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南充浩 オフィシャルブログ

独自化・差別化をするには自主企画商品が必要だと考えられる理由

2022年8月29日 企業研究 2

百貨店とGMS(大手総合スーパー)の衣料品復権に向けての議論がさまざまある。

個人的には、従来通りの「ブランド品の品ぞろえを工夫する」というやり方では内部の人間が期待しているほどの回復はあり得ないのではないかと見ている。

どちらももう導入できるブランドはある程度限られてきているし、「日本初出店」「日本初上陸」という謳い文句も絶対的な優位性は長期間は保てない。

なぜなら、ブランド側も〇〇店のみにいつまでも出店や卸売りを限定しているわけではない。ブランド側も拡大できるならいくらでも拡大したいから、すぐに2店舗目・3店舗目を出店したり卸売りしたりする。

となると「初上陸」とか「初出店」などという優位性はその時点で崩れ落ちる。

そして、百貨店向けにせよ、量販店向けにせよ、いまだに日本人が全く知らず、それでいてマスの売れ行きが期待できるような「まだ見ぬビッグブランド」などもう国内にも世界的にも存在していない。

「まだ見ぬニッチブランド」とか「まだ見ぬマニアブランド」とかは残っているが、そんなものはなかなかマスには売れない。

 

2016年夏、とある依頼で当方は何社かの大手企業や注目企業の経営者をインタビューしたことがある。この企画はお蔵入りになってしまったので、インタビューしたという記憶とそれを書き起こした未発表の原稿が残っただけである。

その中の一つにカルチュアコンビニエンスクラブ(CCC)の増田宗昭社長のインタビューがある。

当時、増田社長は

 

「百貨店にせよ、どんな店にせよ他社との差別化を果たしたいなら、最終的にはPB化、SPA化するしかない」

 

という持論をお話されていて、なるほどと納得した。

 

増田社長のお話を手短にまとめると以下のようになる。

 

衣料品に限らずブランド物を他社だけで商品構成をすると、そのうちに同じ商品を取り扱っている店が増える。同じ商品を取り扱っている他店との競争に勝つには値下げというのが手っ取り早い手法となり価格競争となりやすい。また他店でも売っているとなると特定の〇〇店で買わねばならないと思う消費者は減る。だから、それを避けるためには〇〇店だけでしか買えない独自の商品が必要となる。これが自主企画商品ということになり、百貨店にせよ量販店にせよ、自主企画商品が今後は必要になるのではないか。

 

という内容である。

 

当方は、衣料品業界に長らくいるが2010年あたりから新商業施設オープンというネタには全く興味がわかなくなっていていた。

もちろん、40代ということで老化もあるだろう。しかし、若い頃と比較すると「またこのブランドが出店するんですね」というものばかりで全く新鮮味を感じなくなってきており、2016年夏ごろにはその思いはさらに強まっていた。

当方が得意な低価格ゾーンでいうなら、ユニクロ、ジーユーは鉄板。あとはハニーズとかアダストリアとか当時ならストライプインターナショナルとかそのあたりのブランドがかなりの高確率で入店している。入店テナントが同じなので、行く先を決める基準は

 

・目的地の近隣にあるか?

・目当ての商品がどの店に残っているのか?

・自宅や職場の近隣にあるか?

 

くらいになっている。

決して、〇〇店に強い愛着があるわけではない。別に隣の〇〇店でも構わないのである。

以前にも書いたが、天王寺MIOに今秋ジーユーがオープンする。歩いて3分のあべのキューズモールにもすでにジーユーがある。ジーユーの商品さえ買えるなら、当方はジーユーの商品が買えるならあべのキューズモールだろうが天王寺MIOだろうがどっちでも構わないのである。「絶対にあべのキューズモールでないと買いたくない」なんていう愛着は全く持ち合わせていない。

 

 

百貨店とて当方には同じである。改装オープンの会見に出席して「〇〇ブランドを導入」というのを見ても全く新規性を感じない。「それって〇〇店にもありますよね」とか「どうせ何か月か後には他店にもできますよね?」とか、そんなふうにしか感じられない。

当方の感じ方が絶対的マス層の代表であるとまでは思わないが、決して少数派ではないのではないかと思っている。

だから、当方は百貨店も大手スーパーも自主企画製品、PBが今後は必要なのではないかという増田社長の意見に強く賛同する。

なるほどたしかに衣料品に限って言えば、トップバリュとかイオンスタイルとかPBIとかすでに先行投入されている大手スーパーのPBはあまり売れ行きが良くない。大手スーパーの衣料品の利益率が悪いのもPBの不振が何割か手伝っているのではないかと考えられる。

