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南充浩 オフィシャルブログ

正反対の手法で日本再上陸する「フォーエバー21」と「アメリカンイーグル」

2022年9月22日 未分類 0

秋の彼岸の入りに合わせたのでもないだろうが、9月21日、大きなニュースが3つあった。そのうちの1つであるスノーピークに関してはどうでもよいので放置する。(笑)

2つは、同じ内容である。フォーエバー21とアメリカンイーグルの日本再上陸である。

このうち、メディアの注目度合はフォーエバー21の方が高いと感じる。かくいう当方ごときにまでテレビ番組がコメントを求めてきたほどである。

FOREVER21/日本再上陸、アダストリアと23年春から出店開始 | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

「FOREVER21」のマスターライセンスを伊藤忠商事が保有し、アダストリアの子会社Gate Win(ゲートウィン)がサブライセンス契約を締結している。アダストリアは韓国発セレクトショップ「ALAND」などで海外ブランドのライセンス事業のノウハウを積み重ねており、今後もライセンス事業を強化していく考えだ。

 

とある。要するに、伊藤忠商事が国内の商標権を取得し、それをアダストリアの子会社がライセンス生産するという仕組みで、店舗運営もアダストリアが行うことになる。

商品の8割はアダストリアがライセンス生産し、出店先はショッピングセンターで旧フォーエバーのような路面大型店ではなくショッピングセンター内の中規模店となる。中期的な売り上げ目標は100億円と伝えられている。

また中心価格帯は4000~5000円でユニクロよりも少し高く設定されている。

 

これについて、外野からわかる範囲でいうと、非常に現実的な方針だと当方は見る。

もちろん、これから再スタートするブランドなので皮算用通りに売れるとは限らない。どんな不測の事態が起きるかもしれない。そういう不安定要素を排除して考えるとかなり堅実だといえる。

 

まず、旧フォーエバー21は2009年のファストファッションブームで注目されたものの、2015年以降は如実に売れ行きが鈍って苦戦傾向にあった。それは晩年「セール品2枚目無料」という投げ売りをしていたことからも明らかである。セール品を2枚買うと、2枚目が無料になるということは「不良在庫が多すぎるからタダでイイから持って帰ってくれ」ということである。それほどに不良在庫が多かったという証明である。

 

 

旧フォーエバーに限らず、外資ファストファッション勢が2010年代後半に失速し、ほとんどが撤退に追い込まれ、残ったZARA、H&Mでさえも大きく売上高を減少させてしまった最大の理由は

・使用素材と縫製仕様があまりにもチープで雑

・日本人の好みに合わない商品

という2点だった。ブーム当初は舶来コンプレックスと物珍しさと手の届きやすい価格帯で話題となったが、そのブームは5年間くらいしか続かず、リピーターを一定数以上に増やすことができなかった。これは旧フォーエバーに限らずZARA、H&Mにも共通している。

そして旧フォーエバーは店内の棚や陳列がぐちゃぐちゃで整理整頓が酷く、日本国内の他社ブランドと比べるとその劣化は一目瞭然だった。

 

アダストリアがライセンス生産することで、素材と縫製の雑さと日本人の好みに合わない商品という問題点はある程度解決するだろう。また店舗運営ノウハウが蓄積されているアダストリアなので、店頭の整理整頓も改善されるだろう。

価格が少し上がるのは別段サステナブルガーとか、大量生産の否定とか、全然そういうことではなく、品質を向上させた結果上がらざるを得ないということで、この価格帯はちょうどアダストリアの既存ブランドとほぼ同等で、アダストリアが最も得意とする価格帯で運営しやすいということになる。

そして100億円という目標規模もアダストリアが得意とする規模で、この程度ならユニクロ、ジーユーに飽きた層を取り込むことで実現可能だといえる。

 

一方、メディアからの注目が薄いアメリカンイーグルである。(笑)

「アメリカンイーグル」が本格再上陸 実店舗が約3年ぶりに復活 (fashionsnap.com)

10月に渋谷店と池袋店の2店舗のオープンを予定。

アメリカンイーグルは、2012年4月に日本に初上陸。同年の上陸時には青山商事の連結子会社であるイーグルリテイリングが日本事業を手掛けていたが、今回オープンする新店舗は米国のアメリカンイーグルグループが運営する。

とのことで、旧アメリカンイーグルは青山商事が手掛けていたが、今回はアメリカ本社が運営する。

フォーエバー21とは正反対である。

旧アメリカンイーグルが苦しかったのは、撤退が2019年12月末ということで、この時期、コロナのコの字も出ていない時期であり、インバウンド需要も含めて消費は活発な時期だった。この時期に売れていなかったということは相当に厳しいといえる。コロナ禍を言い訳として使うことができない。本当に売れていなかったということになる。

 

同じ日に再上陸を発表したフォーエバー21とアメリカンイーグルだが、手法は正反対となる。

フォーエバーは現地企業によるライセンス生産と店舗運営、アメリカンイーグルは米国本社直轄。そして前回の上陸時は正反対だった。

今回の再上陸でどちらが吉と出るかだが、当方はアダストリアがライセンス生産運営するフォーエバー21ではないかと思っている。

米国直轄のアメリカンイーグルは現在のGAPと同じように日本では苦戦傾向になるのではないだろうか。

品質云々は置いておいても、日本人の好みでない商品、いかにもアメリカンなカジュアルだけの品揃えとなることが容易に想像でき、それは日本で売れにくいことはすでにGAPが証明している。

 

蛇足になるが、アメリカンイーグルが日本再上陸を計画した理由は、恐らくアメリカ本国の好調さによるものだろう。

世界アパレル専門店売上高ランキング2021トップ10 : ファッション流通ブログde業界関心事 (cocolog-nifty.com)

これを見ていただければわかるように、米国ブランドが軒並み大幅に売上高を伸ばしている。そのため、アメリカンイーグルは再上陸を決意したし、本社直轄で日本店を運営するという強気を打ち出したのではないかと考えられるのだが、当方はGAPと同じ轍を踏むのではないかと見ている。

 

まあ、そんなわけで、正反対の手法で再上陸したフォーエバー21とアメリカンイーグルだが、どちらのやり方が日本市場では正しいのか、今後は定点観測してみたいと思う。

 

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