店頭販売価格を値上げしたなら同時に「売る力」も向上させる必要がある
2022年9月2日 お買い得品 1
2010年ごろから原材料費、人件費の高騰が続いており、衣料品の価格据え置きが業界全体としては苦しくなりつつあった。2020年の世界的なコロナ禍、さらに2022年のウクライナ侵略によって燃料高騰、円安基調などが加わり価格据え置きが事実上不可能となり、今秋物、来春物からの値上げを多くのブランドが発表している。
メディアとしては値上げでコスト増を吸収しましたということで問題解決という感じなのだが、正直、衣料品ブランド側が苦しむのはここからだと感じている。
なぜなら、店頭販売価格を値上げすることで、コスト増が吸収できることは確かだが、値上がりした分、洋服の売れにくさは増す。もちろん一概には言えないが、高い方が売れにくい。
値上がりしているのは衣料品だけではない。電気代や食品なども今夏ごろから値上がりしている。しかし、電気代や食品は必需品なので値上がりしたとて節約はなかなか難しい。
食品の例でいうと、愛用しているスーパー万代も微妙に値上がりしている。特に自分の生活でいうなら、弁当類・総菜類が値上がりしている。正確にいうと定価は値上がりしていないが、値下げ幅が小さくなった。
コロナ以前だと定価200円の5個入りコロッケが、夕方7時を過ぎると100円に値下がりした。これがコロナ禍が始まってからは120円までしか値下がりしなくなり、2021年後半からは150円くらいまでにしか値下がりしなくなった。120円にまで値下がりするのはよほど売れ残った日に限られている。
そんなわけで当方の毎月の食材費もだいたいトータルで1000~3000円アップしており、いかに安く済ませるかを一層工夫している毎日である。
しかし、値上げが嫌だから食材を買わないとか極端に買う量を減らすとかすれば、たちどころに健康を害する。そのため極端な買い控えはできない。そういう意味では食品は値上げして多少の節約があったとしても大きな買い控えにはならない、というよりできない。
だが、衣料品は違う。
これが終戦直後の時代なら物不足ということもあり、来月着る服(おしゃれかどうかは別にして)にも事欠く状況だったが、今、そんな日本国民はほとんどいないだろう。よほど災害や不幸な事態に見舞われた人くらいだろう。
当方は極端に手持ちの服が多いが、当方ほどではないにせよ多くの人は最低でも半年か1年くらいは全く服を買わずに過ごせるほど持っているのではないかと思う。
削りに削れば肌着や靴下以外買わなくても良いと言う人が圧倒的に多いのではないか。
となると、何が言いたいのかというと、店頭販売価格を値上げしたということは各店・各ブランドは「売る力」も同時に向上させないと全く意味がないということである。
売る力の向上がなければ売れ残り在庫が増えるばかりか、大幅値引きで売りさばくこととなり、売上高が稼げないどころか値上げ前よりも営業利益が減少しかねないため、経営を悪化させる可能性も高い。
様々な要因で製造コスト・輸送コストなどが上がっていて、それに応じて値上げをしているのに、大幅値下げをして売り切るということはコロナ前よりも営業利益が低下するということになる。ひいては経営を悪化させる可能性が極めて高くなる。
個人的には、メディアは「値上げした」の合唱よりも、値上げをした後どう売る工夫をするのか?ということを報道を中心にすべきではないかと思う。
そうでなくては「値上げした」とメディアが大合唱したところで消費者の購買意欲を削いで景気をさらに悪化させてしまうだけでしかない。
実際にそこまで定価では売れないのか?と思われる方もおられるだろうが、当方の生活レベルでいうなら、衣料品の値上げはさほど感じられない。
なぜなら、店頭には今でも破格に値下げされた処分品が多々あるからだ。
例えば、ユニクロの値上げが盛んに報道されていたが、実際の店頭では今夏のTシャツが790~990円に値下げされて叩き売られている。
7月下旬か8月上旬に投入されたエアリズムコットンオーバーサイズモックネックTシャツもすでに8月末から定価1500円が990円に値下げされてしまっている。
またそれまでにも散々期間限定で990円に値下がりしていたから、定価1500円で買わねばならない必要などさらさらなかった。当方は990円に値下がりした8月中旬に2枚購入している。
ジーユーとて同じで、Tシャツ類の定価は以前より少し上がった感じを受けるが、今は590~990円に値下がりした半袖Tシャツ類で店内は溢れかえっている。
定価1490円・1690円の半袖Tシャツが今夏のメイン価格帯だったが、よほどの人気品番以外は定価で買う必要など全くなかった。当方も590円・790円・990円に値下がりしたジーユーTシャツを何枚か買った。
結局、いくら店頭販売価格を値上げしようと、定価か定価に近い価格で売り切る力が無ければ何の意味もなく、却って営業利益率を悪化させてしまうだけである。
そして、現状店頭を見て回っているとユニクロ、ジーユーに限らず例えば無印良品などの他の低価格ブランドでもコロナ以前と変わらない値下げ品を見つけることができる。
食品とは異なり、そういう破格の投げ売り品を衣料品はまだまだ選ぶことができる。
意外と衣料品の値上げ政策はあまり奏功しないのではないかと思ったりしている。衣料品は食品や電気料金に比べて「高くても買わなくてはならない」という要素があまりにもなさすぎる。売る力の無い店舗やブランドは今回の値上げで却って経営を悪化させてしまう可能性は高いのではないかと危惧している。
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食料品や交通機関のように毎日僅かながらでも
確実にお金が入ってくる商売じゃありません
今となっては南サンが指摘するように
実用衣料の世界ですらそうなりつつあります
ましてやアパレルとなると
「実需に基づく一定の需要」があるともないとも
いかんとも云い難いw世界です
で、ムード次第で全ての衣料品が一気に売れなくなる
これから実需が一定してあるのは死に装束だったりしてw
(けっこう本気ですが)