる。

繊維業界では、ペットボトルを原料としたリサイクルポリエステルの需要が爆増しており、回収したペットボトルでは足りないので新品のペットボトルを砕いてリサイクルしているという噂話も根強く残っている。

服は全部古着にすれば良いという意見もあるがこれも行き過ぎで、新品の服が無くなれば古着は生まれなくなる。

結局は古着にせよリサイクル〇〇にせよ、必ず新品とセットになっている。

 

今回は繊維・アパレルではないが、NHKがエコ問題について珍しく(笑)有益な特集番組を放映したのでご紹介したい。

「そのエコ、本当ですか?」企業に正面から聞いてみると…… – クローズアップ現代 – NHK

 

今回のこの番組ではパーム油と使い捨てプラカップの2つを検証している。

まず、パーム油だが、パーム油自体は環境に良いのだが、パーム油を採取するために象が住む森林が伐採され、象の住環境を破壊しているという。

 

決定的だったのは、現地に派遣した調査員からの報告でした。

“プランテーションの開発による熱帯林の減少は間違いなく起きている”

“野生動物にも影響を与えている”

“しかし現地の人たちにとって、アブラヤシの産業は既に欠かせないものでもある”

 

パーム油が良いからと言って、採取しすぎれば現地の森林を破壊し、ひいては動物の生存にも悪影響を及ぼす。他方で現地人にとっては生活の糧なので全廃することも難しい。

これはパーム油に限らず、多くの「エコ」とされる物が同様ではないか。

最近はだいぶと過剰なメッキが剥がれてきたがメガソーラーも同様で、たしかに発電することのみにおいてはクリーンかもしれないが、あれだけ山を切り開いてしまえば、野生動物の住処を奪っている。猪やら熊が人里に降りてこざるを得ない。メガソーラーに大賛成しながら野生動物がかわいそーなんていうのは寝言でしかない。

 

次に使い捨てプラカップである。

使い捨てプラカップとステンレス製のリユースカップを比較している。

実験では、使い捨てプラスチックカップとリユースカップについて、1回の利用あたりに排出されるCO2を計算して比較。その結果、リユースカップを100回使っても、使い捨てプラスチックカップと比べて1回の利用当たりのCO2排出量が多い場合があると分かったのです。少し言い換えると、リユースカップを100回使用したときのCO2排出量÷100と、使い捨てプラスチックカップを1回使用したときの比較で、リユースカップの方がCO2排出量が多い場合がある、ということです。

使い捨てプラカップとリユースカップのCO2排出量の比較グラフ

もちろん、この実験方法が唯一絶対正しいというわけではないだろう。違う実験方法もあるはずで、それを使うとまた異なる結果が生まれるかもしれない。

 

しかし、使い捨てプラカップは絶対的な悪玉ではないということになる。

重要なのはここだろう。金科玉条のごとくプラカップを絶対悪かのようにとらえて全廃することは決して正義ではないということになる。

 

またこれに続けてこんな特集もある。

身の回りのエコグッズ 本当にエコな使い方をまとめました – クローズアップ現代 – NHK

 

今や買い物に欠かせない存在となったエコバッグ。

でも、このエコバッグも私たちが手にするまでの間にCO2を排出しています。

プラスチックのレジ袋の代わりに何回エコバッグを使えば、ようやく“エコ”と言えるのか?

中谷さんの答えは「50~150回」。(出典:UNEP (2020))

取材班は「思ったより多く使わないとエコとは言えないんだな」と感じましたが、いかがでしょうか。また、数字にも幅があります。

 

とある。

50~150回使わないとエコバッグのCO2削減効果はないということになる。毎日、食材を買うとすると50日~5カ月は使い続けないといけないということになる。

また、個人的に言うなら、各ブランドがこぞってエコバッグを生産してるということは少なからず売れ残り在庫が発生しているということになり、各社の資金繰りを圧迫していることもあるだろう。売れ残りが生じているのにどんどんとエコバッグが量産され続けているのは果たしてエコなのだろうか?疑問でしかない。

ちなみに当方は昔からレジ袋を貯めており、その貯めたレジ袋を使い、破れたり裂けたりすると捨てるというスタイルを取っている。あと1年くらいは貯めたレジ袋でスーパー万代の買い物ができるはずである。

 

今回、この番組では繊維・アパレルの取り組みは取材されていないが、似たような事例は業界内には日常茶飯事であるのではないかと推測している。

結局は、人間が分子から物を作りだし、不要になった物を分子に分解するという技術が開発されない限りにおいて、物には質量保存の法則が働くため、何かの有害な物質を完全にゼロにするのは不可能だということである。パーム油の例ではないが、あちらを立てればこちらが立たずなので、エコとかSDGsもほどほどにしておくことが現時点では最も賢明な判断だということになる。

気になる方はNHKの全文をお読みいただきたい。

 

仕事のご依頼はこちらからお願いします~↓

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そんなパーム油の製品をどうぞ~

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 comment
  • BOCONON より: 2022/10/27(木) 9:15 PM

    以前電車のシートをリサイクル/廃物利用したバッグがかなり高価だった話をしましたが,高価だということは手間も電気も喰うということだから,結局はふつうに製品作るより CO2 をたくさん輩出する,ということですね。リサイクル商品なんてものはおよそこんなんばっかしだから,無印良品の再生コットンなんてものもまあ「自己満足したい人はどうぞ」といったところ。

    現在の地球のすべての人たちが腹いっぱい食べられるようにするには地球の土地のほとんどを開発しまくり,農地か牧草地か太陽光発電設備だらけにしなきゃ無理,というわけで SDGs なんてのは始めから絶対に実現不可能なスローガンですね。
    みんなそんな事がわからないのか,わからないふりをしているのか,あるいは単に何も考えていないのか,いづれ不可解な話であります。

    ヴィーガンや動物の権利運動などもそうですが,いっそ「要するに天敵もいないせいで人類の人口が多くなりすぎたのがあかんのや。美しい地球を取り戻すためには,なんなら人類なんて滅亡してしまえばよろしい」と正直に言えばいいのに・・・と思っていたら,一部の先鋭的な活動家は本気でそんな事を考えているらしい。Oh,くわばらくわばらw

  • とおりすがりのオッサン より: 2022/10/28(金) 11:40 AM

    あと40億年とかすると、太陽の活動で地球の水は蒸発するくらい熱せられてほぼすべての生物は絶滅すると予想されているそうで、最後は膨張した太陽に地球ごと飲み込まれるらしいので、動植物を存続させるには人類がもっと科学力は発展させて、太陽系外で暮らせるようになるくらいにならないとダメなんすよ、きっと。
    だから、SDGsとか生ぬるいことを言ってちゃダメで原発とかバンバン造って科学力を発展させるのが、真の持続可能な社会となるはずっ!(・∀・)

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