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南充浩 オフィシャルブログ

アパレルが生産発注時期を過剰に引き付けすぎると工場にはデメリットしか生じない

2022年9月12日 品質検査 1

皆さんこんにちはー!
USです。

 

少し前ですがTwitterのタイムラインに、ワールドのサステイナビリティプランが紹介されている記事が流れてきました。繊研の記事なのでTwitterを使っていない方でもご覧になられた方は多くいらっしゃると思います。

 

ファッションとサステイナビリティー】ワールドの「サスティナビリティプラン」 衣料品廃棄をゼロ化、他社商品の「循環」も進める

その中で、SDGs推進室長の言葉として、次のような言葉が紹介されていました。

 

「当たり前だが作り過ぎない。余計なものを仕入れない。できるだけ引き付けて物を作るのが一丁目一番地」

 

 

OEM・ODM業者さんからするとかなり厳しい言葉で、「これ以上数が少なくなったり、引き付け発注になるのはもう無理やー」という声が聞こえてきそうです。(実際にそういう心の叫びのツイートを多数見かけました)

 

引き付けて物を作ることで、「作り過ぎない、余計な物を仕入れない(or作らない)」というできるだけ高い精度の発注をしたいという思惑(?)があるのでしょう。また、ギリギリまで市場の動向を見て数量を決めることができるのはコロナ感染状況を加味したり、トレンドを追いかけることできるので発注者にとっては大いにメリットになることでしょう。

 

しかし、引き付けて物を作るということは言い換えると、納期に余裕がないギリギリのタイミングで発注ということになり、対応する業者はタイトなスケジュールで生産し、滞りなく円滑に納品しないと間に合わなくなります。

余裕のないスケジュールで物づくりをしないといけないということは、修正する事や考える時間の余裕がなくなるので、生産側にとってはデメリットになります。

 

当然、納期までの余裕がなくなると品質面にも影響が出てきます。

検査という視点においてもアパレルメーカーが自社基準を持っている場合は、その基準にあわせて生地検査(場合によっては製品検査も)を行い、自社基準に適合した物かどうかを確認し、それに合致した商品を売り場に並べています。(前述の会社においても基準が設けられています)

 

引き付け発注の場合の生地検査をするタイミングは、生地を裁断した時点で、生地の切れ端を検査用に提出する場合が多いと思います。(もちろん生地屋さんが定番品として在庫を持っている生地は事前に生地屋さんが試験を取っており、すでに生地検査が済んでいる場合もあります。そういう生地ばかり使用していれば安心ですが、そういう生地ばかりではありません。)

このタイミングで生地検査に出すということは、生地を裁断して服を作り始めている、もしくは殆ど出来上がったタイミングで生地検査の結果が判明するということになります。

この段階で生地に問題が見つかったとしても、別生地への差し替えは物理的に難しいのでそのまま進行するしかないと思います。

 

ついでながらどんな問題が起こるかというと、混用率の間違え(生地屋から聞いてたのと違っている)、染色堅牢度の不良、寸法変化率の不良、生地の強度不良等です。

どれもダメージの大きい問題ですが、特に大きな問題だと個人的に思うのは混用率と生地の強度です。

混用率の間違いは家庭用品品質表示法に関わり、最悪の場合優良誤認表示になってしまいます。生地の強度不良は縫製仕様に影響するので修正するのに大変難しい問題である気がします。

 

さて、話を戻します。

 

裁断前に生地検査ができると良いですが、引き付け発注になっており、ギリギリまで発注があるかわかりません。

もちろん先に検査に出しておく事も可能です。しかし、その商品企画がボツになってしまうと先に進めていた検査代が無駄な経費となってしまいます。(検査代はOEM・ODM側が持つことが多く、アパレルメーカーが支払うケースは稀なケースだと思います)ですから検査に出すのは発注が確定したタイミングになり、裁断と生地検査がほぼ同時進行する事になってしまいます。

 

問題があった場合どうなるかというと、最悪の場合は製品の状態で修正になります。生産スケジュールに余裕がないので、このような事態になってしまうと納期遅れの可能性が出てきます

 

納期が遅れると、アパレルメーカーでは売りたいタイミングに店に商品を並べることができず、販売機会ロスに繋ります。また、販売機会のタイミングを逃した商品は売れ残りに繋がってしまう可能性が高まり、なんのために引き付けて発注したのかわからなくなります。

 

一方でOEM・ODM側は、修正代が発生するので余計な経費が増え、利益が減るどころか最悪の場合は赤字になってしまいます。(もちろん生産を請け負う際にはコストも納期もバッファを持っているはず、どんどん引き付けることで特に時間的バッファは少なくなります。)

 

 

引き付けて発注するという事が行き過ぎると、品質面や納期面でデメリットがあることをアパレルメーカーも理解し、うまくOEM・ODM業者とお付き合いして頂きたい、と横で見ている自分はそう思います。

 

 

 

以上USでした。

ツイッターもやっていますのでこちらもよろしくお願いします。

 

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 comment
  • とおりすがりの中年 より: 2022/09/12(月) 9:41 PM

    SDGsで目立つのがゼロコロのような極端が多いのは何なんでしょうかね
    果たしてそれが業界にかかわる全体として持続可能なのか、と思ってしまうことが多く
    新品も作りそのようなしながらロスも抑えリサイクルという、買う人、新品作る人、リサイクル品業者、環境にもなるべく優しくみんなハッピー
    子供のような理想ではありますが本来はそちらだったのでは…と

    表向きは良いのですが、ひきつけの納期の件しかり、急な国内生産回帰といい、
    少し中を詰めた途端にオレサマだけが持続可能!という匂いが隠せずにじみ出てしまっているのが残念です

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