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南充浩 オフィシャルブログ

イズミがアダストリアをコラボ先に選んだのは悪くない選択だと思った話

2022年8月23日 企業研究 3

時々、西友で値下がりした衣料品を買う。

とは言っても買う物は靴下、ランニングに使えそうなウェア、一部ナショナルブランドのカジュアルウェアである。衣料品業界人からは「西友??」みたいな反応があるが、当方は買わない西友自主企画カジュアルだって黙って着用していれば西友品とはバレない程度には見映えもマシになっていると感じる。

主に愛用しているのはスポーツブランドの値下がりした靴下である。

以前にも書いたが一昨年に値下がりしたアシックスブランドのスポーツソックス(岡本がライセンス生産)の3枚セットを買ったところ、非常に耐久性があり今夏もローテーション着用で活躍している。そのため、先日また、770円に値下がりした岡本生産のアシックススポーツ靴下3枚セットを購入した。

GMSに納品しているスポーツブランドのほとんどは国内大手靴下メーカーがライセンス生産しており、岡本、福助、グンゼなどが担当、外資系だとレンフロジャパンが担当している。これらの専業大手メーカーの作る商品は耐久性や素材感はさすがと言うべきで、ユニクロやジーユーの靴下よりよほど優れている。しかも値段は同じくらいである。

そんな優れた商品を取り扱うGMSだが、衣料品が売れるようになるとは到底思えない。GMS各社が衣料品販売の改善に躍起になるのは、かつてバブル期に衣料品がGMSの利益の稼ぎ頭だった輝かしい栄光があるからである。

バブル期というと誰もかれもがバカ高いDCブランドを着ていたと勘違いしている人も多いが、バブル期にはGMSの低価格衣料品も飛ぶように売れていたのである。そんな誰もかれもが高額衣料をこぞって買うような時代は我が国には無かったし世界中のどの国にも無かった。

 

現在、GMS各社は衣料品販売の立て直しを目的に様々な取り組みを行っているがいずれも効果が出ていない。

低価格をアピールしてみたところで普通の低価格でワークマンやジーユーほどの驚くほどの低価格ではないから目立たない。イトーヨーカドーのようにデザイナーコラボをやってみたところで長続きしない。またイオンのようにモノ系雑誌とコラボをしてもこれまた長続きしない。

消費者には「GMSの衣料品はダサい」という固定観念がこびりついており、これを覆すには長い期間をかけてイメージを変えなくてはならない。

 

現在では国内で絶対的に強いユニクロもなんやかんやとイメージを変えるのには10年間くらいかかっている。2004年に「ファッション化を進める」と宣言してもしばらくの間は「ユニバレ」と揶揄されてきた。本格的にイメージを好転させられたのは2009年の+J開始以降ではないかと思うが、定着させられたのは2010年以降である。

ということはGMSも最低でもそれくらいの長期的取り組みが必要ということになる。

ただ、創業経営者ではないサラリーマン社長が運営する今のGMS各社にそれほどの長期的取り組みが可能かどうかは甚だ疑問である。

 

そんな中、この取り組みは少し面白いと感じる。

 

イズミ/アダストリアと協業、GMS限定アパレルブランドを展開

イズミは9月15日、アダストリアと協業したアパレルブランド「SHUCA(シュカ)」の販売をゆめタウン広島(広島県広島市)・ゆめタウン安古市(広島県広島市)において開始する。

GMS(総合スーパー)衣料品売り場のリブランディングの取り組みとして展開するもので、アダストリアが商品編集・コンセプト・空間演出を総合コンサルティングしている。

 

9月15日の2店舗に加え、9月22日には44店舗で導入、同社が展開する全46施設で展開予定だ。

 

とある。

これはうろ覚えなのだが「SHUCA」というブランド名自体もアダストリア所有ではないだろうか。たしか、2005年頃のグローバルワーク内で同じブランド名の商品が売られていたと記憶している。

まあ、それはさておき。

今秋物商品がだいたい3000~5000円台であり、GMSでも扱いやすい。46店舗での展開となるとそれなりに生産ロットもまとまるので、製造コストも激安ではないにせよある程度は抑えられるだろう。

何よりも、アダストリアという企業のイメージは最先端ファッション企業というほどではないにせよ、ユニクロよりは高いと当方は見ている。

また商品写真を見る限りにおいては、着用する人をあまり選ばず、イズミに買いに来る層に適しているのではないかと思う。

 

かつてイトーヨーカドーはファッション改革として「セットプルミエ」という自社ブランドを創設し、高田賢三氏やゴルチエといった錚々たるデザイナーとコラボをしてイメージを高めることに2015秋冬から取り組んでいたが2017年2月に、たったの1年半で終了している。よほど売れ行きが悪かったのだろうと推測できる。

 

イトーヨーカ堂「セットプルミエ」など4ブランド廃止へ (fashionsnap.com)

 

この上記記事から画像をお借りするが、これは高田賢三氏コラボの商品である。

高田賢三をゲストデザイナーに迎えたカプセルコレクション「セットプルミエ バイ ケンゾータカダ(SEPT PREMIÈRES by Kenzo Takada)」 Image by FASHIONSNAP

