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南充浩 オフィシャルブログ

商品価格面と利便性を考えると「貧しくて困っている人」が古着をわざわざ買う理由は無いという話

2022年9月20日 トレンド 3

以前にも書いたが、メンズのカジュアル服(ビジカジ含む)を買おうと思うと、ユニクロとジーユーでほぼ事足りてしまう。あとはワークマンとかアダストリアとか、場合によってはリーバイスとかそのあたりを混ぜれば何となく小マシな恰好が出来上がる。

当方が20代~30代前半ごろまでは、めちゃくちゃダサくて安いジャスコ、イズミヤの服(青山、はるやまのスーツを含む)か、小マシだが高いDCブランド系の服か、しか存在しなかった。レディースでも鈴丹だとかキャビンだとかそういう低価格チェーン店はあったが、今のユニクロやジーユー、しまむらほどには「ファッション衣料の一部」としては扱われていなかったと記憶している。

もちろん現在でも高くて変わった服は存在するが、マス層は「小マシな服」が欲しいとは感じるが、「変わった服」が欲しいとはあまり感じない。当方も見た目や年齢に応じてそこまで「変わった服」を欲しいとは思わないし、それが安いのなら試してみるという手もあるが、高いのなら尚更買う必要性を感じない。

結果的にユニクロあたりということになってしまうのだろうと思う。そういう消費者に支えらえてユニクロ、ジーユー、しまむらで国内市場の1兆5000億円ほどを占有するようになっている。

 

コロナが始まった時期から古着人気の高まりが取りざたされるようになったが、何も目新しいことはなくて、95年のビンテージジーンズブームのときも古着人気はすごかったし、その後も、ファッション専門学生の間では安定的に古着購入者があった。今回はコロナ禍の始まりとほぼ同時期に何年かぶりに古着人気が再燃していると感じるのだが、再燃した理由は大きく2つあると思っている。

 

1、先述したように超大手の専有化が進み、それ以外のめぼしい選択肢が古着くらいしかなくなったこと

2、古着は激安ではないが、ブランド物に比べると割安感があるため

 

である。

1については先述した通り、当方でさえタンスの中身の7割くらいをユニクロとジーユーだけで占めており、ハッキリ言って飽きている。毎シーズン新型が投入されるから何となくそれでも買っているが、これ以外の選択肢があまり思いつかない。ブランドが多数存在することは知っているが、同じショッピングセンター内に展開している他ブランド商品と比べても同じ価格帯だとユニクロの方がマシに見える物が多い。

で、2につながるのだが、古着は激安ではないが、他ブランド物に比べると割安感がある。さらにいうなら、デザイナーズブランドとかラグジュアリーブランドと比べるとかなり安い。

となると、そこそこの値段で量産品ではない物を選ぶとなると、「古着だ」ということになるのではないかと思う。

 

今回の古着人気についての考察で最も良質な記事をご紹介したい。

【記者の目】古着人気で広がる輸入古着店 輸入量は過去最高、目立つ積極策 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

詳しくは全文をお読みいただければよいのだが、めんどくさいと言う人のために抜粋したい。

まず、世間の妄説の中には「古着人気はサステナブル(エコ)意識の高まり」という意見があるが、当方はそれはほとんど当てはまらないと思って眺めている。

 

サステイナビリティー(持続可能性)の意識の高まりが、古着にとって追い風になるとの声もあるが、海外古着店の現状を見聞きする限りでは、そこまでには至っていない。

 

記事でもそのように指摘している。ついでにいうと、古着をよく買う専門学生と日々接していても環境への意識が並外れて高いとは全く感じない。

次に古着人気についてだが、この記事が優れているところは、具体的な輸入数量と20年以上にもわたるグラフを提示しているところにある。

 

財務省の貿易統計によると、「中古の衣類その他の物品」の輸入量は、21年に最高の8701トンになった。それまでで年間輸入量が最も多かったのは05年の8082トン。22年は1~6月の速報値が前年比12.3%増の4995トンで、金額は52億4600万円(46.4%増)だった。

 

とのことで、グラフを見てもらうと分かるように、95年と2005年がピークでそれを過ぎると激減しており、10年くらいかけて徐々に輸入量が増えている。2021年は大幅に増えているが、これまでの推移と照らし合わせて考えるとこのまま右肩上がりに増えるということは考えづらくて、早ければ来年、遅くても2~3年後にはピークアウトして輸入量は減り始めると考えられる。

一口に「古着人気」というものの、21年の輸入量は05年とほぼ同等で、金額ベースもほぼ同じだ。一方、95年の古着人気は数量はそこまで多くないが、金額ベースでは突出して高い。恐らく、95年の古着人気は「高額ビンテージジーンズ」に支えられたものであるため、数量はそこまで伸びなかったが金額ベースは大きく伸びたと考えられるのではないか。

 

先日、久しぶりに小規模オリジナルブランドを3年くらい前から展開し始めた方とお話した。もちろん当方よりも10歳以上若いのだが、古着に関して「決して安くはないが、ブランド品に比べると安いし個性的な商品を掘り出せることもあるからその辺りが人気なのではないでしょうか」と語っておられた。

