スリーコインズの大躍進は洋服への興味の低下を象徴しているのではないか?
2022年8月4日 決算 2
最近、というよりも3年くらい前からどんなに疲れていても長時間寝ることができなくなってきた。
だいたい深夜12時過ぎに寝るのだが、30代末期までは休日は朝10時ぐらいまで寝ていた。それが40代末期からは休日でも朝6時半くらいに目が覚めるようになった。遅くても7時半、早ければ5時半ごろに目が覚めることもあり、そこから二度寝ができない。もちろん平日も同様だ。
世の中のジジイは必ず早起きだが、当方もいよいよ名実ともにジジイの仲間入りをしたということであり、老化が進むと長時間寝られずに早起きをするようになる。
老化は至るところに起きており、多くの分野に対して意欲が減退している。
その一つがファッションである。
もう何となくだが、似合うアイテムと似合わないアイテムは識別できるようになってきたし、似合わないアイテムに挑戦して着こなそうという気もない。
また、以前のように新しい服が欲しいとは強く思わなくなってきた。とはいっても、毎月値下がり品は何枚か買うが。
それにいろいろと着てみたところで、実際の容貌、容姿、体型、体格が良くなければさほどカッコヨクはない。となると、トレーニングや養毛・育毛、スキンケアに励み髪型などを整える方が洋服を選ぶより先ではないのか、とも思えてくる。
そんなジジイの今日この頃だが、最近、ふとマス層の洋服への興味が30年前・20年前と比べて減退しているのではないかと感じる。
これも、身の周り調査だが、周辺の業界人でも衣料品よりも、趣味の道具類を熱心に買う人が多い。キャンプ、釣り、音楽、バイク、スポーツなどなどである。当方でいうならガンプラになるだろうか。
洋服が売れにくい状況がコロナ以前から続いているが、ユニクロ、しまむら、ジーユーという圧倒的大手がいる上にこれだけ数えきれないほどのブランドがあれば、そりゃ、優勝劣敗は生まれるし売れないブランドも多数でてくるのも当然だと思って眺めているが、それに加えて、2000年代前半と比べると洋服への興味や需要が弱まっているのではないかと感じる。
パルグループが先日、23年2月期決算の上方修正を発表した。売上高1500億円を1540億円に、営業利益87億円を108億円と修正した。
22年2月期決算もコロナ禍にもかかわらず、好調で前年実績を大きく伸ばし過去最高を記録している。
パルグループHDの2022年2月期連結業績は、売上高が前期比23.7%増の1342億円で過去最高を更新した。営業利益は同5.4倍の75億円、経常利益は同7.2倍の76億円で、当初計画を上回った。期末店舗数は902店舗で前期より30店舗の純減。
となっている。
パルグループのここまでの成長の立役者は見出しにもあったように雑貨専門店「スリーコインズ」である。
雑貨事業の売上高は同42.8%増の469億円で、期末店舗数は18店増になった。巣ごもり需要の高まりから生活防衛雑貨の「スリーコインズ(3COINS)」と「サリュー(SALUT!)」がともに大幅増収に貢献した。とりわけ「スリーコインズ」は、新規出店と既存店の増床による大型化を進めた結果、売上高は前期比1.5倍の379億円を大きく伸ばした。
であり、今期もスリーコインズ(略称スリコ)の好調は続いている。ちなみに数多くのブランド(屋号)を抱えるパルグループだが、同社内での売上高最大のブランドは現在は「スリーコインズ」である。
大阪の専門店として生まれたパルグループなので、当方も昔はよくお邪魔していた。当時から財務的には優良企業だったが、ネームバリューは他の有名セレクトショップから比べると一段も二段も低かった。体感的に言うと、今でも一段から0・5段くらいは低いと業界で認識されていると感じる。
「チコ」「フーズフーギャラリー」「ミスティック」「ガリャルダガランテ」「ディスコート」「チャオパニック」「チャオパニックティピー」「ルイス」などなどと、数多くのブランドを開発してきた。
言葉を飾らずに言わせてもらうと、中小規模ブランドを数多く開発しその合算で売上高を伸ばそうというのが、パルグループのこれまでの姿勢だったと当方は見ている。
それなりの品揃えもし、好調と伝えられるブランドもあったが、例えば「フーズフー」にせよ「ガランテ」にせよ「チャオパニック」にせよ、ビームスやユナイテッドアローズなどの大手セレクトショップに比べるとステイタス性は明らかに低かった。何なら、97年に立ち上がった後発のアーバンリサーチに比べてさえ、ステイタス性は低かったとも感じる。
お高く止まりたいけど、お高くは止まれない。
そんな印象の強い企業だった。よく言えば庶民的なニオイがあったというべきか。
恐らく、当時の首脳陣は衣料品のみでの成長に限界を感じていたのではないかと思う。実際に話を聞いた当時の首脳陣の一人はそんなニュアンスの言葉を吐いておられた。
