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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロの値上げ発表は「5品番しか値上げしません」ではなく「5品番しか発表しません」という意味

2022年9月5日 企業研究 0

ユニクロが今秋冬物から5品目の値上げを発表したが、実際のところ、それ以外はすべて価格据え置きかというとそうではない。

当方が、店頭を見て回ったところ、8月下旬時点では発表以外にメンズでは2品番の値上げが確認された。

1つはGジャンである。今春物まで定価は3990円だったが、今秋物からは定価が4990円となっている。

もう1つはMA-1ブルゾンである。5990円に値上がりしている。当方は2016年に買ったが当時は3990円が定価だった。

 

ハッキリと言うと、今後投入される新商品については発表されている物以外でもこのように若干値上げされる物があると考えた方が良いだろう。

もちろん、価格据え置きを明言した商品は据え置かれるだろうが。

 

今回の2品番は、価格の上下動が気付きやすい。なぜならデザインはほとんど変わらないから、値上がりしたか値下がりしたかが如実にわかる。

まずMA-1ブルゾンは、デザイン変更のしようがない。まあ、できなくはないが、変更するには相当のアレンジセンスが必要となる。過去に著名デザイナーズブランドや著名トレンドブランドからアレンジされたMA-1が発売されたが、ユニクロのターゲット層も支持者もそういう高くてハイセンスな物は求めていないだろうから、畢竟、ほとんど毎年デザインは変わらないということになる。

変わるとするとトレンドに応じてタイトシルエットになるかビッグシルエットになるかの違いである。

ちなみに当方が持っているユニクロのMA-1ブルゾンは2016年物なのでまだタイトシルエットの名残がある商品である。

 

次にジージャンだが、これも大きくデザインは変わらない。ただ、リーバイスでもファースト、セカンド、サードとデザインのバリエーションがあるし、リーとラングラーでも何種類かある。しかし、マスの消費者から見れば「どれもこれも似たようなもん」である。そのため、価格も比較されやすい。

今秋物のユニクロのジージャンはリーバイスファーストっぽいデザインに変更されている。今春夏物は多分ラングラーのアレンジではないかと思われるし、その前はリーバイスセカンドっぽいデザインだった。が、マスから見れば「似たようなもん」なので、価格は1000円値上がりしたと簡単にわかる。

 

さて、ユニクロの値上げ発表だが、多くのメディアは気付いていないのかもしれないが、「5品番しか値上げしません」という意味ではなく、「この5品番は値上げしますが、残りは不明です。または値上げするとしてもわざわざ発表しません」という意味なのである。

では、どうしてユニクロがそのような発表の方法を採ったのかである。

これについて当方は、ユニクロなりの自己防衛だったのではないかと考えている。

かつてユニクロは値上げを発表し、大々的に報道された結果、伸び悩んだことがある。その轍を踏まないための発表方法だったのではないかと考えられる。

結果的に同じくらい大々的に報道されているが、5品目に限っての報道なので、さほど店頭での売れ行きに影響はない。今夏の猛暑も手伝ってか、月次売上速報でも好調が続いている。

逆に「価格据え置き」を発表した無印良品の方が毎月次売上速報の数字は低迷を続けている。

ユニクロの作戦勝ちと言えるとともに、無印良品は値段以外があまりにも無策すぎて売れていないということができる。

 

値上げを発表したユニクロの好調・堅調と、価格据え置きを発表した無印良品の不調続きという事例は、売れ行きは単に価格だけでは決まらないということがわかる。

しかし、かといって、「良い物はなんぼ高くても売れるんじゃあ」と有象無象の衣料品業界人が考えるのは大きな間違いともいえる。この考え方で国内アパレル企業はこれまで負け続けてきている。

ユニクロと無印良品の結果を見ていえることは、990~5000円くらいの価格帯の衣料品において、バーゲンや値引きセールは別として、定価が500円~1000円違ったところであまり売れ行きを大きくは左右しないということである。

定価が安ければ必ず売れるのであれば値段を引き下げ続け、さらには今回据え置きを発表している無印良品の月次売上速報はもっと好転していないとおかしいということになる。

価格は大きな要素の一つに過ぎず、商品の出来栄えとかデザインとか新鮮さとか機能性とかそういう様々な要素が複合的に作用するということが理解できるのではないかと思う。また、販促施策とか広告宣伝施策とかそういうことも強く絡んでくるということも分かるだろう。

 

消費者としていうのであれば、990円が1990円に値上がりするとめちゃくちゃ買いにくい。しかし、3990円が4990円に値上がりしたところでさほど変わらないと感じる。8990円が9990円でも同様である。この辺りの機微さえ理解していれば500~1000円の値上げは他のブランドでも可能だろう。

当方の個人的な感覚でいえば、1000円、3000円、5000円、1万円がそれぞれのハードルとなる。990円が20円でも値上がりすると1000円というハードルを越えるためにすごく高くなったように感じられる。2990円が3990円になるのも同じだ。3000円というハードルを越えて抵抗感が生まれる。逆に3990円が4990円になったところで5000円というハードルは越えないので抵抗感は少ない。8990円が9990円になっても1万円は越えないので抵抗感は少ない。

あくまでも当方の感覚に過ぎないのだが。

 

あと、現在のユニクロ店頭、ジーユー店頭を見ていても、値上がりはしないまでも値下げ幅は2019年よりもよほどの死筋以外は小さくなっている。ジーユーでいうと990円未満に値下がりする商品が減った。しかし店頭での客を見ていると、それで賑わっているのだから、その売り方は正しいということがいえる。

各ブランドは、そのあたりを見習って上手く気付かれない程度に値上げすればよいのではないかと思う。

 

まあ、あとはメディアの報道も全般的に悪いと思う。たしかに事実かもしれないが、今までの報道姿勢だと単に消費マインドを委縮させるだけでしかない。萎縮させて景気を悪化させることがメディアにとって何のメリットがあるのだろう。だからユニクロは今回のような自衛的な発表方法を採ったのだろうと考えられる。要はメディアは企業から信用も信頼もされていないということである。

 

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