MENU

南充浩 オフィシャルブログ

衣料品不振が続き食品も踊り場に差し掛かりつつある無印良品

2022年8月3日 月次速報 2

今年は6月中旬に梅雨明け宣言が出たと思ったら、7月に入ってから雨が続くという不順な天候で、6月下旬に猛暑日、7月下旬から猛暑日が続いている。

気温が高くなると、各社は基本的に夏物衣料が売れやすくなる。一方、新型コロナ禍の再拡大が起きているが、今後人出が鈍るのかどうかはちょっと余談を許さない。

夏が暑くなり冬が寒くなると基本的に季節に沿った衣料品が売れやすい。

30年前、それよりももっと以前は、シーズン先取りで買う人が多かったが、2000年代に入ってからはどんどんと体感温度に則した商品が売れるようになっていった。30年前の雰囲気を知っている当方でさえ、これだけ暑い時期にわざわざ先行して秋物・冬物を買おうとは思わないし、正月のバーゲンで春物・夏物を買おうとは思わない。

そんなわけで梅雨に関しては不純な今夏だが、気温は高くなった。そのため、7月度の月次売上高は概ね堅調・好調が多かった。

専門店7月度、猛暑で夏物好調 コロナ急拡大の影響は「限定的」

ユニクロの売上高(既存店ベース、以下同)は前年同月比6.4%増と、低調だった6月(前年同月比10.2%減)から盛り返した。

しまむらは同16.7%増。婦人服ではトレンドのジレ、ブラウス、ワンピースなどに加え、帽子や冷感タオル、日傘やアームカバーなど猛暑対策の雑貨類もよく動いた。

アダストリアは同4.4%増。中旬には新型コロナの感染急拡大や天候悪化で客数が落ち込んだものの、下旬には回復した。

ユナイテッドアローズは同5.7%増。既存店の客単価は22.2%増と大幅に伸びており、セールを抑制する一方、定価販売が前年同月を上回った。

 

とある。

もちろん前年対比だけでは不十分で一昨年、4年前との対比も必要だが、概して回復基調にあることは間違いないだろう。

そんな中、ひとり大幅に苦戦し続けているのが無印良品である。

 

良品計画は同12.7%減と、6月に引き続き前年実績を割り込んだ。衣服・雑貨が同10.7%減、生活雑貨が同15.8%減と大きく足を引っ張っている。

 

とあるが、もう少し詳細を見てみよう。

まず、衣料品の既存店売上高は記事にもあるように10・7%減と大幅減だが、新店も含めた直営全店でさえ2・7%減である。さらに生活雑貨も既存店は15・8%減だが、直営全店も8・3%減に終わっている。

新店も含めた直営全店で衣料品、生活雑貨が前年割れということは如何に売れ行き不振かという話しである。

良品計画によると

 

生活雑貨はファブリックスやファニチャーなどが低調に推移

 

とのことだが、生活雑貨の中ではファブリックスやファニチャーは商品単価が高いため、売上高が大幅な前年割れとなったと考えられる。

7月度の月次売上高で厳しいと感じさせられるのは、それまで絶好調だった食品も既存店売上高が前年割れに転じたことだ。

食品の既存店売上高は5・6%減だったが、全店売上高は8・9%増と好調を維持できている。

もっとも、2021年7月の食品売上高は、既存店売上高が前年比22・9%増、全店売上高32・5%増と驚異的な伸び率なので、今年7月の業績は伸び悩み・踊り場という捉え方が適切だろう。

ちなみに今年7月の食品は既存店売上高が一昨年比16・0%増、全店売上高が一昨年比44・3%増となる。

 

しかし、売上高3兆円構想を打ち出してからというもの、衣料品の不振はいまだに止まらず、生活雑貨もパッとしない。頼みの綱の食品も不調ではないものの踊り場に差し掛かっている。

これらの状況を考慮すると、売上高3兆円構想は近づくどころか遠のいているのではないかと思えてくる。

 

先日、堂前新社長は会見で危機感をあらわにしておられたので、今後は軌道修正がなされるだろうが、その軌道修正の効果が表れるのは早くても今秋、遅ければ来春以降ということになる。

食品に関しては門外漢なので問題点もわからないし、成長戦略もわからないので論じることは当方にはできない。

ただ、食品が売り上げ拡大できなければ3兆円構想は到底実現不可能だろう。

 