じゃあ、新業態で成長戦略とはいうものの、衣料品ブランドが新業態を始めるのはなかなか難しい。飲食業を開始して会社が傾いた例は昔から多くある。
単に低価格雑貨をやったから必ず売れるというものでもない。〇〇すれば必ず売れるなんていうビジネスは現代社会においては存在しない。
そんな中、低価格雑貨のスリーコインズは立ち上がった。
最初は業界人仲間たちはちょっと馬鹿にした目で見ていた。当方も懐疑的に眺めていた。
百均があるのに300均が必要なのだろうか?と当時の当方はそう考えた。
ところが、もちろん試行錯誤を重ね工夫を凝らしたであろうことはいうまでもないが、スリコは如実に伸び始め、すでに5年くらい前でパルグループ内最大売上高のブランドとなっていた。
この当時はパルグループもいささかまだ「低価格雑貨の成長で業績が好調」というのを「体裁が悪い」と感じていたのか、スリーコインズに積極的に言及することは少なかった。
だが、これほどの規模になれば踏ん切りがついたのか最近は積極的に言及するようになった。
1000億円を越える大手企業を目指すなら必ずマス層の支持が必要となる。ファッション高感度な少数の趣味人の支持だけでは到底たどり着けない。パルグループはそのマス層の取り込みを低価格雑貨のスリーコインズで実現できたといえる。
そして、スリーコインズをマス層が支持した理由は、当方が冒頭で述べたように「洋服への興味の低下」ではないかと思う。興味も低下しているし保管場所にも困る洋服は頻繁には買わないが、置き場所にもあまり困らず実用性も高い低価格雑貨なら毎日でも買う。
マス層の現在の嗜好はそんな感じなのではないかと思う。それをパルグループはスリーコインズで捕まえることに成功したといえるのではないかと思う。
当方は個人的には、スリーコインズの大成功は、マス層の洋服への興味(需要)の低下の象徴ではないかと思えてならない。
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comment
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/08/12(金) 12:06 PM
「洋服=興味も低下しているし保管場所にも困る」
「雑貨=置き場所にあまり困らず実用性も高い」40代以降の全ての人にドンピシャでしょう、この表現
しかも300円店は完全な実用オンリー雑貨の100円ショップとも
いわゆるファンシーショップ(死語ですねw)の雑貨とも違う買う人みんな基本は実用雑貨として買っているけど
そこそこヒネリが効いてますよね?だったらこの構図を服にスライドさせて
GUウニクロ万歳とはならないなぜなら40代はもちろん今はハタチの大学生でも
資源ごみの日に出すくらい服をいっぱい持っているからですそういえば、私、前任者の忘れ物の
キャバ嬢からのプレゼントらしき靴下wを履いてますこのトシになると、服それも靴下なんざ
どーでもよくなる。安けりゃいい。タダならなお良いw10年前は手縫いのJKT着てた人間がこのザマですよw
そら服が売れなくなるはずだ・・・
スリーコインズの木の小物ラックはセンスが良いので僕も長年愛用しています。とは言え最近は100均もよく見ると結構オシャレな小物入れのたぐいが多いので「特にスリーコインズでなきゃいけない商品ってあるんだろうか?」と疑問でした。
先日たまたまガルちゃん見ていたら,どうやら3コインズではアクセサリーのたぐいをよく買うと言う人が多いようですね。僕は指輪やネックレス(洋服は数増やしても嵩張って邪魔なので,こんなものに手を出すようになった)はたまにしか買わないからそこそこ安くないものをか選ぶので「お子ちゃまじゃないんだから300円のイヤリングつけた女子ってイヤだなw」と思ってしまう。彼女ら自身でも「当然安っぽいけどw」と言いつつやっぱり3コインズで買うというのは僕にはあんまり気持ちがよくわからない。
南さんの仰言るように「洋服への興味が低下気味」って事もあるのでしょうが,僕には「最近暴走族をあんまり見ない」というのと同じ事情があるのではないかという気がします。「暴走したくっても収入低すぎて原付くらいしか買えない」という・・・
僕は母校がカズレーザーと同じで,私服OKの男子高校だったけど,そこの生徒はまちで見ると「この子たちオレの後輩だな…」というのは大体分かります。今一つ垢抜けない/身についていない感じのカジュアル服着ているので。
でも進学校だから親の収入は比較的高いはずですが,最近もう明らかにユニクロ,よりもさらにGUで買ったとおぼしき服だらけです。「この年齢で洋服にまるで興味がなくて毎日学生服(制服もあることはあった)着ている高校生の時のオレみたいな唐変木は今はいないようだけど,みんな制服みたいにGU着てるってのはどうもなあ・・・なんだか可哀想になっちゃうね」と僕はつい大きなお世話な事を考えてしまうのでした。