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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロとワークマンでは値上げに対するメディアの報道姿勢が異なる不思議さ

2022年9月21日 メディア 0

衣料品も値上げの報道が続いている。

しかし、報道内容や見出しが恣意的過ぎて記事では実態がよく把握できない場合が数多く見られる。

先日、ワークマンの価格戦略について発表されたが、同じ内容でも記者や媒体によってこうも表現方法が異なる。

 

ワークマンが23年8月まで価格据え置き PBの主力商品で

一方、

ワークマン/23年8月まで人気PBの96.3%価格据え置き、10製品は値上げ | 流通ニュース (ryutsuu.biz)

 

とある。

不思議なことはWWDを始め多くのメディアが「価格据え置き」と見出しで言い切っていることである。

しかし、WWDにしろ記事中では

 

PB製品の売上高の8割を占める売れ行き上位300製品を対象に発表した。300製品のうち260製品は価格据え置き、30製品は廃番、10製品のみ値上げする。

 

と書かれてある。

 

となると、事実に近しい見出しは流通ニュースの方だし、当方が見出しを作るとするなら「ワークマン一部商品値上げ、その他は据え置き」くらいになる。

恐らくメディア側では

 

「96%もの商品が価格据え置きだし、価格据え置きと断言した方が読者に伝わりやすい」

 

という建前を主張するだろう。本音は恐らくは「断言した方が販売部数・PV数が稼げる」だろうけれど。

しかし、案の定、SNS上では「価格据え置きなのか一部値下なのかわかりにくい」という声が多数見られ、ワークマンという企業や衣料品業界への予備知識の無い方が記事を読むと混乱してしまうのも当然の結果ではないかと思う。

 

それにしても解せないのは、先だって発表されたユニクロの値上げと、今回のワークマンの値上げに対する多くのメディアの報道姿勢の違いである。

このブログでも何度か言及したが、ユニクロが値上げを発表したのは5品番である。今回のワークマンは10品番の値上げと残り96%の価格据え置きを発表している。

ユニクロは5品番の値上げを明言したが、その他は明言しなかった。実際今秋物では当方が店頭で確認した限りにおいてはGジャンとMA-1ブルゾンは値上がりしていた。この2品番は先に発表された5品番以外の商品である。

となると、このブログで以前書いたように「ユニクロは5品番しか値上げをしない」のではなく、「5品番の値上げしか発表しない」と考えた方が事実に則しているといえるだろう。もちろん、据え置き商品も多々あるのだが。

 

しかし、メディアはユニクロに対して盛んに「ユニクロ値上げ」と書き立てた。ユニクロが先日、自社サイトで「値上げの理由」をわざわざ追加で発表せざるを得なかったのは、メディアの報道姿勢によるところが大きいと言わざるを得ない。

当方が、ユニクロの今秋物を店頭で見る限りにおいては、ワークマンの96%据え置きには及ばないものの、かなりの高確率で商品価格を据え置いており、本来であれば、メディアが「ユニクロ値上げ」と大合唱するほどのものではないと感じる。せいぜいが「一部商品を値上げ」程度が妥当で真っ当な報道姿勢である。

 

一方、今回のワークマンは流通ニュース以外のすべてのメディアの論調は概ね「ワークマン価格据え置き」である。

見出ししか見ないで本文を読まずにギャーギャー文句を言う人は世の中には多いから、そういう人たちにとっては「ワークマンは価格据え置き」と認識されてしまうわけで、4%の10品番を値上げするという事実からは反しているし、そういう認識を多くの人に与えるのは危険な行為である。

正確に数えて計算したわけではないが、当方がざっとユニクロの売り場を見た限りにおいてはユニクロだって現時点では85%くらいの商品は価格据え置きとなっているように感じるから、「ワークマンが価格据え置き」となるなら、ユニクロだって「価格据え置き」と報道しても良いのではないかと思う。百歩譲っても「ユニクロもほぼ価格据え置き」くらいだろう。

個人的には、ほぼ似たような内容であるにもかかわらず、企業が異なるだけで報道姿勢が異なるというのは、あってはならないと思っており、やや飛躍するかもしれないが、近年メディアからの取材や報道を嫌う人が増えているのはこういうメディア側の姿勢によるところが大きいのではないかと思う。言ってみればメディアが嫌われるのはメディアの自業自得でしかない。

 

さて、盛んに値上げ報道がされ、消費者の購買意欲を削ぐことがメディアの目的なのではないかと思うほどだが、こと低価格衣料品ブランドにおいて、個人的な感想を言えば、さほどに支出が増えた印象は無い。

以前もこのブログで書いたように一斉に値上げが報じられたユニクロでさえも8割以上の商品価格は据え置かれているし、不振品番は値下げされて売られている。たしかに2019年までのような気前の良すぎる値下げは少なくなったが、それでも金曜日から月曜日までの期間限定値引きでは1000円くらい値下がりすることも珍しくはないし、今夏向けの中軽衣料の売れ残り品は1000円未満にまで値下がりしている物も多い。

当方はそういう商品を好んで買うため、著しく衣料品支出が増えたとは感じられない。

 

結局のところ、いくら定価を値上げしようがその価格で売れなければメーカー、ブランド側は値下げ販売せざるを得ないわけで、値上げをしたからと言って売上高が増えることが確約されたわけでもないし、粗利益高が増えることが確約されたわけでもない。売れ残り品番が多く出てしまえば、却って売上高が減少する可能性も低くないし、粗利益高が減少する可能性も高い。

値上げをするかどうかが重要なのではなく、どのようにして値引きをあまりせずに売るのかということが重要になるわけなので、一般メディアは諦めるとして、業界メディアや経済メディアくらいはそのあたりの販売施策や販促支援策などを報道し考察すべきなのではないかと思う。それが業界メディアや経済メディアの役割ではないだろうか。

 

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