また百貨店のPB開発はこれまで成功していない。成功したように見えていた三越伊勢丹ですらほとんど廃止してしまうようになった。

 

「物を売ること・売り物をバイイングすること」と「物を作ること・売れる物を企画すること」は全くノウハウや感覚が異なる。

凄腕バイヤーとやらの自主企画衣料品はほとんど当たらない。

だから、PB化賛成論を書くと「それは机上の空論だ」という反論が必ずある。しかし、これまでの延長線上の売り場で長らく効果が出ないのであれば、やり方を変える必要があるだろう。

百貨店にせよ、大手スーパーにせよ、全てをPBで売り場を埋めることはできないから、仕入れ品やテナント出店の誘致は必要だが、同時にPB開発は必要不可欠ではないかと考えている。

例えば、コンビニはPB商品開発を強化しており、セブンイレブンが代表だが最近だとファミリーマートもかなり多い。ローソンは最もPB商品が少ない印象がある。

ノウハウの蓄積や物作り・企画の考え方を一新する必要はあることは言うまでもないが、それができなければ他社店舗との差別化・独自化は確立できないまま、同質化と価格競争に苦しむことが続いてしまう。

ノウハウの蓄積や物作りの構築は長期間必要になるが取り組むべきではないかと思う。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/08/29(月) 1:38 PM

    東武の根津さんが20年前・自主仕入自主編集な伊勢丹神話が
    まかり通っていた頃に「フロア丸ごと総テナント化するのが
    悪いとは決して思わない」と発言されていました

    で、20年後はどのビル・どのデパート・どのモールにいっても
    GUウニクロスタバが入っている便利?な時代になってしまいました

    もうここから先は、ひたすら愚直にカネと時間を費やすしか
    ないと思われます

    でも短時間かつ安く結果をそこそこ出して、改良改善しながら
    ダラダラ続けるのは、社内だけでは無理です

    安手のセレクトショップ型SPAか
    いっそのこそイトチュ~様と組むべきです

    なお、個人と組んでは絶対ダメです
    亡きフジマキさんに金だけ巻き上げられた
    ヨーカドーになりますよ

    10年前なら「大都会トウキョウのお店を持ってきて
    やったぞ~」という手法でイナカにビルつくりゃ
    よかったですけど、もう開発され尽くしてますもんね

    鹿児島でも帯広でも、99%の人が買える物は
    りゅうこうの最先端wを行く東京と同じです

  • 眠れないので より: 2022/08/30(火) 3:40 AM

    小売のやるPBは担当者が誰やるの問題があって
    昔の伊勢丹支店の場合、店頭の契約社員が担当になってた。
    もちろん本部には担当社員がいるけどみんなの意見を集約みたいな感じ。
    それも専従者ではないので最後は業者まかせな印象が強かった。ただの別注じゃんみたいな。
    支店側は通常業務と兼任かつ開発の経験のない売る経験のみある人。
    なので売りやすい商品の開発がやっとだし、
    売上ノルマで忙しいのにPBの業務なんてサビ残で仕事すすめるしかない。
    そして出来上がった商品みてビックリみたいなのが自分の担当では多かった。
    誰が買うの?みたいな感じ。結局価格勝負のみとなってセール専用商材になっていく。
    またセール商品もオープンプライスだから何割引とか表示できず相場より安いみたいな
    あいまいなことしか言えないので景品表示法とかどうなん?と思いながら販売していた。

    PBで成功したのは婦人靴。あれは靴に精通したベテラン販売員とやる気ある
    メーカーが組んでじっくりやったからだったと記憶する。
    競合が少ないゾーンというのもあったし担当者が本店婦人靴の人で有能だったからだと思う。
    婦人服でのその再現は競合が多く無理ゲーだし紳士服もウンチクが弱いので向いてない気がする。

    PBはたしかに大事だけど今のアパレルでやるのは現実的ではないなあとも思う。
    おそらくは高めだがインポートよりは手頃みたいなニッチなゾーンしか成立しないと思う。
    食品でいうと成城石井みたいなポジションを目指す感じがやっとではないか?
    振り返ると大西社長は机上の空論が多かった印象。現場の負荷が異常に高くなってた。
    組合の支持を失い失脚もそりゃ当然だろとしか自分は思わなかった。
    柳生正ほどブラックではないが大西体制の経営陣は詰んでたなと今となっては思う。

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