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南充浩 オフィシャルブログ

「好調でも売上高を伸ばさない」という売り方と「スモールマス」という考え方と

2022年9月1日 企業研究 1

これも以前に書いたことがあるが、ユニクロが+Jを始める前(2009年手前)にもデザイナーズブランドとコラボする「デザイナーズインビテーション」という企画が断続的に行われていた。

その中に、当方と面識のある個人デザイナーが選ばれた。これには驚いて、メッセージを送ると

「ユニクロとのコラボが発表されてからすごく知名度が上がりました」

という返事があった。

この当時はまだ業界内に「ユニクロとコラボするなんて」という雰囲気が色濃く残っていただけに、当方にとってはその答えは意外だった。

逆に、裏原宿ブランドとかビンテージジーンズブームのようなブームは今後もう起きないのだと感じた。これからはユニクロのような大手低価格ブランドとのコラボが知名度向上にダイレクトにつながる時代になったということである。

 

それから10年以上が経過して、衣料品業界はますますその傾向が強いと感じる。

当方も含めたマス層はユニクロ、ジーユー、しまむら、ワークマンを筆頭とする低価格大手ブランドでほぼ満足しているし、富裕層は欧米ラグジュアリーブランドを愛用していると言われるが、欧米ラグジュアリーブランドもすでに世界的大企業の傘下になっている。

「消費の二極化ガー」といわれるが、低価格もラグジュアリーもどちらも大手企業ということになり、供給側からすると大手企業一択という状況といえる。

自分を消費者として考えた場合、メンズカジュアルという視点でいうなら、その傾向はより強まっていると感じる。

前回のブログで採りあげたスリーコインズとシアタープロダクツの協業というのは、さらにそれが行き着いた結果ではないかと思っている。

ダイソー、セリア、キャンドゥもデザイナーズコラボ商品を企画してみてはどうか

今までなら低価格とはいえ、まだ衣料ブランドとのコラボだったが、ついには低価格雑貨とのコラボである。時代の移り変わりを感じさせられる。

しかし、スリーコインズの勢いは続いており、これまでは「ダイソーの仲間」程度に揶揄していたファッションブランドも今後はスリーコインズ、もしかしたら百均とのコラボまでが当たり前になり、逆にこれこそが知名度アップの有効手段になってしまうのではないかとさえ感じられる。

 

 

先日、久しぶりに展示会でお会いした小規模な個人ブランドがある。

このブランドが長年に渡って取引している某セレクトショップがなかなかユニークな形態で、だいたい年間売上高30億円に保っているという。

どんなに売れてもどこかで制限をかけて30億円に抑えるし、逆にどんなに不振でも30億円を大きく下回らないという。

売れ筋が発生した場合は、ある時点でその品番の追加補充をやめてまで売上高が伸びすぎないようにするとのことである。

 

直接このセレクトショップに取材をしたわけではなく伝聞なので店名を伏せて続けるが、これが事実だとすると、今の世の中で「ある程度のファッションを売る」のが目的であればこの形態が正解なのではないかと思えてならない。

売上規模の成長を追い求めればそれこそファーストリテイリングとまではいかずとも、しまむら、アダストリア、パルグループ、ハニーズくらいの規模にまで成長させる必要に迫られるだろう。そのためには株式公開も必要だろうし、株式公開したがために面白味がどんどん消え失せて行ったユナイテッドアローズという反面教師もある。

この30億円規模を維持し続けるセレクトショップに近い考え方といえるのは現在のビームスではないかと思う。

ビームスは株式公開していないので、結構変な商品も真面目に取り扱っている。木刀とか神棚なんていうのを販売したのはその典型だろう。木刀や神棚が飛ぶように売れたとは思わないが、そういう変な物があるから「ビームスは面白い」という評価にもつながっているといえる。

 

マスマーケティングとニッチマーケティングのどちらが向いている?|第三の市場スモールマスにも注目

 

こんな記事がある。アパレルではあまり言われないが、化粧品や食品などの業界では2015年から「スモールマス」という言葉が言われ始めている。

マスではなく、ニッチでもない「スモールマス」という考え方だが、化粧品やシャンプー、食品などでは「低価格マス商品の売上高が減り、少し高く特徴のあるスモールマス商品の売上比率が伸びた」という背景があるらしいのだが、当方が見る限りにおいてアパレルはそれとは逆で、ユニクロ、ジーユーなどの低価格マス商品比率はますます伸びていると感じられる。

その一方で、ユニクロ・ジーユーでは満足できないという層がけっしてゼロではない。この層のボリュームがどれほどなのか統計データがないのでわからないが、この30億円規模を維持し続ける某セレクトや、木刀や神棚を販売するビームスなんていうのはある程度この層の支持を得ているのではないかと考えられる。

 

大手企業による低価格とラグジュアリーの寡占化が進む衣料品業界でそれでも従来のファッションビルブランド価格~百貨店ブランド価格で「ファッションを売りたい」と考えているブランドはあまたある。そんな人たちは「ユニクロ・ジーユーはケシカラン」「外資ファストファッションはケシカラン」とSNS上でノイジーに叫んでみたところで何も変わらないし意味がない。

化粧品や食品の「スモールマス」という考え方そのままは当てはまらないだろうが、そういう市場を形成してみる取り組みをしてみてはどうかと思う。

木刀を売るビームスは700億円規模の大手企業なので零細中小企業は真似はできないかもしれないが、30億円規模を維持し続ける某セレクトなら規模感的にも真似しやすいのではないかと思う。この30億円規模のセレクトは創業から30年が経過しているので大したものである。もちろん、個々の企業やブランドの背景やら抱える顧客層は異なるのでそれぞれに応じたアレンジが必要であることは言うまでもないが。

まあ、そんなことをつらつらと考えてみた。

 

仕事のご依頼はこちらからお願いします~↓

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そんなビームスの木刀をどうぞ~

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/09/01(木) 12:33 PM

    まいどな内容ですが、まったく解っていない人間が業界内には
    やたら多いので、全然まいどな感じがしません

    「近年、大幅に品質向上した低価格品は、衣料品に
     品質を求める層をそれなりに満足させる内容を持っている」

    「したがって、品質を求める層でも高額品を買う必要はない
     高額品に対するニーズが消滅したわけではないが
     昔と比べるとボリュームはとても小さい」

    そして、ようするニダ

    「いろんな好みの人間が市場に存在するが、規模を考えろ」

    販売ベースの金額では

    ・ごく一部の人が対象の10臆・30億でひと区切り
    ・つぎが名前を耳にした人がいる100億までのゾーン
    ・そして誰もが1着は持っている100億~の大企業

    といったところでしょうかね

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