2020年以降の古着人気に関して「日本人が貧しくなったから」「ユニクロでも高すぎるから」という妄説があるが、古着店での販売価格を見ているとそれは全く当たっていない。なぜなら、物にもよるが、一般的に古着の店頭販売価格はアメリカ村あたりのドカジュアル店であってもジーユーの定価と同等か少し上で、中軽衣料はユニクロの定価とほぼ変わらない。となると、貧しくてユニクロも買えない人らが古着を買えるはずがない。

本当に貧しくて困っている人なら、ジーユーの値下げ品、ユニクロの投げ売り品を買った方がずっと理にかなっている。

そして、大都市都心部にしかない古着屋よりも自宅の近くにも店舗があるユニクロ、ジーユーの方がずっと出向きやすい。さらにいうなら、古着屋よりもユニクロ、ジーユーの方がネット通販機能も充実している。

となると、商品価格面から考えても、利便性から考えても「貧しくてどうしようもない人」が「わざわざ」古着なんてものを買うことはあり得ないのである。よほど非効率的にしか物事を考えられない人を除いて。

 

若者、特にそこそこファッションに興味のある若者がわざわざ古着を買うのは、ユニクロ・しまむら・ジーユーの寡占化に対する反発(忌避)、それでいて価格は手の届きやすいという2点によるところが大きいと考えられる。さらにいうなら、繊研新聞の記事でも触れられているように元々はネット通販に向きにくい古着(量産品ではないから、ささげの頻度が高まりやすいため)だが、ネット通販機能の拡充という利便性の改善も手伝っているのではないかと考えられる。

 

今回の古着人気も遅くとも2~3年後にはピークアウトし、10年~15年かけてまた人気が盛り上がるというサイクルを繰り返すのではないかと考えた方が賢明だろう。

 

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 comment
  • でこぽん より: 2022/09/20(火) 5:56 PM

    ちょうど服がないのでユニクロいかなきゃと妹に話したら、オフハウスならブランド服が200円とかで買えるのでそれでほぼ間に合わせていると言っていたので、そういうルートもあるかと。そのオフハウスの服で二子玉に通う心臓があるのがすごい。

  • BOCONON より: 2022/09/21(水) 12:07 PM

    今回の記事読みながら以前オフハウス,モードオフに行った時の感想を書こうと思っていたら,もう書いている人がいたw

    でこぽんさんの言う通りで,古着屋とひとくちに言っても,東京も西の方のオサレ古着屋と違って御徒町のモードオフや大宮 BOOKOFF PLUS ,〇谷ハードオフの衣料品コーナーなどはもう本当に低所得者向きな感じで,正直に言うと僕には “ゴミの山” にしか見えず「いくら安いったって誰が買うんだ,こういうの??」でしたが,なるほど子供服などはすぐ着られなくなるから安いのは助かるのでしょうね。昔は「子供に着せるのにどこの子が着たのかわからない古着なんて…」と言う親が多かったものですが。

    昔と言えば(今話題の)AOKI 秋葉原や近所の青山の店頭等にはよく客寄せに(どこから仕入れるのか)ディスカウント品 ≒ 売れ残り商品のようなものを並べていて,よく外国人労働者が来てたし,掘り出し物も結構あった。今はそういう商品はネットで売った方がお金になるらしく,とんと見かけない。だいいちディスカウントストアなんてもの自体あんまり見かけなくなった。あっても実質リサイクルショップであります。

    どうやら貧乏でも楽しく暮らし,買い物も安く済ませたりいろいろと得をしたいならスマホは必要不可欠な時代になったようである。僕も貧乏みたいなものだが「スマホ自体が高価だからそんなもの買う金があるなら本や腕時計でも買いたい。安上がりな人生はイヤだね」と思ってしまう。馬鹿丸出しですね。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/10/05(水) 10:45 AM

    半分業界人らしい嫌らしい見方を披露します

    ウニクロGU着用者でも、ほんとうの貧困者とふつーの人
    そして金持ちはひとめで区別がつきます

    ほんとうの貧困者:着用頻度高杉・洗濯ヘタ杉で
    ボロ化・伸び・退色がすさまじい。カバンはエコバックの
    ボロいやつ比率がほぼ100%

    ふつーの人:主要アイテム中半分以上がGUウニクロレベル
    アイテムごとの購買時期が一定でないため、劣化度合に差あり
    カバンはネームバッジのみのライセンス品かボロくなったヴィトン等

    金持ち:GUウニクロは入っているものの、着用回数50回を超えた物は少なく
    どのアイテムでも退色・劣化度合いがそろっている
    カバンは購入1年以内のエコバックが多くブランド物は実は少ない

    ハードオフモードオフでルミネで売ってるレベルの商品を買ってる層は
    ふつーの人と貧困者の中間ぐらいですかね

    彼ら彼女らも耐久性がない服の・さらに中古を着てるので、
    一目瞭然・見ればすぐ「あ、古着アサリ者だ!」だとわかります

    2001年以降に作られた服は、ネーム問わず古着で買う意味は
    ほぼないと思いますよ

    なぜなら2022年現在、作りたての服が安い値段で日本全国どこでも
    手に入るからです

    そして物としては、ルミネで売ってる物とウニクロGUの中身は
    完全に同レベルです

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