一方、衣料品だが、今夏の売り場を見ても、やはり昨年、一昨年とほとんど何も変わっていないように見える。早い話が昨年、一昨年のリピート商品にしか見えない。

例えばリーバイスの501、ブルックスブラザーズのオックスフォードボタンダウンシャツ、アルファインダストリーのMA-1 ブルゾンのように、ブランドの顔とも呼べる「偉大なる定番」を持つことはブランディングとしては非常に重要である。だが、今の無印良品の衣料品に「偉大なる定番」が存在するだろうか?当方にはその存在は見えない。

にもかかわらず、昨年、一昨年と変わらないように見える商品ばかりを企画生産しており、首脳陣が「定番」の意味をはき違えているのではないかとさえ思えてくる。

本来は、新しい商品の開発を目的としたライン「MUJI LABO」も今ではすっかり形骸化しており、パッとしない焼き直し品ばかりで値下がりしても買おうとも思えない。

2012年にコラボを成し遂げていた実験的なラインだが、10年後の今では見る影もない。

 

無印良品がアングローバル社と提携、新MUJI LABO発売 (fashionsnap.com)

「無印良品」を企画・開発する良品計画が、「MARGARET HOWELL(マーガレットハウエル)」を運営するアングローバル社との共同企画による新生「MUJI LABO(ムジ ラボ)」を発表した。2012年春夏シーズンより展開を開始。

 

先日の堂前新社長の言葉で評価すべき点は「男女兼用服の見直し」しかない。

その一方で、すでに今でも変わり映えしない衣料品の「さらなる定番強化」を明言している点などは不安しかない。

 

新規出店を活発に行えば売上高は増えやすく、3兆円構想にも近づきやすい。しかし、今のままでは自転車操業に陥りやすく、過去に潰れてきた幾多のチェーン店と同じ道をたどることになる。

①衣料品の改善と②踊り場に差し掛かった食品の次なる成長戦略、この2つが良品計画にとっては急務といえるだろう。

 

仕事のご依頼はこちらからお願いします~↓

SERVICE

この記事をSNSでシェア
 comment
  • BOCONON より: 2022/08/03(水) 9:20 PM

    MUJI LABO は調べてみたら2005年から始めたらしいけれど,取り扱い店舗はわが埼玉にはないし,千葉にもない。東北も新潟にしかない。池袋西武の 無印良品のMUJI LABO コーナーも誰も見向きもせず素通り・・・といった塩梅で,つまりは誰も必要としていないブランドを17年も続けてきたわけで,少々びっくりするし呆れる。眼鏡みたいに(どうしてもやりたいわけでもなく評判も良くないなら)さっさと見切りをつけたら良かろうにと思います。
    僕自身もヤング(笑)ではないので無印良品のモード系まがいの服なんてイヤですね。マーガレット・ハウエルに似てるのは色が地味なとこだけで,大きく肩が落ちる服なんぞ誰が買うもんかい。女ならとも角・・・といったところであります。
    まあ南さんは体格ががっちりしているようだから,むしろ MUJI LABO のサイトの肩幅広すぎモデルみたいにそんなに肩や胴回りが不自然に見えなくて良いかも知れないw

    そんな事はともかく,堂前新社長というお方はなんだか言う事が岸田総理みたいですね。「 “説明が大事” とは言ったが “自分が調査してしっかり説明する” とはひとことも言ってません。”もう縁を切る” とはなおさら言ってません」的な。
    もともと定番(風)な服が売りの無印良品が「定番商品を見直す」と言うだけじゃ「 “本当の定番服 ≒ “年齢を問わない・長く着られる服
    を売ります” とか “MUJI LABO なんてもうやめます” とは言ってません」と言うのと似たようなもので,たぶん本音では何も思いつかないのだと思う。
    まあこんな時期・時代に MUJI の社長をやらされるなんてなんだか気の毒のような気がしないでもないですが。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2022/08/12(金) 12:45 PM

    南サンは関西地場の方。いっぽう無印は
    特に95年頃までは完全に首都圏のブランドだったんです

    んで、服に力を入れだしたのは割と最近。
    服の売場を拡張したのは2005年あたりからかな?
    服限定ではさほど歴史がないブランドなんですよ

    今となっては形骸化したその当時の無印の定番品は以下の通り

    ・自転車
    ・パルプな組立式家具
    ・メモ帳

    今となっては自転車は3大メーカーの電動に
    組立式家具はニトリとアイリスオーヤマに
    メモ帳はロルバーンその他にかっさらわれました

    堤清二さんは「無印良品は反体制商品だ!」と
    危険な?発言をされていましたが、今となっては
    「賞味期限切れまじかの半額幕の内べんとう」
    みたいなもんしかありませんなぁ

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