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南充浩 オフィシャルブログ

商品企画が悪ければ価格が安くても服は売れないという無印良品の話

2022年9月7日 月次速報 2

2020年春から始まったコロナ禍はまだ続いているが、回復しつつある部分もある。

ちなみに中国はまた各地でコロナロックダウンが行われているので、中国での生産・物流・消費に過剰な期待をかけるべきではないと当方は考えている。

中国74都市で3億人超がロックダウン、ゼロコロナ固執の理由とは(1/2) – CNN.co.jp

8月下旬以来70都市以上が完全または部分的なロックダウン(都市封鎖)に入っている。影響を受ける住民は3億人以上。

である。

 

まあ、それは置いておいて、国内の衣料品大手企業も完全ではないにしろ、コロナ前に近づくくらいには徐々に回復しているが、その中に置いて無印良品だけが完全に取り残されている。

 

ユニクロ8月度、夏物好調で14.9%増 無印良品は10.5%減

ユニクロの国内店舗とECの売上高は、前年同月比14.9%増だった。

しまむら(7月21日〜8月20日で集計)は前年同月比2.1%増。

「無印良品」を運営する良品計画は同10.5%減と3カ月連続の前年割れ。衣服・雑貨は同9.0%減

アダストリアは同24.2%増。

ユナイテッドアローズは同19.8%増。

 

という具合である。

ちなみに前年増している各社でさえ、しまむらを除いてはまだコロナ前を越えてはいない(しまむらはコロナ禍から好調に転じている)のだから無印良品の落ち込み、特に衣料品の絶不調ぶりがうかがえる。

 

無印良品の2019年8月の既存店衣料品売上高を基準とする。ちなみに19年8月は前年比26・1%増という好調ぶりだった。コロナが始まった20年8月は15・0%減、21年8月は23・1%減だった。そして22年8月の衣料品は9・0%減だから、コロナ自粛ムードが最もキツかった20年8月よりも売上高が大きく下がっていることがわかる。20年8月比では22年8月売上高は61・6%ほどとなっており、同じ8月単月だと20年から2年かけて衣料品売上高を40%も落としているということになる。

こと衣料品に関していえば、無印良品の既存店は壊滅的に売れていないということがわかる。

 

衣料品に関していえば、無印良品は商品企画面においては当方の目にはほとんど無策を続けてきたと映るが、販促面に関していえば、定価引き下げを何度かに渡って行っており、つい先日は各社が値上げする中、価格据え置きを発表している。

それでもこれほど売れていないのである。

 

この2年間の無印良品の衣料品売上高の激減ぶりから考えられることは、衣料品に関していえば

 

いくら安くても要らない服は要らない

 

ということではないかと思う。そして無印良品の衣料品は消費者にそう思われているということではないだろうか。

 

無印良品の内部で働いたことがないので、店頭の定期観測から推測すると、以前から何度も書いているが無印良品の衣料品がこの3年間くらいほとんど変わり映えしていないことが「安くしても売れない」最大の原因ではないかと考えている。

理由を自分の消費行動から見てみると、例えばベーシックな無地長袖Tシャツがあったとする。当方の場合だと黒、紺優先で購入する。次はグレーだろうか。あと、白は気が向いたときに購入する。

黒、紺をそれぞれ2枚ずつ買ったとする。その何か月か後にグレーを2枚買ったとしよう。もうこれで当方の着回しサイクルでは2年間分くらいの長袖無地Tシャツを確保したことになる。たまたま値下がりしていたのでその後に白を1枚買ったとする。もうこれで恐らくは毎シーズン無地長袖Tシャツを買うことはない。毎年どれかの色を1枚か2枚買い足す程度になるだろう。いくら990円に価格据え置きにしても毎年何枚も買う必要性がない。

お分かりだろうか?

カジュアルウェアで変わり映えしなさすぎるとこのような消費行動になってしまう。あまりに変わり映えしない無印良品の衣料品売り場ではこのようなことが起きているのではないかと考えられる。

おまけにベーシックな低価格カジュアル衣料なら無印良品に限らずユニクロにもジーユーにもしまむらにも売っているから無印良品だけで買い続ける必要性がない。無印良品でなければ絶対に嫌だというような変態マニアは少数派だろうから、そんな少数の変態マニアの購買では、仮にも大手たる無印良品の衣料品売上高を支えることなど不可能である。

 

