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南充浩 オフィシャルブログ

再スタートするエディー・バウアーは堅実な事業計画だと思う

2022年8月24日 企業研究 1

昨年末で日本から撤退したエディ・バウアーというブランドがある。

急遽の撤退発表は様々な憶測や推測を呼んだが、来年春からの国内復活が発表された。

 

水甚が米「エディー・バウアー」アパレルの製造卸、直営店を出店 23年春夏から 伊藤忠商事とサブライセンス契約 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

 

かなり大々的に報じられたのでご存知の方も多いとは思うが、知らない人のために内容を抜粋して引用する。

 

カジュアルウェアメーカー・小売りの水甚(岐阜市)は、米アウトドアライフスタイルブランド「エディー・バウアー」で日本における販売権・ライセンス権を持つ伊藤忠商事とサブライセンス契約を結んだ。23年春夏から直営店、オフィシャルECサイトの出店及び、百貨店、セレクトショップ、スポーツ専門店への卸を開始する。

契約カテゴリーはメンズ、レディス、キッズのアパレルで、それらの製造卸及び小売り事業を行う。直営店やECオフィシャルサイトでは一部の輸入商品も扱う予定。また、「米国では本格的なギアも取り扱っており、輸入や日本生産でギアの取り扱いを徐々に増やしていく」考えだ。

直営店は初年度で10店、5年後には25店を予定し、売上高は30億円を目指す。出店はSCの専門店モールや駅ビルなどを予定する。

 

とのことである。

撤退を発表したのが昨年秋なので今回の発表まで1年弱、昨年末の店舗閉鎖から今回の発表までは8カ月というスパンである。これは明らかに今回の伊藤忠の計画が進行したため、一先ずの撤退があったと考えるべきだろう。再スタートするエディー・バウアーは商品は、岐阜の老舗カジュアルメーカーである水甚(みずじん)がライセンス生産する。

これを考えると、来年春夏向け商品の企画というのは早ければ今年春ごろ、遅くとも夏にはスタートしており、12月末の撤退から白紙の状態でその体制が構築できるはずはなく、すでに準備が進んでいたからこその昨年末の撤退と考えるのが正解だろう。

これは、セシルマクビーの撤退と直後の再スタートと同じ構図だといえる。

セシルマクビーも撤退からわずか1年弱で再スタートしており、これは再スタートありきの撤退だと考えられる。

 

これまでのエディー・バウアーが世界統一企画だったが、今春以降は水甚というメーカーがライセンス生産することに対して、業界人、とりわけ年配男性業界人から懸念の声が多く聞こえてくる。

代表例を一つ挙げるならこの記事だろう。

 

昨年12月日本撤退の「エディー・バウアー」が早くも日本再上陸の不思議 |

確かにブランドは必要なのだろうが、これだけ生産のグローバル化が進むと従来の日本でのライセンス契約というものに疑問符がつくようになった。

 

とある。

業界人・服好きの男性はなぜか欧米インポート物を好む人が多いのだが、エディー・バウアーというブランドにとってはライセンス生産は悪い選択肢ではないと個人的には見ている。

自分がディアモール梅田にあったエディー・バウアーのショップを覗いていたころが2000年代前半である。当時のエディー・バウアーはそれこそ、悪い意味でアメリカ人好みのモサっとしたデザインのベーシックカジュアル服が多く、その割に値段は高かった。(言ってみればチェックネルシャツにベージュのチノパンみたいな感じ)

ディアモール店が無くなってからは実店舗に行かなくなったが、2020年頃からネット通販の画面をたま~に見るようになったが、あの頃より商品デザインはコンテンポラリーにアレンジされていたが、ありふれた感じは否めなかった。末期の出店場所はほとんどがイオンモールだったにもかかわらず商品の値段は高かった。

正直なところ、あの路線の商品がインポートで復活してもとてもじゃないが売れるとは思えないから、ライセンス生産された方がまだ勝算はあるのではないかと思う。

全世界統一企画が売れ行きを一切保証しないのは現在のGAPを見ても明らかではないか。また実店舗を撤退したデカトロンも同様だろう。商品画像を見た限りでは日本人には好まれない独特の欧米臭しかなかった。

 

逆にライセンス生産もしくは日本独自企画の方がビジネス的に上手く行っている例も珍しくない。

最大の成功例はゴールドウインのノースフェイスだろう。アウトドア兼用カジュアルとして超人気有料ブランドとなったノースフェイスだが、1978年からゴールドウインがライセンス生産している。94年にはゴールドウインが日本と韓国での商標権を取得しているから、94年以降の国内商品は根本からゴールドウイン主体の企画である。

逆に世界統一企画とかインポート物だけだったらノースフェイスは日本でここまでの人気ブランドにはならなかっただろう。

 

逆に旧エディ・バウアーは、カジュアルとしてはファッション性に乏しく、アウトドアとしては機能性に乏しく、イオンモールで展開するには価格が高すぎたという三重苦のブランドだったから、統一企画やインポートで再上陸したところで勝算は限りなくゼロに近かったと当方は見ている。

 

今回の契約で心配する点があるとすると、元々がメーカーである水甚による直営店運営がどれほどうまくできるかだろう。また再ブランド化するためには長い年月が必要となるが、伊藤忠と水甚が長期的視点と意志を持ってやり続けられるか、だろう。

水甚は最近ではファーストダウンのリブランディングやアーノルドパーマーをレナウンから引き取ったりしているから、昔の量販店向け低価格メーカーではなくなりつつあるから、幾分かの期待は持てる。

それに今回の事業計画自体は堅実なもので、5年後25店舗で30億円を目指すとある。要は1店舗平均で1億2000万円の売上高を目指しているからかなり堅実である。

またコロナ禍以降、不採算店舗を閉鎖するブランドが多く、商業施設は撤退したテナントの穴埋めができない状態が続いているから、出店できるブランドが増えることはありがたく、出店もかなり順調に決まるだろうと考えられる。逆に伊藤忠・水甚の想定よりも出店オファーは増えるのではないだろうか。

まあ、そんなわけで変なブームが起きることを期待せず、地道にやり続けてもらいたいと願っている。

 

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 comment
  • BOCONON より: 2022/08/26(金) 7:57 PM

    「”ハマダー” とか言ってたのはもう遠い昔で,今のお若い人たちはあんまりアメカジ着たがらないから,エディ・バウアーはどうかなあ? 百貨店歩いていてもマグレガーもポロ/ R.ローレンも明らかに迷走気味だし。まあE.バウアー,今回の再スタートは昔のように輸入物をそのまんま売るなんて馬鹿げた商売じゃなさそうだからそこは期待できるけど」・・・と思っていたら,書店行くと案外アメカジ雑誌ってあるもんですね,『2nd』とか『Hailmary magagine』(「アヴェ・マリア雑誌」ってよくわからない誌名であるな)。案外根強いアメカジ愛好家は多いのやも知れぬ。
    あるいは “THE NORTH FACE” みたいにダサいけど目立つロゴでアウトドア系アピールって手もあるかも知れない。いづれアメカジ着て育った世代としては頑張ってもらいたいものです。

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