見てお分かりのようにカッコイイことは間違いないが、果たしてイトーヨーカドーに衣料品を買いに来る人がこれを求めているか、これを進んで着用するか、という問題があるだろう。当方は絶対に着用しないと考えており結果は早期撤退が示しているだろう。

それに比べると今回のイズミの取り組みは商品デザイン面においては、はるかに地に足がついているといえる。

 

ダサいイメージがこびりついたGMSの衣料品は、自社企画でどれほど良い商品を作ってモノ雑誌でアピールしても1年やそこらでおいそれとは覆らない。またイトーヨーカドーのようにカッコつけて背伸びしすぎたコラボ企画を打ち出したところで短期間での売れ行き改善は望めず、却って1年半で撤退せざるを得なくなる。やるなら、ユニクロとルメールのユニクロUほどの腰を据えた長期間の取り組みが必要だろう。

様々なことを考えると、アダストリアとのコラボというのはGMS衣料品再建としては悪くない着想だと当方は思っている。しかし着想やコンセプトが良いからといって必ず売れるわけではない。商品面・価格面・店舗運営面・商品補充などの物流面などありとあらゆる要素が噛み合わなくてはならない。さらに重要なことはある程度の年数を費やせるかどうかである。

ただ、イズミの社長は現在も創業家出身なので、その辺りはサラリーマン社長が定期的に交代する他の大手GMS各社とは異なり、長期間の取り組みが不可能ではないと外野から見ているのだがどうなるだろうか。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/08/24(水) 9:46 AM

    「けんぞ~ってなに?」「ゴルチエって誰?」

    ヨーカ堂の食品売場で買い物する人たちの認知度です
    セブンのおかげで大企業臭がするけど
    実態は下町~せいぜいニュータウンのスーパーですから

    もっともヨーカ堂の担当者はkenzoもゴルチェも
    買った事はないけどw名前だけは知っていたはず

    したがって、イズミの戦略は妥当だと思います

    「なんとなくカッコイイ臭」を低コストで漂わせれば良い

    したがってビームスやUAである必要は全くないです

    それよりも、最低7,8年コラボを継続できるくらい
    フィーが安い相手と組むのが重要だと思います

    ただ、今の30代以下は、スーパーに衣料品売場があるのを
    知らない可能性があります

    「1F~素通り3F・4Fもしくは1Fのみ」という使い方
    しかしない人が少なくない

    原資回収に5年、安定したサイクルで利益が出るまで
    最低10年といった世界じゃないですか?

  • BOCONON より: 2022/08/26(金) 9:27 PM

    さすが KENZO ,いいデザインですねえ。問題は「スーパーの客は誰も特にオシャレな服を求めていない,特にモード系はせいぜいコシノ三姉妹程度でないと無理」って事。

    思うにスーパーの服はむしろこんな服の方が売れると思われる。
           ↓
    https://togetter.com/li/1548255

    これはさすがにネタが古いから,このまんまという訳ではないが,つまりいくらか(または大いに)ダサい服がなぜ作られ売られ続けているのか,と言えばそりゃ「売れるから」ですね。
    かなり前僕は「なんでトンガリ靴なんてヘンなものがはやるのやら」と不思議に思っていましたが,今でもまだ履いている男はたまに見かける。「ああ…”なんで” って,そりゃああいうものをカッコいいと思う奴が少なからずいるんだから当たり前って事か」と思い至りました。重ね着風Tシャツとか,衿の裏にチェック柄の入ったワイシャツとかもどうやら安い服専門のメーカーはあえてあんな風に少しダサくしているのだと聞いた事があります。
    ボディ・バッグなんてものも,一家でお出かけなんて時にお父さんが背中にしょってまだ小さい子供の手を引いて歩いている姿は微笑ましいものだ。気の若いジイサマなどだと結構カッコいいつもりで背負って歩いていたりして,別の意味で微笑ましく見えないこともない。

    ――といったような訳で,スーパーが服を売ろうと思うなら,むしろビミョーにダサいけど売れる服の研究をした方が,デザイナーとコラボでオシャレな服売り場に並べて…なんて考えるよりずっと実りが多いだろうと僕には思われるのでした。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/11/06(日) 8:45 PM

    どーでもいいように見えて
    南サンにも私にもどーでもよくない話ですが・・・

    「南サンはセールに弱い?」
    「セール札にはついつい財布のヒモゆるむ?」

    西友の服は処分価格でも、だいぶ割高ですよ

    ただ関西は地場の食品スーパーが多く
    GMSが少ないから赤札競争になりづらいのかな?

    私は同じ品を600円で見た事があります

    ただこれでも1足200円!

    そこで私はネームなしの製造元オリジナルの類似商品を
    4足298円で買いました

    ウィズ方向にもゴムが入ってて脱げづらいというヤツね

    このご時世、靴下に1足100円かけちゃいけませんぜ

    GMSは仕入れの仕切値(ロット)が違うから
    大きく売れ残るし、大きく値引きすることが少なくない

    しかもたいがいのGMSは衣料品の仕入れを惰性で
    やってるようなところがありますから

    その点、西友は例のEDLP以降、仕入れのロットを
    かなり絞っているようで、大きく売れ残る事が
    少ないようです

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