98年のユニクロブーム以降、国内のカジュアル衣料品業界はマスコミの報道姿勢も手伝って「1円でも安くしないと売れない」というような強迫観念に取りつかれてきたように見えるが、実際には低価格帯であっても300~1000円くらいの値上げはあまり関係ないし、定価引き下げと価格据え置きを繰り返したところで商品企画面がダメなら無印良品のような惨状となってしまう。

もちろん、それぞれの価格帯においては抵抗感を大きく感じられる場合があるから慎重に検討する必要はある。以前にも書いたが990円から20円でも上がるとそこには大きな抵抗感がある。1000円札1枚で買えていた物が1000円札1枚では買えなくなるというのはかなりハードルが高い。

その一方で1500円が1900円になったところでさほどの抵抗感はないだろう。2000円あれば買えることには変わりはない。

この辺りの見極めをしながら、各社は少しずつ価格を上げて利益を確保すべきだろう。

「値上げしなければ売れるという幻想」は無印良品が反面教師となって完全に打ち砕いてくれている。

 

逆に無印良品は商品企画を工夫すべきだろう。

聞くところによると、優秀な外部デザイナー氏と長年に渡って契約し続けているものの、上場企業の悲しさからかひどい前年実績主義に陥っており、前年実績を踏襲した商品作りばかりを求められているとの噂がある。もし事実なら、同じ洋服が毎年同じ数量だけ売れるとは限らないという基本中の基本を経営陣にも株主にも思い出してもらいたいものだと思う。

「不変の定番を売り続けていれば過剰在庫には陥らない」と主張する店頭を定点観測しているとは思えないようなおかしなコンサルタント諸氏が業界を跳梁跋扈しているが、無印良品の惨状を見て、そのような甘言には経営陣は乗るべきではないということである。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2022/09/07(水) 7:18 PM

    無印良品のデザイナー(誰だか存じませんが)は何とか新しい事をやろう,少しでも “攻めた” デザインにしようと努力はしてはいるようですよ。ただその結果が消費者から見てあらぬ方向に行っているだけで。南さんが以前取り上げていた「この春は茶色のシャツだらけ」とかね。別に茶色の服なんて流行っている訳でもないし。まあでも変な茶色ではなかったから,どっちかと言えば僕みたいなおっさん向きだと思った。でも丈が短いので裾出しして着るほかなくて,僕は長袖シャツを裾出しして着る習慣がないので諦めざるを得ませんでした。
    無印良品はおよそこんな風に「デザイナーはこれがイイと思ってやったんだろうけど…惜しいなあ,余計な事してくれなきゃ気に入ったのに」というのが僕にとっては甚だ多い。例えば――

    ・「このグレーのスエットパーカ,ごく薄手でオシャレな感じはするけど,ファスナーまでこんな極端に華奢なものにしてくれちゃ困っちゃうね。すぐ山が欠けて交換に行かなきゃならんかったわ」。
    ・「僕はB.リーが着てたような本格的なチャイナ服が好きで一着欲しいと思ってるんだけど・・・こんな中国服風なシャツジャケットなんて使いにくそうな商品じゃな。ジッパー付きのトレーナー風ブルゾンてのもよく分からないね」。
    ・「23区で買ったダッフルコートは気に入っているけど,重いのがなあ。無印良品のグレージュのものはダッフルにしちゃ軽いし,色も珍しくていいから買っちゃおう。でもこれ,表示はないけど明らかにやや極端なビッグサイズだね。慌て者のオジサンは買った後で困惑するのじゃあるまいか。トグルが4つしかついてなくて,歩くと下半身が露出気味になるのもチョト困る」。
    ・「バンドカラー(所謂スタンドカラー)の半袖シャツ,欲しいと思ってたんだけど・・・これもビッグサイズかよ」。
    ・「悪くない白麻のジャケットだけど,既製服なのに袖ボタンが本切羽って ...袖詰めにものすごく時間も手間もかかる服なんて無印良品じゃ買いたくねえな」。

    気持ちは分かる気もするんですけどね。

  • mmm より: 2022/09/15(木) 2:04 PM

    無印の弱さは、スタイリング提案がブランド側からほぼ一切ないことも大きいと思います。オンラインストアのトップページにこそシーズンルックは上げてますが、商品ページに飛べばただの超ベーシックな白シャツ1枚、Tシャツ1枚で突っ立ってる画像しかなければ誰も買わないかと。。。本気で衣料品を売りたいなら、せっかく実店舗も大量にあって販売員もたくさん抱えているのだから某スタイリング投稿システム導入するなりSNS活用するなり、そのあたりも本気に考えないと。

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